遊漁船業法の改正点について

遊漁船のイメージ

令和4年4月に知床沖にて発生した遊覧船の事故等の影響により、船舶を使用して運営する事業に対する規制の強化が進んでいますが、いわゆる「釣り船」(遊漁船)を規制する遊漁船業の適正化に関する法律(遊漁船業法)についても、その一部を改正する法律が令和6年4月1日より施行されます。

この改正は、遊漁船業者の登録・更新制度の厳格化、遊漁船業者の安全管理体制の強化、利用者の安全等に関する情報の公表等の措置、及び罰則の強化等、遊漁船の安全性の向上に向けた措置の強化を中心とした規定が盛り込まれた内容となっています。

遊漁船業法の改正点

改正のポイントは下表のとおりですが、この基準は新規登録者に限定して適用されるものではなく、既存の事業者を含めたすべての遊漁船業者に適用されるものです。

業務規程①業務規程の内容が大幅に変更
②登録、更新、変更の際は、申請時に業務規程の提出義務化(従来は登録後)

③すべての遊漁船業者は、新しい業務規程の作成・提出が必要(提出期限:令和6年10月1日)
遊漁船業務主任者①業務主任者の業務見直し
②欠格期間延長
重大事故①重大な事故が発生した場合の都道府県への報告義務化
②都道府県による事故情報の公開
情報の公表利用者の安全に関する項目の、インターネットによる公表の原則義務化
損害賠償措置①保険の加入者数を「遊漁船の定員」から「利用者の定員」に変更
②瀬渡しの場合における損害賠償措置の限度額引上げ
厳罰化①登録の欠格期間延長
②処分歴のある業者の登録有効期間短縮
③罰則強化
業務規程変更のポイント

新規登録申請の際は、新たな基準に適合した業務規程を作成して備え付ける必要がありますが、既存の遊漁船業法者についても、令和6年10月1日を期限として、業務規程を提出する必要があります。

別表1船長・業務主任者その他の従業員の確保①遊漁船の隻数に応じた船長・業務主任者・乗組員等を確保すること(同時に2隻以上運航する場合、船長と業務主任者は兼務可能)
連絡責任者は陸上にいる人物を選任すること(洋上にいる船長や業務主任者は選任することができない)

③すべての遊漁船業者は、新しい業務規程の作成・提出が必要(提出期限:令和6年10月1日)
別表2案内する漁場の位置及び安全管理体制①案内する漁場を明記すること(図面での提出も可能)
立入禁止場所への案内禁止
③安全管理体制を構築すること(周囲の見張り、瀬渡しの場合は定期巡回など)
別表4利用者の安全確保に必要な設備等船舶安全法に規定されている通信設備・救命設備を設置すること1
別表5の1出航前検査①船長は、出航前に船舶や機器等の検査を実施すること
②業務主任者は、出航前検査の実施を確認し、検査の記録を1年間保管すること
別表5の2飲酒検査①業務主任者は、出航前に、船長・業務主任者・乗組員の酒気帯びの検査を実施し、記録を作成すること
②遊漁船業者は、検査の記録を1年間保管すること
③酒気帯び状態での業務禁止
別表6救命胴衣の着用①利用者が乗船する際に救命胴衣を着用させること
②乗船中(船室外)は救命胴衣を常時着用させること
遊漁船案内時の船長、業務主任者の釣り禁止(従前は任意)
別表7出航中止・帰航基準①遊漁船業者は、出航中止基準2及び帰航基準を設定すること
②出航中止基準に該当した場合は出航を中止すること(出航中止基準に該当しない場合でも、状況に応じて判断すること)
③遊漁案内中、帰航基準に該当した場合は、速やかに帰航すること
別表9海難発生時の対処及び連絡体制①船長は、海難事故等が発生した場合、速やかに海上保安機関等に連絡し、連絡責任者に事故の状況を連絡すること
②連絡責任者は、海難事故等が発生した場合、医療機関への連絡等、必要な措置をとり、利用者の緊急連絡先に連絡すること
③重大事故(衝突・乗揚げ・火災・転覆・機関故障・死傷者発生)が発生した場合は、速やかに事故報告書を提出すること
  1. 船舶安全法の改正により、航行区域などの条件から、救命いかだ、無線等の通信設備、位置発信装置の設置が義務付けられますが、遊漁船の場合、安全設備の設置期限について、最新の情報では「検討中」とされています。 ↩︎
  2. 出航中止基準の1つに「海上警報(風・霧等)、波浪警報、津波警報・注意報の発令中」があります。 ↩︎

届出した業務規程の内容に違反した場合、遊漁船業法第20条の規定に基づき、業務改善命令が出されます。その後も改善が見られない場合は、最終的に登録を取り消されることがあります。

業務主任者変更のポイント

業務主任者については、業務改善命令により業務主任者を解任された場合の欠格期間が5年に延長(令和6年4月1日時点で欠格期間に該当している場合)されたほか、新たに以下の業務が追加されました。

出航前に行うもの①出航前検査の実施、記録の保存
②乗船時、利用者の救命胴衣着用徹底
③乗組員全員の酒気帯び等確認の実施、記録の提出
④遊漁船業者の出航判断に関する意見
乗船中に行うもの①安全確保に必要な指導・助言(利用者が乗船中に守るべき行動など)
②瀬渡しの場合、利用者の安全管理の実施
帰航後に行うもの乗務記録の作成(気象・海象、案内した海域、発生した事故など)
業務主任者実務研修変更のポイント

業務主任者実務研修については、研修期間が10日から30日に延長され、研修内容についても、業務形態(船釣り・瀬渡し・体験漁業等)ごとに実施されることになったため、例えば「船釣り」で研修を受けた場合、瀬渡しでの登録はできません。

また、研修の実施者の要件が、1年以上の実務経験を有し、研修を実施する能力がある者と変更されたほか、研修後は、受講者の研修内容に対する理解度について確認し、研修記録の作成・保存が義務付けられました。

損害賠償措置変更のポイント

加入すべき損害賠償保険の限度額が、1人当たり3,000万円以上から、5,000万円以上に引き上げられています。5,000万円未満の損害賠償保険に加入している既存の遊漁船業者については、令和7年4月1日を期限に、1人当たり5,000万円以上の損害賠償保険に加入する必要があります。

★「定員」について

「定員」の定義については、「遊漁船の定員」ではなく、「利用者の定員」に変更されました。

また、磯渡しの場合は、同時に利用する最大人数(利用定員)を決め、 利用定員分の損害賠償措置に加入する必要があります。

(例)遊漁船の旅客定員10名の場合
沖合の磯に3往復して最大30人を同時に渡す場合利用定員30名
1便で10名を磯に渡し、2便で10名を磯に渡すが、その帰りに1便の10名を連れ帰る場合利用定員20名
磯に10名を渡している間、同時に船釣りも行う場合利用定員20名
厳罰化変更のポイント

業務改善命令違反に関する罰則が、1年以下の懲役又は150万円以下の罰金(法人は1億円以下の罰金)に引き上げられたほか、以下の点について罰則が厳格化されています。

登録の有効期間①事業停止命令を受けた者は1年に短縮
②業務改善命令を受けた者は3年に短縮
③事故報告違反・情報公開違反で過料に処せられた者は3年に短縮
登録の欠格期間延長欠格期間を5年に延長(令和6年4月1日時点で2年間の欠格期間に該当する場合も5年に延長)
欠格要件の追加現船員法違反、処分逃れの廃業、密接関係者及び暴力団関係者が追加

新基準対応遊漁船業サポート

当事務所では、遊漁船業に関する手続きを十八番とし、新規登録申請をはじめ、登録の更新、業務規程の作成・改定及び船舶に関する手続きの代行を承(うけたまわ)っております。改正法による新基準にも他所に先駆けていち早く対応し、既に全国各地で申請を実施しています。

また、当事務所は「話しの分かる海事代理士・行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。遊漁船業登録に関する手続きでお困りの際は、当事務所までどうぞお気軽にご相談ください。

業務規程の作成・改定55,000円
遊漁船業新規登録申請88,000円~
遊漁船業更新登録申請55,000円~
※税込み

遊漁船の登録と業務規定改定に関するご相談はお気軽に♬

全国対応可能です。

平日9時〜18時、📩は24時間365日対応!

06-6415-9020 または 090-1911-1497

メールでのお問い合わせはこちら。

お問い合わせフォーム

事務所の最新情報をお届けします

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA