地方運輸局長による船舶運航管理者の認定基準について

神戸第2地方合同庁舎

運航管理者とは、気象海象(天候や海の状況)などの情報を適時適切に収集し、船舶の運航の可否を判断するなど、船舶の運航を全般的に管理する責任者です。

海上運送法および内航海運業法では、事業を実施するにあたり各事業者において運航管理者の選任を義務付けており、その役割についても明確に規定しています。

運航管理者は国家資格として位置づけられていますが、特に試験等を受験する必要はなく、18歳以上の者であって、かつ国土交通大臣の命令により解任された日から2年を経過しない者のうち、下記のいずれかの要件を満たす者から選任します。

  1. 事業に使用する船舶のうち最大のものと同等以上の総トン数を有する船舶に船長として3年又は甲板部の職員として5年以上乗り組んだ経験を有する者であること
  2. 船舶の運航の管理を行おうとする事業と同等以上の規模の事業における船舶の運航の管理に関し3年以上の実務の経験を有する者であること
  3. 船舶職員及び小型船舶操縦者法の規定により船長として乗り組むことができる資格を有する者であること(総トン数100トン未満の船舶1隻のみを使用して事業を営む場合に限る)
  4. 事業における船舶の運航の管理に関し上記の者と同等以上の能力を有すると地方運輸局長が認めた者であること

上記のうち、1〜3までは記載内容のとおりですが、4の「事業における船舶の運航の管理に関し上記の者と同等以上の能力を有すると地方運輸局長が認めた者」については、基準に則り地方運輸局長から認定を受けた者である必要があります。

そこで本稿では、運航管理者として地方運輸局長に認定されるための要件について詳しく解説していきたいと思います。

1の認定基準

事業に使用する船舶のうち最大のものと同等以上の総トン数を有する船舶に船長として3年又は甲板部の職員として5年以上乗り組んだ経験を有する者と同等以上の能力を有することの認定基準は以下のとおりです。

旅客船の乗組経験

総トン数、経験年数については、それぞれの数値を4分の1まで下回る範囲内にあるときでも同等であるものと認められるため、たとえば使用する船舶が総トン数20トンである場合、総トン数16トン以上の船舶に船長として2年9月(32月)以上乗船した経験があれば運航管理者として認定を受けることができます。

また、事業に使用する船舶より大きい総トン数を有する船舶に乗り組んだ者の経験年数については、船長又は甲板部の職員について以下の式により算出した経験年数があれば認定を受けることができます。ただし、船長の場合は1年、甲板部の職員の場合は3年が最低限度となります。

★船長の場合の必要経験年数

(3×最大使用旅客船の総トン数)÷乗組経験を有する旅客船の総トン数(≧1)

★甲板部職員の場合の必要経験年数

(5×最大使用旅客船の総トン数)÷乗組経験を有する旅客船の総トン数(≧3)

なお、機関部、通信部及び事務部の職員は、7年以上の乗組経験があれば認定を受けることができます。

上記の経験年数をそれぞれ換算して得た数が必要経験年数に達している者であれば認定を受けることができます。

貨物船の乗組経験

原則として総トン数で同等以上の貨物船に船長又は甲板部の職員として旅客船の必要経験年数の2倍の経験年数があれば認定することができます。ただし、運航の管理を行なおうとする航路のある海域を航海した経験があるときはこれにかかわらず、船長として4年以上、甲板部職員として6年以上の乗組経験があれば認定を受けることができます。(貨物フェリーの使用船舶の乗組経験を有する者が旅客フェリーの運航管理者になろうとする場合は、この航海経験がないときでもロと同様の乗組経験があれば認定を受けることができます。)

2の認定基準

船舶の運航の管理を行おうとする事業と同等以上の規模の事業における船舶の運航の管理に関し3年以上の実務の経験を有する者と同等以上の能力を有することの認定基準は以下のとおりです。

以下の事項のうち使用旅客船の隻数を含む2つ以上についてそれぞれの数値を4分の1まで下回る範囲内にあれば、同等以上の規模の事業として認定を受けるすることができます。

  • 使用旅客船の隻数
  • 使用旅客船の総トン数の合計
  • 月間旅客輸送量(人キロ)又は月間自動車航送量(台キロ)
  • 総航路距離

旅客不定期航路事業の運航の管理の経験のある者が旅客定期航路事業の運航管理者になろうとする場合は、経験を有する旅客不定期航路事業の事業の規模が上記の使用旅客船の隻数を含む3つ以上の事項についてそれぞれの数値が上記の基準に適合し、かつ、旅客不定期航路事業の運航月数の合計が3年以上であれば認定を受けることができます。

なお、「運航の管理に関し」とは、陸上作業員程度の単純作業の経験では足りず、副運航管理者、運航管理補助者等のように、ある程度運航管理者の権限を委任され、陸上作業員等を指揮監督した経験を有することが必要とされています。

3の認定基準

船舶職員及び小型船舶操縦者法の規定により船長として乗り組むことができる資格を有する者とは、海技従事者の免許を受け、その効力を失っていない者であることを指します。なおこの規定は、常時使用する旅客船が総トン数100トン未満の船舶1隻のみの事業を営む場合にのみ適用されます。

その他の認定基準

行政官庁において10年以上海事に関する業務に従事した者又は旅客定期航路事業若しくは旅客不定期航路事業において10年以上勤務した者であって、海上運送法、船舶安全法、船員法、海上衝突予防法、および港則法その他運航管理に必要な事項について十分な知識を有すると認められる者は、運航部長、船舶部長および船員部長の三者により面接試験を行なうことにより認定を受けることができます。

また、総トン数3,000トン以上の船舶を使用する航路事業の特例当該事業に使用する最大の旅客船が総トン数3,000トン以上以上のものであるときは、甲種船長の海技免状を有する者又は総トン数5,000トン以上の旅客船を使用する旅客定期航路事業の運航の管理に関し5年以上の実務経験がある者であれば認定を受けることができます。

その他諸般の事情から判断して基準に該当すると認められる者は、認定を受けることができるものとされています。(船長1年、運航管理に関し2年の経験を有する者等)

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