通関業許可申請の許可基準とポイントについて

通関業のイメージ

商品の輸出入を行う企業(荷主)から依頼を受けて料金を受領し、荷主を代理して税関官署へ申請して配送の手配(輸出申告や輸入申告、輸入に伴う関税の納付等)を行う業務を通関業務といいますが、これを事業として営もうとするときは、財務大臣に対して申請し、その許可を受ける必要があります。

弊所でもあまり取扱いの多い許認可申請ではありませんが、通関業は専門性が高く、なおかつ関税という重要施策に関与する業種であるため、許可のハードルは高く、申請も複雑な手続きとなっています。

そこで本稿では、通関業許可申請を掘り下げ、許可の基準をもとに、重要なポイントとについて詳しく解説していきたいと思います。

許可の基準

通関業の許可を受けるためには、欠格事由に該当しないことを条件として、以下の基礎財産的基準人的基準及び営業所基準のすべてに適合していることが必要となります。

  • 経営の基礎が確実であること(基礎財産的基準)
  • 許可申請者が、その人的構成に照らして、通関業務を適正に遂行することができる能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること(人的基準)
  • 要件を備える営業所を有すること(営業所基準)

これらの基準を満たしているか否かについては、提出する書類に基づいて審査されます。

基礎財産的基準

通関業者には、通関業の経営の基礎が確実であることが求められます。「経営の基礎が確実であること」とは、3期分の決算書に照らし、具体的に以下のいずれの要件も満たしている状態をいいます。

  • 繰越欠損金がなく、当期利益があること
  • 資産内容が充実し、収支の状況が健全であり、かつ、通関業務を営むための必要な設備が整っていること

赤字経営であるからといって直ちに不許可処分となるわけではありませんが、その場合には理由書の提出を求められ、今後の経営の改善の見通しについても尋ねられることになります。

たとえば繰越欠損金があっても、資本金の範囲内であり、直近2期の決算が黒字であって今後の経営計画等により繰越欠損金の減少が見込まれる等税関長が特に支障がないと認めた場合には、「収支の状況が健全である」ものとして取り扱われます。

また、申請者が新たに法人を設立した場合等であって、収支の状況を明らかにすることができない場合には、資金の額、経営計画書及び親会社との連結決算の状況等により今後の安定した経営が見込まれる場合に限り、「収支の状況が健全である」ものとして取り扱われます。(この場合には許可について期限が付されます。)

なお、「通関業務を営むための必要な設備」とは、予定される通関業務に係る取扱貨物の種類及び量に応じた営業所並びに通関書類等の作成及び保存に必要な設備のことをいいます。

人的基準

申請者には、その人的構成に照らして、通関業務を適正に遂行することができる能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有することが求められます。これは、以下の観点が審査の基準となります。

  • 許可申請者、役員、通関士及びその他の通関業務の従業者が通関業に関し十分な知識及び経験を有していること
  • 管理監督体制が確立していること
  • 通関業務の種類及び量並びに通関士及びその他の通関業務の従業者の通関業務経験年数に照らし、通関士及びその他の通関業務の従業者の配置が適切に行われていること

人的資質には、通関業に関する知識・経験、法令遵守の意識等のほか、組織体制の構築やコンプライアンスに関する施策の策定といったものが求められます。

また、「管理監督体制が確立していること」を証するためには、申請者の実情に応じて法令の規定を遵守し通関業務を適正に遂行するために必要な事項(以下は例示事項)が記載された社内管理規則を策定する必要があります。

目的等社内管理規則は、通関業務を適正に遂行するため、必要な措置を定めるために制定するものであることを明確にします。また、適正な通関業務を遂行するための基本方針及び適用範囲を定めます。
社内体制の構築適正な通関業務を遂行するための責任体制を明確化するため、通関業務に係る社内体制、具体的な業務の内容、責任者及びその責任の範囲等を定めます。また、社内管理規則に関する事項を総括する組織(コンプライアンス委員会等) の設置についても定めます。
通関手続適正な通関手続を行うため、通関書類の作成に際しての手法、手順及び留意すべき事項等を定めます。
監査コンプライアンス委員会等による定期的かつ継続的な監査体制を確立し、監査事項及び手順並びに監査結果に関する対応措置等を定めます。
教育及び訓練通関士及びその他の通関業務の従業者が常に高いコンプライアンス意識と通関業務に係る専門的知識を習得及び維持するため必要な教育及び訓練の実施方法等を定めます。
書類の保存通関業法に基づく通関業務に関する書類のほか、通関業務が適正に遂行されていることを監査するうえで保存を要する書類及びその保存方法等を定めます。
顧客及び貨物管理者との関係顧客及び貨物管理者(顧客等)との適正な関係を保持するため、顧客等の情報、通関依頼の内容等の把握及びその情報の管理方法等を定めます。
税関との関係等税関への通報体制及び税関の審査・検査への対応方法等を定めます。
報告及び危機管理事故発生時の社内における報告・連絡体制(危機管理体制)及びその対応方法等を定めます。
処分通関士及びその他の通関業務の従業者について、法令、社内管理規則に違反があった場合の処分について定めます。
その他業務手順等の具体的規則の整備通関業務を適正に遂行するための業務手順書の整備等、必要な事項を定めます。

欠格事由

欠格事由とは、申請者が次のいずれかの事由に該当する場合は、通関業者としての適格性を欠く者として許可を受けることはできません。

  • 心身の故障により通関業務を適正に行うことができない者として財務省令で定めるもの
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 禁錮以上の刑に処せられた者であって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しないもの
  • 次に掲げる法律の規定に該当する違反行為をして罰金の刑に処せられた者又はこれらの規定に該当する違反行為をして関税法、国税通則法若しくは地方税法の規定により通告処分を受けた者であって、それぞれその刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過しないもの
    • 関税法第108条の4から第112条まで(他の関税に関する法律において準用する場合を含む)の規定
    • 国税又は地方税に関する法律中偽りその他不正の行為により国税又は地方税を免れ、納付せず、若しくはこれらの税の還付を受け、又はこれらの違反行為をしようとすることに関する罪を定めた規定
  • 通関業法の規定に違反する行為をして罰金の刑に処せられた者であって、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しないもの
  • 暴力団対策法の規定に違反し、又は刑法に規定する傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び結集、脅迫、背任の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられた者であって、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しないもの
  • 暴力団対策法に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者
  • 通関業の許可を取り消された者又は通関業務に従事することを禁止された者であつて、これらの処分を受けた日から2年を経過しないもの
  • 公務員で懲戒免職の処分を受け、当該処分を受けた日から2年を経過しないもの
  • 法人であって、その役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む)のうちに上記のいずれかに該当する者があるもの
  • 暴力団員等によりその事業活動を支配されている者

通関士の設置

通関業者は、他人の依頼に応じて税関官署に提出する通関書類のうち、申告又は申請に係る申告書及び申請書、不服申立書、特例申告書、修正申告書及び更正請求書については、通関士にその内容を審査させ、かつ、これに記名押印させなければならないものとされています。

通関業者は、これらの業務を適正に行うため、(営業所において取り扱う通関業務に係る貨物が一定の種類の貨物のみに限られている場合を除き)通関業務を行う営業所ごとに、通関業務に係る貨物の数量及び種類並びに通関書類の数、種類及び内容に応じて必要な員数の通関士を設置する必要があります。

なお、通関士として選任されるためには、単に通関士試験に合格しているだけではなく、少なくとも1年間以上の実務経験(通関業務に従事した経験)が必要になります。また、不在となる場合に備え、予備1名として、2名以上を選任する必要があります。ただし、必ずしも自社の従業員である必要はなく、派遣社員を通関士に選任することも可能です。

★通関士の欠格事由

申請者と同様に通関士にも欠格事由があります。具体的に、以下のいずれの事由に該当する者は、通関士としての適格を欠き者として、通関士となることができません。

  • 心身の故障により通関業務を適正に行うことができない者として財務省令で定めるもの
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 禁錮以上の刑に処せられた者であって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しないもの
  • 次に掲げる法律の規定に該当する違反行為をして罰金の刑に処せられた者又はこれらの規定に該当する違反行為をして関税法、国税通則法若しくは地方税法の規定により通告処分を受けた者であって、それぞれその刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過しないもの
    • 関税法第108条の4から第112条まで(他の関税に関する法律において準用する場合を含む)の規定
    • 国税又は地方税に関する法律中偽りその他不正の行為により国税又は地方税を免れ、納付せず、若しくはこれらの税の還付を受け、又はこれらの違反行為をしようとすることに関する罪を定めた規定
  • 通関業法の規定に違反する行為をして罰金の刑に処せられた者であって、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しないもの
  • 暴力団対策法の規定に違反し、又は刑法に規定する傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び結集、脅迫、背任の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられた者であって、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しないもの
  • 暴力団対策法に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者
  • 通関業の許可を取り消された者又は通関業務に従事することを禁止された者であって、これらの処分を受けた日から2年を経過しないもの
  • 公務員で懲戒免職の処分を受け、処分を受けた日から2年を経過しないもの
  • 関税法第108条の4から第112条まで(他の関税に関する法律において準用する場合を含む)の規定に該当する違反行為をした者であって、当該違反行為があつた日から2年を経過しないもの
  • 次に該当する者であって、それぞれの停止の期間が経過しないもの
    • 通関業務の停止の処分を受けた者(処分の基因となった違反行為をした者を含む)
    • 通関業務に従事することを停止された者

営業所基準

要件を備える営業所とは、許可申請の際、通関士試験合格者を現に雇用しているか、又は通関士試験合格者を雇用することが雇用契約等により確実と認められる場合を言いますが、これには単なる見通しは含まれていません。

その他の基準

上記の基準に加え、「通関業務の取扱見込件数が一定数量確保できていること」も審査基準となります。具体的に「年間○件以上」というノルマが課される訳ではありませんが、実務的にも見込み件数が少ないと持続経営は困難であるように思われます。

通関業許可申請サポート

当事務所では、阪神間をはじめ、兵庫大阪府京都府全域において通関業許可申請の代行を承っております。面倒な書類作成から役所との協議及び申請の代行に至るまで、まるっとフルサポートいたします。下記の報酬は市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる事務所」です。さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信があります。通関業許可申請の手続きでお困りの際は、当事務所までどうぞお気軽にご相談ください。

手続き登録免許税報酬額合計額
通関業許可申請90,000円187,000円〜257,000円〜
定期報告書作成無し44,000円~44,000円~
※税込み

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