港湾運送事業
港湾運送事業は、陸と海とをつなぐいわば架け橋のような存在です。四方を海に囲われた日本では、古くから港湾及び港湾運送が発展しており、航空技術が発達した現代においても、わが国の物流の要を担う事業としてしっかりと存在感を放っています。
他方、港湾という局所的な環境下での業務であることから、業界全体としてはやや閉鎖的な風土があり、一般の方からしてみれば、そこでどんな事業が行われているのかを知る由(よし)はありません。
そこで本稿では、港湾運送事業法において定められている港湾運送事業の全体像について、一般の方にも伝わるように分かりやすく解説していきたいと思います。
目 次
港湾とは
港湾運送事業法では、港湾を政令により指定された以下の港湾(政令指定港湾)に限定して定義しています。したがって、これらの港湾以外で行う港湾運送事業に相当する事業は、厳密には港湾運送事業には該当しません。
都道府県 | 港湾 |
---|---|
北海道 | 稚内、留萌、小樽、函館、室蘭、苫小牧、釧路 |
青森 | 青森、八戸 |
岩手 | 久慈、宮古、釜石、大船渡 |
宮城 | 石巻、仙台塩釜、 |
福島 | 小名浜 |
秋田 | 秋田船川 |
山形 | 酒田 |
新潟 | 新潟、両津、直江津 |
茨城 | 日立、鹿島 |
千葉 | 木更津、千葉 |
東京 神奈川 | 京浜 |
神奈川 | 横須賀 |
静岡 | 田子の浦、清水 |
愛知 | 三河、衣浦、名古屋 |
三重 | 四日市 |
富山 | 伏木富山 |
石川 | 七尾、金沢 |
福井 | 敦賀 |
京都 | 舞鶴、宮津 |
和歌山 | 和歌山下津 |
大阪 | 阪南、大阪 |
兵庫 | 尼崎西宮芦屋、神戸、東播磨、姫路 |
徳島 | 徳島小松島 |
香川 | 高松、坂出 |
愛媛 | 新居浜、今治、松山、郡中 |
高知 | 高知 |
岡山 | 岡山、宇野、水島、笠岡 |
広島 | 福山、尾道糸崎、呉、広島 |
鳥取 島根 | 境 |
山口 | 岩国、徳山下松、三田尻中関、宇部、小野田 |
山口 福岡 | 関門 |
福岡 | 苅田、博多、大牟田、三池 |
佐賀 | 唐津 |
佐賀 長崎 | 伊万里 |
長崎 | 臼浦、相浦、佐世保、長崎 |
熊本 | 三角、八代、水俣 |
大分 | 大分、津久見、佐伯 |
宮崎 | 細島、油津 |
鹿児島 | 鹿児島、名瀬 |
沖縄 | 運天、那覇、平良、石垣 |
港湾運送事業と事業区分
港湾運送事業とは、その名のとおり港湾を拠点とする運送業務に特化した物流業のことを指します。港湾物流業と呼ばれることもありますが、港湾において貨物の輸送、保管、荷役、荷さばき、分類、仕分け、包装及び積卸し等の作業を担当する事業を総称したものが港湾運送事業です。
人海戦術による運送事業というイメージを持たれがちですが、現在では機械化と情報化に伴いコンテナ輸送が発達したことによって、高い専門性を持つ中間物流事業として位置づけられています。
港湾運送事業法では、港湾において他人の需要に応じて以下の行為を行う事業を営利目的の有無を問わず港湾運送事業として定義しています。
- 一般港湾運送事業
- 港湾荷役事業
- はしけ運送事業
- いかだ運送事業
- 検数事業
- 鑑定事業
- 検量事業
国内において港湾運送事業を営む際には、国土交通大臣の許可を受ける必要があるほか、労働者が港湾において労働を行う場合には港湾労働法により定められた港湾労働者証を携帯する必要があります。
一般港湾運送事業
港湾における陸揚及び船積貨物の受渡しと、これに関わる船内荷役、はしけ運送、沿岸荷役及びいかだ運送を一貫して取り扱い、港湾運送全体にわたる総合的サービスを提供するプレイングマネージャーに相当する事業形態です。
港湾荷役事業
船内及び沿岸において、船舶への貨物の積込み及び荷下ろし、あるいは上屋等への入庫や出庫といった作業を担当します。
はしけ運送事業
はしけとは、港湾内で重い貨物を積んで航行するために作られた平底の船舶(大型の船舶と陸との間を往復して貨物又は旅客を運ぶ小型の船舶)を指しますが、港湾内や指定区間においてはしけを用いて輸送を担当する事業がこれに該当します。
いかだ運送事業
港湾内や指定区間において、(おもに)木材をいかだに組んで輸送する事業です。
検数事業
貨物の積卸しの際、個数を計算したり受渡しの証明を行う事業です。
鑑定事業
貨物の積付けや事故について、証明、調査及び鑑定を行う事業です。
検量事業
船積貨物の容積と重量の計算及び証明を行う事業です。
港湾運送の作業形態
図解しているように、港湾運送事業は海上運送と陸上運送との中間において物流を担当する事業形態です。担当する作業が、海上におけるものなのか、港湾におけるものなのか、陸上におけるものなのかの違いによって、必要とされる手続きも異なってくるため、「どこで」「何を」「どうするか」については、明確に把握するようにしてください。
港湾運送関連事業
港湾運送事業法では、営利であるか非営利であるかを問わず、港湾において他人の需要に応じて以下の行為を行う事業を港湾運送関連事業として定義しています。港湾運送関連事業を営もうとする者は、港湾ごとに、あらかじめ国土交通大臣対して届出を行う必要があります。
- 船貨物の固縛事業
- 船積貨物の梱包事業
- 船倉内清掃事業
- 港湾警備事業
船積貨物の固縛事業
港湾における船積貨物の位置の固定若しくは積載場所の区画を行う事業形態です。
船積貨物の梱包事業
港湾における船積貨物の荷造り・荷直しを行う事業形態です。
船倉内清掃事業
港湾において船舶からの貨物の取卸しに先行し若しくは後続する船倉の清掃を行う事業形態です。
港湾警備事業
港湾における船積貨物の警備を行う事業形態です。
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