国土交通省の船員モデル就業規則を船員法ですっきり解説

国土交通省の銘板

船員の労働環境は特殊かつ過酷です。このため労使双方が守るべきルールブックである就業規則は、船員が安心して働くことができる環境を整え、労使間の無用のトラブルを防ぐためにも重要な役割を担います。

ところがこの「船員就業規則」は、船員の働き方が特殊であるがゆえに作成は困難を極め、そもそも対象となる船員が極めて少ないことから情報量も乏しく、手探りでの運用という現状がありました。

そこで令和4年1月、国土交通省では船員の働き方改革の一環として、船舶所有者による就業規則の作成・見直しに役立つよう、「船員モデル就業規則」を作成し、公開しました。

本稿ではこの「船員モデル就業規則」をなぞりつつ、必要な事項について解説を加えるという形式で紹介させていただこうと思います。

船員就業規則とは

就業規則とは、労働者が労働する上で遵守しなければならない事項を規律し、保護されるべき労働条件を具体的に明示すべく、労使間の合意の下で作成された規則です。労働契約書が事業者と労働者との労働条件を定めた個別の約束事であるならば、就業規則は事業所全体に適用される労使間のルールブックです。

常時10人以上の船員を使用する船舶所有者は、事業規模や船種を問わず、就業規則を作成し、国土交通大臣に対して届出を行う必要があります。また、届出をした就業規則は、船内及びその他の事業場内に掲示又は備え置かなければなりません。

なお、「常時10人以上」とは、「常態として10人以上の船員を使用している」という意味であり、常勤であるか非常勤であるかは問われません。また、季節営業であってもその営業期間中常に10人以上の船員を使用していれば該当することになります。

就業規則の内容

就業規則に記載する事項には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、各船舶所有者でルールを定める場合には記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)とがあります。また、これら以外の事項については、船舶所有者において任意に記載することができます。

なお、就業規則の内容は、法令及び使用する船員に適用される労働協約に反してはなりません。法令又は労働協約に反する就業規則については、主たる船員の労務管理の事務を行う事務所の所在地を管轄する地方運輸局長はその変更を命ずることができます。

絶対的必要記載事項

  • 給料その他の報酬
  • 給料その他の報酬の決定及び支払の方法、支払の時期並びに昇給の基準に関する事項
  • 労働時間
  • 基準労働期間、休息時間、当直割及び当直の交代方法並びに交代乗船制等特殊の乗船制をとる場合における当該乗船制に関する事項
  • 休日及び休暇
  • 時期、方法及び場所に関する事項
  • 定員
  • 海員の職務及び員数並びに船舶の名称、総トン数、主機の出力、航行区域又は従業区域、就航航路又は操業海域及び用途に関する事項

相対的必要記載事項

  • 食料並びに安全及び衛生
  • 被服及び日用品
  • 陸上における宿泊、休養、医療及び慰安の施設
  • 災害補償
  • 失業手当、雇止手当及び退職手当
  • 送還
  • 教育
  • 賞罰
  • その他の労働条件(雇用船員すべてに適用されるルールに関する事項など)

就業規則の作成及び変更の手続き

常時10人以上の船員を使用する船舶所有者は、就業規則を作成するとともに、これを作成し、又は変更したときは、所轄地方運輸局長に届け出る必要があります。

就業規則を作成し、又は変更する場合の所轄地方運輸局長への届出については、船員の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合の意見書、過半数で組織する労働組合がない場合は船員の過半数を代表する者の意見書に加え、代表者選任の同意書又は委任状を提示する必要があります。

就業規則の作成又は変更に当たっては、その内容をよく吟味するとともに上記の手続等を遵守しなければなりません。特に、就業規則を船員にとって不利益に変更する場合には、船員の代表の意見を十分に聴くとともに、変更の理由及び内容が合理的なものとなるよう慎重に検討することが必要です。なお、就業規則の届出については郵送で行うことも可能です。

就業規則の周知

作成した就業規則は、船員がいつでも見られるように船内及びその他の事業場内の見やすい場所に掲示し、又は備え置かなければなりません。

就業規則は、作成又は変更したり、船員の代表者から意見を聴取したりしただけでは効力は発生せず、掲示又は備置きにより船員に周知することが必要になります。なお、就業規則の効力発生時期は、就業規則が何らかの方法によって船員に周知された時期以降で、就業規則に施行期日が定められているときはその日、就業規則に施行期日が定められていないときは、通常は船員に周知された日と解されています。

モデル就業規則の活用

それではいよいよモデル就業規則の内容について吟味していきましょう。このモデル就業規則はあくまで規程例であり、就業規則の内容は、法令に従うだけではなく、実情を踏まえた適切なものとしなければなりません。したがって、就業規則の作成に当たっては、労働時間、給料などの内容を十分検討するようにしましょう。

また、モデル就業規則は、主として一般的な船員への適用を想定して作成しているため、特別な乗船形態等の船員を雇用している場合などには、各条項についての適用の可否を必ず検討し、その結果を踏まえて就業規則を作成してください。

総則

総則には、一般的に就業規則の作成の目的や適用範囲等を規定します。

(目的)
この就業規則(以下「規則」という。)は、船員法第97条に基づき、    株式会社(以下「会社」という。)の船員の就業に関する事項を定めるものである。 

各船舶所有者が作成した就業規則に定めがない事項については、船員法等関係法令の規定、労働協約、雇入契約及び雇用契約の定めによることになります。

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める雇入契約及び雇用契約は、その部分については無効となります。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準によることになります。

また、就業規則が法令又は使用する船員に適用される労働協約に違反する場合は、所轄地方運輸局長はその変更を命ずることができます。

(適用範囲)
 この規則は、会社の船員に適用する。
2 所定の労働時間又は労働日数が異なる船員の就業に関する事項については、別に定めるところによる。
3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

就業規則は、すべての船員について作成する必要がありますが、必ずしもすべての船員について同一のものでなければならないわけではありません。同一の船舶であっても、通常の船員と勤務態様の異なる特別な乗船形態等の船員については、一定の事項について特別の規定を設けたり、別の就業規則を定めたりすることができます。

特別な乗船形態等の船員について、規定の一部を適用除外とする場合や全面的に適用除外とする場合には、就業規則本体にその旨明記し、特別な乗船形態等の船員に適用される規定を設けたり、別の就業規則を作成しなければなりません。

(定義)
 この規則において、船員とは乗組員及び予備船員をいう。
2 船員を雇用期間の定めのない船員(以下、「常用雇用船員」という。)と雇用期間の定めのある船員(以下、「期間雇用船員」という。)とに区分する。
3 この規則において、乗組員とは、雇入契約により船舶に乗り組む者をいう。
4 この規則において、予備船員とは、艤装員、陸上休暇員、特別休暇員、有給休暇員、教育員、陸上勤務員、傷病員及び休職員をいう。
5 この規則において、艤装員とは、船舶の艤装に関する業務に従事する者をいう。
6 この規則において、陸上休暇員とは、船外で休日又は補償休日を付与され、又は乗船まで待機している者をいう。
7 この規則において、特別休暇員とは、船員が海賊行為により船上又は船外で拘束された場合に、海賊から解放され適切に送還されるまで又は拘束中に死亡した日(失踪宣告を受け、死亡したとみなされた場合を含む。)までの身柄を拘束されている者をいう。
8 この規則において、有給休暇員とは、有給休暇を付与され休暇中の者という。
9 この規則において、教育員とは、社命により教育訓練の受講等を行う者をいう。
10 この規則において、陸上勤務員とは、乗船まで待機中に社命により陸上勤務に従事する者をいう。
11 この規則において、傷病員とは、病気休暇により、傷病員となった者をいう。
12 この規則において、休職員とは、第10条の休職、第41条の育児休業及び介護休業により、休職員となった者をいう。

船員の就業が乗船中と下船中で大きく異なるため、船員就業における区分を明らかにしておくことが重要です。なお、船舶所有者と船員との契約関係については、乗組員については雇入契約、予備船員については雇用契約とされています。

予備船員制度を採用する場合には、予備船員期間中の賃金支払い等のトラブル防止の観点から、船舶所有者内の就業実態や賃金区分に応じて定義を規定する必要があります。

雇用期間を定めて採用する場合には、1回の乗船期間を定める場合(予備船員制度を設けない場合)の他、一定の期間(雇用契約期間内)において、複数回乗船(雇入契約)するような場合があります。この点についても船舶所有者の実情に応じて検討するようにします。

ここでいう陸上勤務員は、船員法上の予備船員に該当するものを想定しています。しかし、船員として雇用契約を締結している者であっても、長期間にわたって陸上業務を行わせる等、船舶に乗り組むための雇用と矛盾するような場合には、船員法上の予備船員には該当せず、労働基準法(以下、労基法)が適用されることとなります。そのため、船員として雇用した者についてもそのような働き方を予定している場合には、別に労基法に適合した労働条件を定める必要があります。

(規則の遵守)
 会社は、この規則に定める労働条件により、船員に就業させる義務を負う。また、船員は、この規則を遵守しなければならない。

採用、異動・雇入契約等

採用、異動・雇入契約等については、一般的に採用に際しての手続に関する事項、試用期間、労働条件の明示、乗船命令による雇入契約を含む人事異動、休職に関すること等を定めます。

(採用手続)
 会社は、入社を希望する者の中から選考試験を行い、これに合格した者を採用する。
2 会社は、船員として採用を決定した者から請求があったときは、雇用証明書を交付する。また、前項により採用を予定した者に対しても同様とする。
3 会社は、船員として採用を決定した者のうち有効な健康証明書を所持していない者に対しては、会社の負担により、健康検査を実施する。

会社は、船員の採用に当たり、男女かかわりなく均等な機会を与えなければなりません。合理的な理由がない場合に、船員の採用において身長・体重・体力を要件とすること、転居を伴う転勤に応じること等を要件とすることは、間接差別として禁止されています。

また、船員として採用された者は船員手帳を受有する必要がありますので、会社は船員手帳の交付に必要な雇用証明書を交付する必要があります。

(採用時の提出書類)
 船員として採用された者は、採用された日から  週間以内に次の書類を提出しなければならない。
住民票記載事項証明書
船員手帳の写し(会社が指定する部分に限る。)
海技免状その他の資格証明書の写し(ただし、資格証明書を有する場合に限る。)
その他会社が指定するもの
2 前項の定めにより提出した書類の記載事項に変更を生じたときは、速やかに書面で会社に変更事項を届け出なければならない。

船舶所有者は、国土交通大臣が指定した医師が船内労働に適することを証明した健康証明書を持たない者を船舶に乗り組ませてはならないため、採用した船員に健康検査を受診させる必要があります。また、雇用船員に係る健康証明に要する費用の負担は船舶所有者が負担する必要があります。

船員の年齢、現住所を確認するに当たり、船員から戸籍謄本(抄本)や住民票の写しを提出させることは適切ではありません。また、提出させる書類については、その提出目的を船員に説明し、明らかにします。、採用された日からの書類の提出時期を定めるに当たっては、船員手帳の取得や健康検査の受診等にかかる期間を考慮する必要があります。

(試用期間)
 船員として新たに採用した者については、採用した日から  か月間を試用期間とする。
2 前項について、会社が特に認めたときは、試用期間を短縮し、又は設けないことがある。
3 会社は、試用期間中に船員として不適格と認めた者を解雇することがある。
4 試用期間は、勤続年数に通算する。

船員法上、試用期間についての定めはなく、船舶所有者は就業規則において試用期間及びその期間を定めることがことができますが、期間については船員の地位を不安定にすることから、あまりに長期とすることは好ましくありません。

試用期間中の乗組員も船員である以上、職務上負傷し、又は疾病にかかり作業に従事しない期間及びその後30日並びに女子船員の妊娠に伴い作業に従事しない期間及びその後30日間は解雇することはできません。

また、船舶所有者の都合上やむを得ない事由により雇入契約を解除する場合には、1か月分の給料の額と同額の雇止手当を支払うことが必要となります。

試用期間中の予備船員も船員である以上、解雇については、原則として30日以上前に予告をしなければなりません。予告をしない場合には、1か月分の給料の額と同額の予告手当を支払うことが必要となります。

試用期間を定めていたとしても労働契約は成立し、試用期間中は本採用を拒否できる解約権が留保されているという考え方(解約権留保付労働契約)が判例や実務の扱いとなっています。このため、試用期間終了後に本採用を拒否する場合は、解雇の手続が必要です。加えて、試用期間中の船員が乗船中である場合には、雇止手続きが必要となります。

また、船員として不適格と認められる場合については、客観的に合理的な理由が必要です。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合の解雇は無効となります。

(労働条件の説明)
 会社は、船員を採用するとき、雇用の期間(下船時期を含む。)、乗り組むべき船舶に関する事項、職務に関する事項、給料その他の報酬(報酬額の決定及び支払い方法)、労働時間、休日、その他の労働条件を記した労働条件通知書及びこの規則の写しを交付して説明するものとする。

雇入契約(予備船員の場合は雇用契約)を締結しようとするときは、雇入契約の相手方に給料その他の報酬、労働時間、その他の労働条件として次の項目がすべて記載された書面を交付して、説明する必要があります。また、派遣船員として雇用しようとするときは、あらかじめ、当該船員にその旨を交付して説明する必要があります。

  • 雇用の期間に関する事項
  • 乗り組むべき船舶の名称、総トン数、用途(漁船にあっては、従事する漁業の種類を含む)及び就航航路又は操業海域に関する事項
  • 職務に関する事項
  • 給料その他の報酬の決定方法及び支払いに関する事項(報酬が歩合によって支払われる場合は、船員法第58条第1項の一定額及び同条第3項の額を含む)
  • 基準労働期間、労働時間、休息時間、休日及び休暇に関する事項並びに交代乗船制等特殊の乗船制をとる場合における当該乗船制に関する事項
  • 災害補償に関する事項
  • 退職、解雇、休職及び制裁に関する事項
  • 海賊行為による被害を受けた場合における措置に関する事項
  • 送還に関する事項
  • 予備船員制度があるときはその概要
  • 船員派遣の対象となるときはその概要

また、採用内定により労働契約が成立していると解される場合がありますが、この場合には、採用内定に際して、内定者に労働条件を書面で明示する必要があります。

(人事異動等)
 会社は、業務上の必要により、船員に対して乗り組む船舶、従事する職務及び乗船期間の指定又はその変更その他配置転換若しくは在籍のまま関係会社への出向をを命ずることがある。
2 前項の場合であって、雇入契約の締結又は変更が必要な場合には、会社は前条に規定する労働条件を書面で交付して説明のうえ、雇入契約を締結又は変更する。
3 会社は、業務上の必要により、乗船までの待機中に陸上勤務を命ずることがある。

船員を採用した後、船舶所有者が業務上の必要から乗り組む船舶や従事する職務を変更することは、変更がない旨の特別な合意等がない限り可能です。ただし、船員法では乗船命令や職務の変更等により雇入契約を締結する場合においても、雇入契約の内容を書面で交付して説明し、船員の合意を得る必要があります。

なお、船員の乗り組む船舶を変更しようとする場合には、労働者の育児や介護の状況に配慮しなければなりません。

また、他の船舶所有者へ出向や船員派遣させることが想定される場合、出向・船員派遣に関する規定を設けておく必要があります。なお、船員派遣の対象は、船舶所有者が常時雇用する船員のみとなります。

乗船中に定年に達することとなる乗船命令(期間を定めた雇入契約)の場合、船員法上、定年に達したことが雇止事由とはなっていないため、定年に達した日をもって雇止めとして退職させることができず、定年後も雇用が継続することになります。そのため、このような船員と雇入契約を締結するに当たっては、継続雇用や退職について十分協議をすることが重要です。

(休職)
船員が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間、休職員とする。
業務外の傷病による乗船できない期間が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき(療養休職員)             年以内
船員からの休職の申し出について、会社が認めたとき(依願休職員)

会社が認める期間

その他、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき(依命休職員)
                                必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3 第1項第1号により療養休職員となり、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。
4 第1項第2号の依願休職員が、休職期間中に復職しないときは、休職期間の満了をもって退職とする。

休職とは、業務外での疾病等主に船員側の個人的事情により相当長期間にわたり就労を期待し得ない場合に、船員としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。なお、ここでいう「特別な事情」には、公職への就任や刑事事件で起訴された場合等が当たります。

休職期間中に休職事由がなくなった場合は、当然に休職が解除され復職となります。なお、休職の定義、休職期間の制限、復職等については、船員法及び労基法に定めはありません。

雇止・送還、解雇及び定年

雇止・送還、解雇及び定年に関する事項は、その他の労働条件として就業規則の相対的必要記載事項に当たります。雇止・送還や解雇に関する手続きについては、船員法に規定されていますが、定年に関しては、船員に係る法令の定めはありません。

(雇止・送還)
 次のいずれかに該当する船員との雇入契約は、終了する。
乗り組んでいる船舶が沈没又は滅失したとき。(人命救助等の必要な作業に従事している場合は当該作業が終了したとき。)
乗り組んでいる船舶が全く運航に堪えなくなったとき。
船舶が雇入契約の成立時における国籍を失ったときに船員より雇入契約の解除の申し出があったとき。
雇入契約により定められた労働条件と事実とが著しく相違するとして、船員より雇入契約の解除の申し出があったとき。
船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないとして、船員より雇入契約の解除の申し出があったとき。
学校等の教育機関における教育を受けるため、船員より7日以前に書面にて申入れがあったとき。
期間の定めのある雇入契約にあっては、その期間を満了したとき。
期間の定めのない雇入契約にあっては、会社が、24時間以上の期間を定めて書面で雇入契約の解除の申入れがあったときは、その期間が満了したとき。
期間の定めのない雇入契約にあっては、船員が、24時間以上の期間を定めて書面で雇入契約の解除の申入れがあったときは、その期間が満了したとき。
期間の定めのない雇入契約にあっては、会社が、陸上において休日若しくは補償休日又は有給休暇を付与するとき。
2 会社は、次のいずれかに該当する船員との雇入契約を解除できる。
船員が著しく職務に不適任であるとき。
船員が著しく職務を怠ったとき、又は職務に関し船員に重大な過失のあったとき。
乗組員が船長の指定する時までに船舶に乗り組まないとき。
乗組員が著しく船内の秩序をみだしたとき。
船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないとき。
船員が健康証明書を受けることができないとき。
前各号の場合を除いて、やむを得ない事由のあるとき。
3 前2項により雇入契約が終了又は解除された場合、会社は当該船員に対して下船を命じる。ただし、船舶が航行中の場合には、次の港に入港してその港における積み荷の陸揚及び旅客の上陸が終わるときまで雇入契約は存続するものとみなす。
4 会社は、第1項第1号及び第2号により雇入契約が終了した船員に対しては、2か月の範囲内において、失業期間中、毎月1回その失業日数に応じた失業手当を支払う。ただし、雇入契約終了後に失業手当の額を上回る給料その他の報酬を支払う場合はこの限りではない。なお、失業手当の額は、月額で定める基本給の額とし、月間所定労働時間により算出するものとする。
5 会社は、第1項第3号、第4号及び第8号並びに第2項第6号及び第7号により雇入契約を終了した船員に対し、1か月分の基本給の額と同額の雇止手当を支払う。ただし、雇入契約解除後に雇止手当の額を上回る給料その他の報酬を支払う場合には、当該手当は支払わない。
6 会社は、第3項により下船を命じたとき(第1項第6号及び第9号に該当する場合を除く。)は、会社の負担により、雇入港までの送還に要する費用の範囲内で船員の希望する地まで送還する。ただし、送還に代えて第61条に基づく旅費を支払う場合がある。
7 会社は、第2項第2号から第4号までの規定により雇入契約を解除した場合又は同項第5号の規定により雇入契約を解除した場合であって、職務外の負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のある場合においては、船員に対し、前項による送還に係る費用又は旅費の償還を請求する場合がある。
8 会社は、第1項第1号から第5号まで、第7号、第8号若しくは第10号又は第2項第1号若しくは第5号から第7号までの規定による雇入契約の解除等により送還する場合には、船員の送還に要する日数に応じ基本給の額と同額の送還手当を支払う。第6項ただし書きの規定により旅費を支払うときも同様とする。

民法においては、期間の定めのない雇用の場合、労働者(船員)はいつでも退職を申し出ることができますが、船員法においては、雇入契約を締結中は、雇入契約の解除事由がない限り、船員は雇入期間中に雇入契約を終了したり退職を申し出て下船したりすることはできません。なお、船員から雇入契約の解除の申入が書面で行われなかった場合であっても有効な意思表示として取り扱わなければなりません。

船舶所有者は、船員法第46条で定める事由に該当する場合には、遅滞なく、船員に1か月分の給料(一定の金額により定期的に支払う報酬のうち、基本となるべき固定給)の額と同額の雇止手当を支払わなければなりません。ただし、雇用を継続し、給料その他の報酬を支払う場合は、給料その他の報酬の支払うべき限度において、雇止手当の支払いが義務が免除されます。

また、船舶が沈没又は滅失等により雇入契約が終了した場合、船舶所有者は2か月の範囲内において、雇入契約が終了した船員の失業期間中毎月1回その失業日数に応じ給料(一定の金額により定期に支払う報酬のうち基本となるべき固定給)の額と同額の失業手当を支払わなければなりません。

ただし、給料その他の報酬、失業手当、送還手当、疾病手当又は行方不明手当のうち、その二以上をともに支払うべき期間については、いずれか一の多額のものを支払えばよいこととなっています。

船舶所有者は、船員の希望により、雇入港又は雇入港までの送還に要する費用の範囲内で送還することのできるその他の地まで送還しなければなりません。この場合、送還に代えて費用を支払うことができます。また、船員に重大な過失があった場合等においても船員を送還する必要がありますが、送還費用の償還を請求することできます。

船舶所有者は、船員を送還する場合(費用を支払うときも同様)には、船員の送還に要する日数に応じ給料の額と同額の送還手当を支払わなければなりません。

(退職)
 船員が次のいずれかに該当するときは、雇用契約を終了して、退職とする。
船員が退職を願い出て会社が承認したとき。
予備船員が退職願を提出して  日を経過したとき。
期間を定めて雇用されている場合、その期間を満了したとき。
第10条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき。
死亡したとき。
定年に達したとき。
2 前項第3号及び第6号の場合にあって、期間を定めた雇入契約が存続している場合には、当該雇入契約が終了したときに雇用契約も終了して、退職とする。

船員はいつでも退職を申し出ることができます。ただし、雇入契約を締結して乗船中の船員については、船舶所有者が承認した場合を除き、雇入契約の解除事由がない限り、雇入期間中に退職を申し出て下船することはできません。

また、期間の定めのない雇用契約を締結している予備船員については、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。

(解雇)
 船員が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、船員としての職責を果たし得ないとき。
 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らないとき。
 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、船員として不適格であると認められたとき。
 第81条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
 事業の運営上やむを得ない事由により、船舶数の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
 天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合として、所轄地方運輸局長から認定されたとき。
 その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。
2 前項の規定により予備船員を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、1か月分の基本給以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。
3 前項の規定は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は予備船員の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合における各事由について国土交通大臣の認定を受けた場合は適用しない。

就業規則に規定する解雇の事由について特段の制限はありませんが、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。

また、船員法や労基法をはじめ様々な法律で以下のとおり解雇が禁止される場合が定められています。就業規則に解雇の事由を定めるに当たっては、これらの法律の規定に抵触しないようにしなければなりません。

  • 船員の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
  • 船員の性別を理由とする解雇(均等法第6条)。
  • 船員の業務上の負傷、疾病による療養期間とその後30日間及び妊娠中と産後の休業の期間(妊娠中又は産後8週間以内の女性が休業する期間)とその後30日間の解雇
  • 船員が監督機関に申告したことを理由とする解雇
  • 女子船員が婚姻したこと、妊娠・出産したこと等を理由とする解雇(女子船員の妊娠中又は産後1年以内になされた解雇は、船舶所有者が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明しない限り無効)
  • 船員が、個別労働関係紛争に関し、地方運輸局長にその解決の援助を求めたことを理由とする解雇
  • 船員が、均等法、育児・介護休業法及び労働施策総合推進法に係る個別労働紛争に関し、地方運輸局長に、その解決の援助を求めたり、調停の申請をしたことを理由とする解雇
  • 船員が育児・介護休業等の申出をしたこと、船員が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇
  • 公益通報をしたことを理由とする解雇

なお、業務上の事由による負傷、疾病の労働者が療養開始後3年を経過した場合、又は、天災事変その他やむを得ない事由によって事業の継続が不可能となったときで事前に所轄地方運輸局長の認定を受けた場合は、解雇の制限がありません。

予備船員を解雇するときは、原則として少なくとも30日前に予告するか、又は1か月分の給料(一定の金額により定期に支払う報酬のうち基本となるべき固定給)の額と同額の予告手当を支払うことが必要です。(予告の日数は日額の給料を支払った日数だけ短縮することができます。)

また、下記のいずれかの場合であって、所轄地方運輸局長の認定を受けたときも解雇の予告は必要ありません。

  • 天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となるとき
  • 労働者の責に帰すべき事由によって解雇するとき

(定年等) 
船員の定年は、満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

定年とは、労働者が一定の年齢に達したことを退職の理由とする制度をいいます。船員の定年を定める場合は、法令による制限はありませんが、船員は年金の支給開始年齢の経過措置期間中ですので、年金の支給開始年齢を考慮し、労使間で十分検討されることが重要です。なお、定年について労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません。

61歳昭和33年4月2日から昭和35年4月1日までに生まれた方
62歳昭和35年4月2日から昭和37年4月1日までに生まれた方
63歳昭和37年4月2日から昭和39年4月1日までに生まれた方
64歳昭和39年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた方
65歳昭和41年4月2日以降に生まれた方
表:船員の厚生年金の支給開始年齢

(退職等により支払う手当)
 船員が前3条により雇用契約が終了した場合において、次の各号に該当するときは、当該各号で定める手当を支払う。 
 補償休日が与えられていないとき 与えられるべき補償休日の日数に応じた補償休日に就労した場合の割増手当の額以上の額
 有給休暇が与えられていないとき 与えられるべき有給休暇の日数に応じて有給休暇員の給料その他の報酬の額

退職等により支払う手当は雇止手当や予告手当とは支給要件が異なるため、別途支払いの義務があります。

補償休日を与えるべき船員が当該補償休日を与えられる前に解雇され、又は退職したときは、その者に与えるべき補償休日の日数に応じて補償休日手当を支払わなければなりません。これは有給休暇の場合も同様です。

服務規律

(服務)
 船員は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び船内秩序の維持に努めなければならない。

(遵守事項)
 船員は、以下の事項を守らなければならない。
 上長の職務上の命令に従うこと。
 職務を怠り、又は他の乗組員の職務を妨げないこと。
 指定する時までに船舶に乗り込むこと。
 許可なく船舶を去らないこと。
 許可なく救命艇その他の重要な属具を使用しないこと。
 船内の食料又は淡水を濫費しないこと。
 許可なく電気若しくは火気を使用し、又は禁止された場所で喫煙しないこと。
 許可なく日用品以外の物品を船内に持ち込み、又は船内から持ち出さないこと。
 船内において争闘、乱酔その他粗暴の行為をしないこと。
 その他船内の秩序を乱すようなことをしないこと。
 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。
 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。
 その他船員としてふさわしくない行為をしないこと。

服務規律及び遵守事項については、船員法第21条に規定されているところ、就業規則に必ず定めなければならない事項ではありませんが、船内の秩序維持に大きな役割を果たすことから、法令に定めるものの他、船舶所有者にとって船員に遵守させたい事項を定めてください。

(職場におけるパワーハラスメントの禁止)
 職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の船員の就業環境を害するようなことをしてはならない。

(セクシュアルハラスメントの禁止)
 性的言動により、他の船員に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの禁止)
 妊娠・出産等に関する言動及び妊娠・出産・育児・介護等に関する制度又は措置の利用に関する言動により、他の船員の就業環境を害するようなことをしてはならない。

職場におけるパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、及び妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(差別的言動や嫌がらせ)を防止するため、事業主は、雇用管理上必要な措置を講じなければならないこととされています。

(その他あらゆるハラスメントの禁止)
 第18条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の船員の就業環境を害するようなことをしてはならない。

恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向のことを「性的指向」、自己の性別についての認識のことを「性自認」といいます。性的指向や性自認への理解を深め、ハラスメントが起こらないようにすることが重要です。

(個人情報保護)
 船員は、会社及び取引先等に関する情報の管理に十分注意を払うとともに、自らの業務に関係のない情報を不当に取得してはならない。
2 船員は、船舶又は職種を異動あるいは退職するに際して、自らが管理していた会社及び取引先等に関するデータ・情報書類等を速やかに返却しなければならない。

(作業の開始及び終了の時刻等の記録)
 乗組員は、会社が定めるところに従って、作業の開始及び終了の時刻及び作業種別を記録しなければならない。
2 予備船員は、社命により就労したときは、会社の定めるところにより始業及び終業時刻を記録しなければならない。

労働時間の管理については、船舶所有者は船員の労働時間の状況を把握しなければならないこととされており、船員法施行規則第45条及び「船員の労務管理の適正化に関するガイドライン(案)」で船舶所有者が講ずべき措置が具体的に示されています。

基準労働期間、労働時間、休息時間、休日及び有給休暇

基準労働期間、労働時間、休息時間、休日及び有給休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項に当たります。なお、労働時間、休日及び定員の規定の適用がない場合であっても、就業規則の作成義務のある漁船等の船舶の船舶所有者は、これらの事項を就業規則で定める必要があります。

船員の1日当たりの労働時間は8時間以内とされており、1週間当たりの労働時間は基準労働期間について平均40時間以内とされています。

基準労働期間は、船舶の航行区域、航路その他の航海の期間及び態様に係る事項を勘案して、船舶の区分毎に1年以下の範囲内において国土交通省令で定める期間とされています。ただし、船舶所有者が就業規則等に当該期間の範囲内においてこれと異なる期間を設定した場合や、労働協約により1年以下の範囲内においてこれらと異なる期間を設定した場合は、それぞれその定められた期間が基準労働期間になります。

航行区域不定期航路事業定期航路事業
遠洋区域又は近海区域(外航船)1年1年
遠洋区域又は近海区域(内航船)9月6月
沿海区域9月3月
平水区域(700トン以上)3月1月
平水区域(700トン未満)3月3月
基準労働期間

時間外労働は以下の場合に限り、認められています。

  • 船舶の航海の安全を確保するため臨時の必要がある場合(安全臨時労働)
  • 船舶が狭い水路を通過するため航海当直の員数を増加する等の特別の必要がある場合(特別労働)
  • 船舶所有者が、労働時間の制限を超えて船員を作業に従事させることについて、船員の過半数で組織する労働組合等と書面による協定を締結し所轄地方運輸局長に届け出た場合
  • 人命、船舶若しくは積み荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業、操練や航海当直の交代のために必要な作業に従事する場合(緊急作業)
  • なお、安全臨時労働及び緊急作業を除き、時間外労働を含めた船員の1日当たりの労働時間及び1週間当たりの労働時間の上限は、それぞれ14時間及び72時間と定められています。ただし、船長については労使協定による時間外労働に上限はありません。

年齢が18歳に満たない船員や妊産婦(妊娠中又は出産後1年以内の女子)の船員は、人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業に従事する場合を除いて、原則、午後8時から翌日の午前5時までの間に作業に従事させてはなりません。

休息時間については、1日について10時間以上与えなければなりません。また、1日当たり10時間の休息時間は3回以上に分割してはならず、2回に分割する場合においては、いずれか長い方の休息時間を6時間以上としなければなりません。ただし、船舶所有者が船員の過半数で組織する労働組合等との書面による協定を締結し所轄地方運輸局長に届け出た場合は、分割回数の増回や連続休息時間の短縮が可能です。

なお、航海当直をすべき職務を有する者については、上記の労使協定に基づき、船長の判断によって、1週間のうち2日を限度として、休息時間を3回に分割して与えることができます。ただし、休息時間は14時間を超えない間隔で与えなければなりません。

休日については、基準労働期間において1週間当たり平均1日以上与えなければなりません。また、船員の労働時間が時間外労働を除き1週間において40時間を超える場合や、船員に1週間において少なくとも1日の休日が与えることができない場合には、その補償としての休日(補償休日)を、基準労働期間内に与えなければなりません。

船舶所有者は、船員が同一の事業に属する船舶において一定期間連続して勤務に従事したときは、一定期間内に所定の日数の有給休暇を付与しなければなりません。有給休暇取得中は、給料、家族手当等の固定給に加え、乗船中支払わなければならない食料の費用の額と同額の食費を支払わなければなりません。

(基準労働期間)
 基準労働期間は9か月とする。
2 期間雇用船員の基準労働期間は、前項に規定する期間を限度に別途定める。
3 基準労働期間の起算日は、次のとおりとする。
・ 船員が船舶に乗り組む日(当該日がそれ以外の日を起算日とする基準労働期間内にある場合を除く。)
・ 船員が船舶に乗り組んでいる間に基準労働期間が終了した場合にあっては、当該終了した日の翌日
(休日)
 休日は、1週間について1日以上とする。
(補償休日)
 前条に定める休日が与えられなかった場合又は、超過時間(船員の労働時間(第33条に定める時間外及び補償休日労働を除く。)が1週間において40時間を超える時間(当該1週間において休日が与えられなかった場合にあっては、その超える時間が8時間を超える時間)をいう。)が生じた場合には、基準労働期間内に補償休日を与えるものとする。
2 前項の休日は、陸上休日又は停泊中の休日とする。
(補償休日の付与の通知等)
 補償休日を付与する場合には、少なくとも付与の7日前までに、その時期及び場所を、補償休日を付与すべき船員に通知するものとする。
2 前項の規定にかかわらず、航海の遅延その他やむを得ない事由がある場合には、速やかに当該船員に通知することにより、あらかじめ通知した時期及び場所を変更することがある。
(補償休日の付与の延期)
 第26条の規定にかかわらず、次に掲げる場合、当該事由の存する期間、補償休日を与えることを延期することがある。
① 遅延その他の航海の状況に係る事由により基準労働期間内に与えるべき補償休日を与えることができないことが明らかになったとき以降において航海の途中にあるとき。
② 補償休日を与えるべき船員と交代して乗船すべき船員が負傷し、又は疾病にかかり療養のため交代して乗船できないことその他の船舶所有者の責めに帰することのできない事由により、補償休日を与えるべき船員と交代して乗船する船員が確保できないとき。
③ 補償休日を与えるべき船員が負傷し、又は疾病にかかり療養のため作業に従事しない期間中であるとき。
④ 補償休日を与えるべき船員が船舶の機関、設備等の故障発生時における応急措置その他の継続して従事しなければならない作業に従事しているとき。
(補償休日の日数及び付与の単位)
 第26条に規定する補償休日の日数は、船舶に乗り組んでいる期間内に与える場合には、超過時間の合計8時間当たり又は1日の休日が与えられない1週間当たり、1日として計算した日数とする。
2 陸上休日として与える場合には、前項の規定により計算した日数に、7/5を乗じた日数とする。
3 基準労働期間内に与えるべき補償休日の日数の合計が1日未満の端数を生じる場合であって、当該端数が1/2日を超えるときには当該端数に係る補償休日の単位は1日とし、1/2日を超えないときには半日とする。

基準労働期間は、就業規則に必ず定めておかなければなりません。基準労働期間は、1週間当たりの労働時間40時間以内や休日1日付与の平均をとるための期間であり、船舶の航行区域、航路その他の航海の期間及び態様に係る事項を勘案して船舶の区分毎に国土交通省令により定められています。

1週間当たりの労働時間は、基準労働期間について平均40時間以内というのは、陸上勤務、法定の有給休暇、疾病療養等の期間を除いた期間を平均して乗船中の労働時間(時間外・補償休日労働を除く)が40時間以内でなければなりません。

基準労働期間は、就業規則により国土交通省令で定められた範囲内において異なる期間を設定することが可能です。また、労働協約により1年以下の範囲内において異なる期間を設定することも可能です。

船員法では何曜日を休日とするかあるいは国民の祝日を休日とするかについて規定していませんが、休日については基準労働期間において1週間当たり平均1日以上与えなければなりません。

船舶所有者は、船員の労働時間が割増手当の対象となる労働時間(時間外労働と補償休日労働)を除き、1週間において40時間を超える場合又は船員に1週間において少なくとも1日の休日が与えることができない場合には、その補償としての休日(補償休日)を、基準労働期間内に与えなければなりません。

補償休日は、労働協約に特別の定めがない限り、陸上休日又は停泊中の休日でなければなりません。

船舶所有者は、船員に補償休日を与えるときは、付与の時期及び場所を少なくとも当該時期の7日前までに当該船員に通知しなければなりません。ただし、航海の遅延その他のやむを得ない事由がある場合には、船舶所有者は、速やかに当該船員に通知することにより、あらかじめ通知した時期及び場所を変更することができます。

船舶所有者は、遅延その他の航海の状況に係る事由により基準労働期間内に与えるべき補償休日を与えることができないことが明らかになったとき以降において航海の途中にあるとき等のやむを得ない事由のあるときは、その事由の存する期間、補償休日を与えることを延期することができます。

補償休日の日数は、超過時間の合計8時間当たり又は少なくとも1日の休日が与えられない1週間当たり1日を基準として算出し、付与の単位は1日(労働協約に特別の定めがあるときは半日も可)となります。また、陸上休日として与える場合は、算出された日数に5分の7を乗じた日数となります。

基準労働期間内に与えるべき補償休日の日数の合計が1日未満の端数を生じる場合における補償休日の日数は、当該端数が1/2日を超えるときには当該端数に係る補償休日の単位は1日となり、1/2日を超えないときには半日となります。

(基準労働期間)
第24条 基準労働期間は6か月とする。
2 期間雇用船員の基準労働期間は、前項に規定する期間を限度に別途定める。
3 基準労働期間の起算日は、4月1日及び10月1日とする。ただし、期間雇用船員の場合にあっては、船員が船舶に最初に乗り組む日とする。
(休日)
第25条 休日は、基準労働期間において 日とする。
2 休日日数 日の基礎は下記のとおりとする。
日曜日、土曜日、・・・。
3 第1項の休日は、陸上休日又は停泊中の休日とする。
4 会社は、休日の日時並びに場所を、7日以上前に通知するものとする。ただし、航海の遅延その他やむを得ない事由が発生した場合には、速やかに変更した日時及び場所を通知するものとする。
(休日の付与の延期)
第26条 前条第1項の規定にかかわらず、次に掲げる場合、当該事由の存する期間、休日を与えることを延期することがある。
① 遅延その他の航海の状況に係る事由により基準労働期間内に与えるべき休日を与えることができないことが明らかになったとき以降において航海の途中にあるとき。
② 休日を与えるべき乗組員と交代して乗船すべき船員が負傷し、又は疾病にかかり療養のため交代して乗船できないことその他の船舶所有者の責めに帰することのできない事由により、休日を与えるべき乗組員と交代して乗船する船員が確保できないとき。
③ 休日を与えるべき乗組員が負傷し、又は疾病にかかり療養のため作業に従事しない期間中であるとき。
④ 休日を与えるべき乗組員が船舶の機関、設備等の故障発生時における応急措置その他の継続して従事しなければならない作業に従事しているとき。

日を基準として算出し、付与の単位は1日(労働協約に特別の定めがあるときは半日も可)となります。また、陸上休日として与える場合は、算出された日数に5分の7を乗じた日数となります。

基準労働期間内に与えるべき補償休日の日数の合計が1日未満の端数を生じる場合における補償休日の日数は、当該端数が1/2日を超えるときには当該端数に係る補償休日の単位は1日となり、1/2日を超えないときには半日となります。

(基準労働期間)
第24条 基準労働期間は6か月とする。
2 期間雇用船員の基準労働期間は、前項に規定する期間を限度に別途定める。
3 基準労働期間の起算日は、4月1日及び10月1日とする。ただし、期間雇用船員の場合にあっては、船員が船舶に最初に乗り組む日とする。
(休日)
第25条 休日は、基準労働期間において 日とする。
2 休日日数 日の基礎は下記のとおりとする。
日曜日、土曜日、・・・。
3 第1項の休日は、陸上休日又は停泊中の休日とする。
4 会社は、休日の日時並びに場所を、7日以上前に通知するものとする。ただし、航海の遅延その他やむを得ない事由が発生した場合には、速やかに変更した日時及び場所を通知するものとする。
(休日の付与の延期)
第26条 前条第1項の規定にかかわらず、次に掲げる場合、当該事由の存する期間、休日を与えることを延期することがある。
① 遅延その他の航海の状況に係る事由により基準労働期間内に与えるべき休日を与えることができないことが明らかになったとき以降において航海の途中にあるとき。
② 休日を与えるべき乗組員と交代して乗船すべき船員が負傷し、又は疾病にかかり療養のため交代して乗船できないことその他の船舶所有者の責めに帰することのできない事由により、休日を与えるべき乗組員と交代して乗船する船員が確保できないとき。
③ 休日を与えるべき乗組員が負傷し、又は疾病にかかり療養のため作業に従事しない期間中であるとき。
④ 休日を与えるべき乗組員が船舶の機関、設備等の故障発生時における応急措置その他の継続して従事しなければならない作業に従事しているとき。

個々の船員ごとに基準労働期間の始期及び終期が異なると労務管理上事務が繁雑になります。このため、就業規則により、あらかじめ基準労働期間の起算日と基準労働期間内に与える休日の日数を定めている場合は、基準労働期間の起算日を就業規則で定める日とすることができ、全ての雇用船員の基準労働期間を統一することが可能となります。また、乗船期間中随時補償休日が発生することとなり、通常は乗船期間終了後に補償休日を付与することとなりますが、記載例のように基準労働期間の起算日と基準労働期間内に与える休日の日数を定めている場合には、基準労働期間内において乗船する前に休日を付与することも可能となります。

就業規則においてあらかじめ休日日数を定める場合、例えば1日の所定労働時間を8時間とする場合は1週間当たり平均2日以上の日数とする必要がありますので、基準労働期間6か月中に付与すべき休日日数は、182日×2/7=52日(183日又は184日の場合は繰り上げて53日)となります。なお、個々の船員の連続労働日に対して陸上休日として付与すべき補償休日を計算するときは、例えば連続労働日130日の場合は、130日×2/7×7/5=52日となります。

また、退職時における補償休日手当の対象日数の計算は、基準労働期間中の連続労働日に2/7を乗じて得た日数になります。(計算方法:基準労働期間の起算日から退職日までの労働日数×2/7-同期間中に付与した休日数)

(労働時間)
 船員の1日当たりの所定労働時間は、8時間とする。
2 基準労働期間における乗組員の月平均の所定労働時間は、  時間とする。
3 船員の1週間当たりの労働時間(割増手当の対象となる労働時間を除く。)は、基準労働期間について平均40時間以内とする。

労働時間とは、船員が職務上必要な作業に従事する時間(海員にあっては上長の職務上の命令により作業に従事する時間に限る)をいいます。ここでいう「作業に従事する」とは、単に労務の提供を意味し、実作業のみならず、実作業には従事していないものの労働からの解放が保障されていない場合も含まれます。また、「命令」には、明示の命令のみならず、船長が船舶所有者との関係で、又は海員が上長との関係で、作業に従事することを余儀なくされている場合等、黙示の命令による義務付けも含まれます。

なお、船員は、法令や各船舶で定める通常配置表、慣習等で、船長や一等航海士、機関長等の役職毎にその役割が定まっていることが一般的であり、船員が当該役割を果たすために必要な作業に従事した場合は、上長による個別具体的な明示の命令がなくとも、原則として、黙示の命令により、職務上必要な作業に従事しているものとして取り扱うことが適当です。

船員が作業に従事した時間が船員法上の労働時間に該当するか否かについては、当該船員が就いている役職上担っている役割や当該作業の性質等に基づく当該作業の「職務性」の有無・程度、明示の命令や船内慣習等による黙示の命令による当該作業への従事の「義務付け」の有無・程度から、「職務上必要な作業に従事する時間(海員にあっては、上長の職務上の命令により作業に従事する時間に限る)」と評価できるか否かを個別具体的に判断し、評価できる場合には、船員法上の労働時間として取り扱わなければなりません。

(就業時間)
 航海当直制は3直制とし、その時間割は次のとおりとする。なお、当直の次交代者は、予定の当直時間より前に引継ぎを行い、当直にあたるものとする。

第1直00:00-04:0012:00-16:00
第2直04:00-08:0016:00-20:00
第3直08:00-12:0020:00-24:00

2 船長は、運航体制等の実情を踏まえ、航海当直者以外の乗組員の作業時間割について決定し、あらかじめ乗組員に指示するものとする。
3 船長は、作業時間割を作成するに際に、乗組員が過重労働や断続労働にならないよう努める。
4 艤装員の就業時間は、造船所の作業時間に応じて、別に定めるものとする。
5 陸上勤務員の就業時間は、陸上職員の就業時間に準じて、別に定めるものとする。

月平均所定労働時間は、時間外労働に伴う割増手当の算定等に使用することから、就業規則で明示しておくことが望ましいです。就業規則においてあらかじめ休日日数を記載する場合、月平均所定労働時間は以下の計算方法で算出することができます。

年間勤務日数の算出365日−年間休日日数
1日当たりの労働時間8時間
月平均所定労働時間年間勤務日数×8(時間)/12(月)
計算方法

定期的に短距離の航路に就航するため入出港が頻繁である船舶その他のその航海の態様が特殊であるため船員が船員法第60条第1項の規定によることが著しく不適当な職務に従事することとなると認められる船舶については、国土交通大臣の指定を受けることにより、当該船舶の航海の態様及び当該船員の職務に応じ、一定の期間を平均した1日当たりの労働時間が8時間を超えず、かつ、1日当たりの労働時間が14時間を超えない範囲内において、船員の1日当たりの労働時間を変更することができます。

就業規則には当直割及び当直の交代方法についても記載が必要です。

艤装員又は陸上勤務員の就業時間について始業と終業の時刻を就業規則に定めることも可能です。

(休息時間)
 会社は、人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業、操練等その他これらに類似する作業その他の船舶の航海の安全を確保するための作業に従事する場合を除き、1日について10時間以上の休息時間を与えるものとする。また、航海当直をすべき職務を有する者については、14時間を超えない間隔で休息時間を与えるものとする。
2 前項の休息時間を1日について2回に分割して船員に与える場合においては、休息時間のうち、いずれか長い方の休息時間を6時間以上とする。
3 会社は、前項の規定にかかわらず、船員法第65条の3第3項の規定に基づく協定を届け出た場合は、その協定の定めるところにより、休息時間を1日について3回以上に分割し、又は休息時間のうちいずれか長い方の休息時間を6時間未満とすることがある。
4 船長は、前項の規定にかかわらず、航海当直をすべき職務を有する者について、1週間のうち2日を限度として、第1項の休息時間を1日について3回に分割して船員に与えることがある。この場合においては、休息時間のうち、最も長い休息時間を6時間以上とし、残る2回の休息時間をいずれも1時間以上とする。

休息時間の過剰な分割は、船員の労働条件の低下のみならず、疲労の蓄積による安全運航の妨げとなるおそれがあることから、1日について2回までの分割を限度とし、分割する場合の休息時間の長い方を6時間以上としなければなりません。これは1日に与えられる休息時間のうち10時間の休息時間について適用されるものです。また、航海当直をすべき職務を有する者に対しては、14時間を超えない間隔で休息時間を与えなければなりません。

船舶所有者は、船員の過半数で組織する労働組合等との書面による協定を締結し所轄地方運輸局長に届け出た場合、分割回数の増回や連続休息時間を短縮することが可能です。ただし、海員については以下に掲げるものに限られます。

船舶が狭い水路を通過するため航海当直の員数を増加する必要がある場合その他の国土交通省令で定める特別の安全上の必要がある場合において作業に従事する海員通常の勤務態勢では休息時間規制を遵守できるが、狭水道通過や出入港等臨時に航海の安全確保を図るため当直者を増員させる場合休息時間の分割は3回まで認めることとし、それぞれ6時間以上、1時間以上、1時間以上の時間数の休息を与えること
定期的に短距離の航路に就航するため入出港が頻繁である船舶その他のその航海の態様が特殊であるため船員が船員法第65条の3第1項及び第2項の規定によることが著しく不適当な職務に従事することとなると認められる船舶で国土交通大臣の指定するものに乗り組む海員船員法施行規則第48条の2第1項第1号の規定に基づき労働時間の特例を受けた船舶や沿海区域又は平水区域を航行するタグボート又はこれに類する航行形態をとる船舶など休息時間の分割回数の限度、分割した場合の時間数については、一概に定めることが困難であることから、労使協定の届出時において適切に休息が与えられているか所轄地方運輸局で個別に審査する

航海当直をすべき職務を有する者については、船長の判断により、届出がない場合であっても、1週間のうち2日を限度として、休息時間を3回に分割して与えることができます。この場合において、最も長い休息時間は6時間以上とし、残る2回の休息時間は、いずれも1時間以上としなければなりません。

(時間外及び補償休日労働)
 船長は、船舶の航海の安全を確保するため臨時の必要があるときは、第30条に定める所定労働時間を超えて、自ら作業に従事し、若しくは乗組員を作業に従事させ、又は第25条及び第26条(例2の場合は第25条)に定める休日若しくは第32条に定める休息時間において、自ら作業に従事し、若しくは乗組員を作業に従事させる場合がある。
2 前項において、船長は、乗組員に休日又は休息時間に作業に従事させる場合、船舶の運航の安全の確保に支障を及ぼさない限りにおいて、当該作業終了後、できる限り速やかに休息をさせるように努めるものとする。
3 船長は、第1項に規定する場合のほか、次に掲げる特別な労働が発生した場合は、1日についてそれぞれ定める時間数を限度として、第30条に定める所定労働時間を超えて、自ら作業に従事し、若しくは乗組員を作業に従事させる場合がある。
① 船舶が港を出入りするとき、船舶が狭い水路を通過するときその他の場合において航海当直の員数を増加するとき。 4時間
② 通関手続、検疫等の衛生手続その他の法令(外国の法令を含む。)に基づく手続のために必要な作業に従事するとき。 2時間
③ 事務部の部員が調理作業その他の日常的な作業以外の一時的な作業に従事するとき。 2時間
4 会社は、第1項又は前項に定める場合のほか、船員法第64条の2第1項の規定に基づく協定を届け出た場合において、その協定の定めるところにより、第24条に定める労働時間の制限を超えて、乗組員を作業に従事させる場合がある。
5 前2項の規定により、乗組員に所定労働時間を超えて作業に従事させる場合、1日当たりの総労働時間の上限は14時間、1週間当たりの総労働時間の上限は72時間とする。
6 会社は、第1項に定める場合のほか、船員法第65条の規定に基づく協定を届け出た場合において、その協定を定めるところにより、第25条及び第26条(例2の場合は第25条)に定める休日の1/3を限度として、休日に作業に従事させる場合がある。

船長は、船舶の航海の安全を確保するため臨時の必要があるときは、労働時間の制限を超えて、又は補償休日や休息時間において、自らが作業し、又は海員を作業に従事させることができます。実際に作業に従事させた場合は、船舶の運航の安全の確保に支障を及ぼさない限りにおいて、当該作業の終了後できる限り速やかに休息をし、又は休息をさせるよう努めなければなりません。

船長は、船舶が狭い水路を通過するため航海当直の員数を増加する等の特別の必要があるときは、国土交通省令で定める時間を限度として、労働時間の制限を超えて、自らが作業し、又は海員を作業に従事させることができます。

船舶が港を出入りするとき、船舶が狭い水路を通過するときその他の場合において航海当直の員数を増加するとき4時間
通関手続、検疫等の衛生手続その他の法令(外国の法令を含む)に基づく手続のために必要な作業に従事するとき2時間
事務部の部員が調理作業その他の日常的な作業以外の一時的な作業に従事するとき2時間
特別労働として認められる時間数

今後、緊急作業とされていた「防火操練、救命艇操練その他これらに類似する作業」と「航海当直の通常の交代のために必要な作業」が特別労働に移行されますので注意が必要です。

船舶所有者は、船員の過半数で組織する労働組合等との書面による協定を締結し所轄地方運輸局長に届け出た場合は、その協定の定めるところにより、労働時間の制限を超えて、船員を作業に従事させることができます。ただし、協定で定めることができる時間外労働は、4週間当たり56時間が限度となります。

上記による時間外労働と所定労働時間を合わせた1日当たりの労働時間及び1週間当たりの労働時間は、それぞれ14時間及び72時間が限度となります。ただし、船長については労使協定による時間外労働に上限はありません。

船舶所有者は、船員の過半数で組織する労働組合等との書面による協定を締結し所轄地方運輸局長に届け出た場合は、その協定の定めるところにより、基準労働期間内に付与される休日及び補償休日を合計した日数の3分の1を限度として、補償休日において船員を作業に従事させることができます。

(夜間労働の禁止)
 会社は、18歳未満の船員及び妊産婦(妊娠中又は出産後1年以内の女性をいう。)の船員を午後8時から翌日の午前5時までの間、作業に従事させない。ただし、人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急に要する作業に従事する場合は除くものとする。

年齢が18歳に満たない船員と妊産婦の船員は、人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業に従事する場合を除いて、原則、午後8時から翌日の午前5時までの間に作業に従事させてはなりません。

ただし、船舶が高緯度の海域にあって昼間が著しく長い場合や、所轄地方運輸局長の許可を受けて海員を旅客の接待、物品の販売等軽易な労働に専ら従事させる場合であって、午前0時から午前5時までの間を含む連続した9時間の休息を取らせるときは、例外的に夜間労働が認められます。

(労働時間の適用除外)
 この章に定める労働時間に関する規定は、次の作業に従事する場合は適用しない。
① 人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業
② 防火操練、救命艇操練その他これらに類似する作業
③ 航海当直の通常の交代のために必要な作業

船員が次の作業に従事する場合(海員にあっては、船長の命令によりこれらの作業に従事する場合に限る)には、労働時間に算入されません。

  • 人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業
  • 防火操練、救命艇操練その他これらに類似する作業
  • 航海当直の通常の交代のために必要な作業

船長は、補償休日又は休息時間において、上記作業に自ら従事し、又は海員を従事させたときは、船舶の運航の安全の確保に支障を及ぼさない限りにおいて、当該作業の終了後できる限り速やかに休息をし、又は休息をさせるよう努めなければなりません。

(有給休暇)
 会社は、船員が初めて6か月連続して勤務に従事したときは、その6か月経過後1年以内に10日の有給休暇を与えるものとする。
2 会社は、船員が前項の規定による連続勤務期間後に1年間連続して勤務に従事したときは、その1年の経過後1年以内に15日の有給休暇を与えるものとする。
3 次に掲げる期間は、連続して勤務に従事した期間とみなすものとする。
① 船員が職務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため勤務に従事しない期間
② 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条第1号に規定する育児休業又は同条第2号に規定する介護休業をした期間
③ 女子船員が船員法第87条第1項又は第2項の規定に基づき勤務に従事しない期間
4 職務外の負傷等により、勤務が中断した場合において、その中断の事由が船員の故意又は過失によるものでなく、かつ、その中断の期間の合計が1年当たり6週間を超えないときは、その中断の期間は、船員が当該期間の前後の勤務と連続して勤務に従事したものとみなす。

船員法では、船舶所有者は、船員が同一の事業に属する船舶において一定期間連続して勤務(船舶のぎ装又は修繕中の勤務を含む)に従事したときは、一定期間内に所定の日数の有給休暇を付与しなければならないと規定されています。

予備船員制度を導入している場合、陸上での勤務期間も連続勤務期間として取り扱う必要がありますので、モデル就業規則では船員が陸上勤務員として勤務している期間も連続勤務期間として取り扱うことができるように記載しています。

以下の勤務は、同一の事業に属する船舶における勤務に準ずる勤務として、連続勤務期間に算入しなければなりません。

  • 他の会社の行う事業に属する船舶における勤務(他の会社に雇用されて従事したものを除く)に従事した期間
  • 船舶における勤務に係る技能の習得及び向上等を目的として受ける教育訓練であって、職務上の命令に基づくものに従事した期間
  • 係船中の船舶における勤務(他の会社に雇用されて従事したものを除く)に従事した期間
  • 同一の船舶における連続した勤務のうち当該船舶が他の会社の事業に属する間に従事したものに従事した期間

また、以下に掲げる期間は、同一の事業に属する船舶における勤務に従事した期間とみなされます。

  • 船員が職務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため勤務に従事しない期間
  • 育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業又は同条第2号に規定する介護休業をした期間
  • 女子船員が船員法第87条第1項又は第2項の規定に基づき勤務に従事しない期間

職務外における負傷等により、船舶における勤務が中断した場合において、その中断の事由が船員の故意又は過失によるものではなく、かつ、その中断の期間の合計が1年当たり6週間を超えないときは、その中断の期間は、船員が当該期間の前後の勤務と連続して勤務に従事した期間とみなされます。

有給休暇の日数は、連続して勤務した期間や乗組む船舶の航行区域に応じて以下のとおりとなります。

有給休暇の付与日数

例えば、内航船においては、採用後、6か月間連続して勤務した場合、1年以内に10日間の有給休暇を付与しなければならず、その後、1年間連続して勤務した場合(採用から1年6か月後)、1年以内に15日間の有給休暇を付与しなければなりません。

連続した勤務が3月増すごとに追加される日数とは、連続勤務期間が1年に満たない場合に算定するものです。(例えば、初めて6か月間連続して勤務した後に、更に6か月間勤務して退職した場合の有給休暇に関する手当額は、1日も有給休暇を付与していない場合、16日(10日+6日)分となります)

船舶所有者が船員に週休日、祝祭日の休日、慣習による休日又はこれらに代わるべき休日を与えているときは、その休日の日数は、有給休暇の日数に算入できません。また、船員が負傷又は疾病により勤務に従事しない日数も同様に参入できません。

(有給休暇の付与方法)
 有給休暇を付与する場合は、取得時期及び場所について、船員と協議して決定する。

船員に有給休暇を付与する場合、取得時期と場所については、船舶所有者と船員との協議により決定することとなっています。

有給休暇は原則一括に付与しなければなりませんが、労働協約の定めるところにより、期間を分けて付与することができます。

特別な休暇等

法定の休業・休暇のみならず、船舶所有者で設けている特別な休暇等については絶対的必要記載事項に当たります。

(産前産後の休業) 
 女子船員は妊娠が明らかになった場合には、直ちに会社に通知しなければならない。
2 会社は、妊娠中及び出産後8週間を経過しない女子船員を船内作業に従事させない。
3 前項の規定にかかわらず、航海中に妊娠中であることが判明した場合であって、航海の安全を図るために必要な業務並びに妊娠中又は出産後6週間を経過した女子船員が船内作業に従事することの申し出があった場合であって、医師が母性保護上支障ないと認めた業務については、船内作業に従事させることがある。
4 前項の規定に基づき船内作業に従事させる場合において、当該女子船員は、軽易な作業に従事したいときは、会社に申し出なければならない。

妊娠中の女子船員を船内で使用してはいけません。ただし、最寄りの国内の港に2時間以内に入港することができる航海において、妊娠中の女子船員の申し出があった場合で医師が支障ないと認めたとき、又は、妊娠中であることが航海中に判明した場合において、航海の安全を図るために必要な作業に従事するときには、船内で使用することができます。

産後8週間を経過しない女子船員を就業させてはいけません。ただし、産後6週間を経過した女子船員から申し出た場合において、医師が支障ないと認めたときには、船内で使用することができます。

また、船内の危険作業については、女子船員に従事させてはならない作業があります。

産前産後の休業を請求し、又は取得したことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。

(母性健康管理の措置)
 前条第3項により船内作業に従事する妊娠中又は出産後1年を経過しない女子船員から、母子保健法(昭和40年法律第141号)に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申出があったときは、次の範囲で時間内通院を認める。
 ① 産前の場合
    妊娠23週まで・・・・・・・・4週に1回
    妊娠24週から35週まで ・・・2週に1回
    妊娠36週から出産まで ・・・・1週に1回
ただし、医師又は助産師(以下「医師等」という。)がこれと異なる指示をしたときには、その指示により必要な時間
 ② 産後(1年以内)の場合
   医師等の指示により必要な時間
2 妊娠中又は出産後1年を経過しない女子船員から、保健指導又は健康診査に基づき勤務時間等について医師等の指導を受けた旨申出があった場合、次の措置を講ずる。
① 妊娠中の通勤緩和措置として、通勤時の混雑を避けるよう指導された場合は、原則として  時間の勤務時間の短縮又は  時間以内の時差出勤を認める。
② 妊娠中の休憩時間について指導された場合は、適宜休憩時間の延長や休憩の回数を増やす。
③ 妊娠中又は出産後の女子船員が、その症状等に関して指導された場合は、医師等の指導事項を遵守するための作業の軽減や勤務時間の短縮、休業等の措置をとる。
3 妊娠中又は出産後1年を経過しない女子船員には、1週間に少なくとも1日の休日(補償休日を除く。)を与える。

事業主は、雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。また、事業主は、雇用する女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません。

母性健康管理措置を求め、又は措置を受けたことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。

船舶所有者は、妊産婦の船員に1週間について少なくとも1日の休日(補償休日を除く)を与えなければなりません。

母性健康管理の措置については、女子船員に対し社内の制度及び手続を十分に周知することが必要です。また、相談窓口を設置することも制度の円滑な運用に有効です。

(生理休暇)
 生理日の就業が著しく困難な女子船員から請求があったときは、必要な期間就労を免除する。

生理日の就業が著しく困難な女子船員が休暇を請求した場合、請求のあった期間は当該女子船員を就業させてはなりません。なお、就労を免除する期間は暦日単位のほか半日単位、時間単位でもあっても差し支えありません。

(育児・介護休業、子の看護休暇等) 
 船員のうち必要のある者は、育児・介護休業法に基づく育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護のための深夜業の制限及び所定労働時間の短縮措置等(以下「育児・介護休業等」という。)の適用を受けることができる。
2 育児・介護休業等の取扱いについては、「育児・介護休業等に関する規則」で定める。

育児・介護休業、子の看護休暇等に関する事項について、モデル就業規則では就業規則本体とは別に定める形式をとっています。

育児・介護休業、子の看護休暇等に関する事項について、就業規則本体と別に定めた場合、当該規程も就業規則の一部になりますので、所轄地方運輸局長への届出が必要となります。

育児・介護休業、子の看護休暇等に関する事項については、船員に対し制度及び必要な手続を十分に周知することが必要です。また、相談窓口を設置することも制度の円滑な運用に有効です。

(慶弔休暇) 
 船員が申請した場合は、次のとおり慶弔休暇を与える。
本人が結婚したとき                         日 
妻が出産したとき                          日
配偶者、子又は父母が死亡したとき                  日
兄弟姉妹、祖父母、配偶者の父母又は兄弟姉妹が死亡したとき      日
2 慶弔休暇は、有給とする。

慶弔休暇については、船員法上必ず定めなければならないものではありません。各船舶所有者で必要な期間を具体的に定めてください。

(裁判員等のための休暇) 
 船員が裁判員若しくは補充裁判員となった場合又は裁判員候補者となった場合には、次のとおり休暇を与える。
裁判員又は補充裁判員となった場合        必要な日数
裁判員候補者となった場合            必要な日数又は時間

裁判員制度に関し、労働者(船員)が裁判員若しくは補充裁判員となった場合又は裁判員候補者となった場合で、労働者(船員)からその職務に必要な時間を請求された場合、使用者(船舶所有者)はこれを拒んではなりません。このため、事業場(船舶)においては、裁判員等のための休暇を制度として導入することが求められます。

また、労働者(船員)が裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと、その他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。

(海賊行為による被害を受けた場合の休暇) 
 船員が海賊行為により船上又は船外で拘束された場合には、海賊から解放され適切に送還されるまで又は拘束中に死亡した日(失踪宣告を受け、死亡したとみなされた場合を含む。)までの間、有給の休暇とする。

船員が海賊行為により船上又は船外で拘束された場合には、海賊から解放され適切に送還されるまで又は拘束中に死亡した日(失踪宣告を受け、死亡したとみなされた場合を含む。)までの間、雇入契約が継続すること及びこれら契約に基づく賃金その他の権利が継続します。

(定員)
 船舶の乗組員の定員は別表のとおりとする。

船舶の乗組員の定員

定員に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項に当たります。船員法第69条第1項により、1日の労働時間8時間を遵守するために必要な定員を定めなければなりません。なお、同条の定員の定めは、就業規則の作成義務を有しない船舶所有者にも適用されるため、就業規則以外に定めることも可能となっています。

定員については、海員の職務及び員数並びに船舶の名称、総トン数、主機の出力、航行区域又は従業区域、就航航路又は操業海域及び用途を定める必要があります。また、職員の員数は、船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく船舶職員の乗組みに関する基準や小型船舶操縦者の乗船に関する基準を満たすものでなければなければなりません。

給料その他の報酬

モデル就業規則と異なり、給料その他の報酬に関する事項については、就業規則本体とは別に定めることもできます。その場合、別に定めた規程も就業規則の一部になりますので、所轄地方運輸局長への届出が必要となります。

(給料その他の報酬の構成)
 給料その他の報酬の構成は、次のとおりとする。

給料その他の報酬

給料その他の報酬の決定及び支払の方法、支払の時期並びに昇給の基準に関する事項は、就業規則の絶対的記載事項に当たります。

(基本給)
 基本給は、船員の経験、能力及び職務の内容を考慮して各人別に決定する。基本給の構成は標令給と職務給からなるものとし、標令給及び職務給は下表のとおりとする。

標令給表

標令(歳)標令給標令加算額
15____
・・・・・・・・・

職務給表

経験年数0年1年2年3年4年5年以上
船長____________
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【最賃+加算】
 基本給は、最低基本額を__円以上とし、経験年数に応じて1年当たり__円を加算する。

船員の給料その他の報酬は、船員労働の特殊性に基づき、かつ船員の経験、能力及び職務の内容に応じて定めなければなりません。このため、乗船履歴、勤続年数、年齢、資格、学歴等の属人的な要素等を考慮して、各船舶所有者において公正に決めることが大切です。

基本給には、月給(1か月の所定労働時間に対して給料その他の報酬の額が決められているもの)、日給月給(定額賃金制の一形態で、月給を定め、欠勤した場合にその日数分だけの給料その他の報酬を差し引くという形の月給制)、日給(1日の所定労働時間に対して給料その他の報酬の額が決められるもの)、時間給(労働時間1時間単位で給料その他の報酬の額が決められ、業務に従事した労働時間に応じて支給されるもの)等があります。

具体的な給料その他の報酬を決めるに当たり、使用者(船舶所有者)は最低賃金法に基づき決定される最低賃金額以上の給料その他の報酬を支払わなければなりません。

(昇給)
 昇給は、勤務成績その他が良好な船員について、毎年  月  日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。
2 顕著な業績が認められた船員については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。
3 昇給額は、船員の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

昇給に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項に当たりますので、昇給期間等の昇給の条件を定める必要があります。合理的な理由がない場合に、船員が住居の移転を伴う配置転換に応じることができること、船員が乗り組む船舶と航海の期間又は態様の異なる船舶に配置転換された経験を有することを要件とすることは間接差別として禁止されています。

(家族手当)
 家族手当は、次の家族を扶養している船員に対し支払う。
 ① 18歳未満の子
    1人につき  月額     円
 ② 65歳以上の父母
   1人につき  月額     円

(配偶者手当の在り方)
配偶者手当は、税制・社会保障制度とともに、就業調整(働く時間の抑制)の要因となっています。
今後人口が減少していく中で、働く意欲のあるすべての人がその能力を十分に発揮できるようにするため、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整につながる収入要件がある配偶者手当については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれます。

(配偶者手当の見直しに当たっての留意点)
配偶者手当を含めた賃金制度の円滑な見直しに当たっては、労働契約法、判例等に加え、企業事例等を踏まえ、以下に留意する必要があります。
ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組
労使の丁寧な話合い・合意
賃金原資総額の維持
減額になる方への必要な経過措置
決定後の新制度についての丁寧な説明

(通勤手当)
 通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支払う。

(職務手当)
 次の職務を選任した場合には、以下の額を支払う。
安全担当者        月額 __円
消火作業指揮者      月額 ___円
衛生担当者        月額 __円
衛生管理者        月額   円
危険物等取扱責任者    月額 __円

諸手当に関しては、モデル就業規則で示したもののほか油送船手当、執職手当、欠員手当等を設ける船舶所有者が存在しますが、どのような手当を設けるか、また、設けた諸手当の金額をいくらにするかについては、各船舶所有者が決めることになります。たとえば通勤が必要となる船舶の形態の場合は、通勤手当を設けることが想定されます。

(割増手当)
 船舶所有者は、第33条の規定により、船員が所定労働時間を超えたとき又は補償休日において作業に従事したときは、次に挙げる以上の割増手当を支払うものとする。
① 時間外労働1時間につき (基本給+職務手当)×1/月当たりの平均所定労働時間×1.3
② 補償休日労働1時間につき (基本給+職務手当)×1/月当たりの平均所定労働時間×1.4

法定労働時間を超えて労働させた場合には通常の労働時間の報酬の3割以上、補償休日に労働させた場合(安全臨時労働又は労使協定に基づく補償休日労働)には通常の労働日の報酬の4割以上の割増率で計算した割増手当をそれぞれ支払わなければなりません。

なお、この「報酬」は、定期払いを要しない報酬、家族手当、乗船を事由として支払われる報酬及び船舶、航海又は積荷の態様により支払われる報酬を除きます。

割増手当を定額で支払う場合、実際の労働時間に対して上記の割増率で計算した割増手当額が、当該定額の割増手当額を上回る場合には、その上回った額も支払わなければなりません。

会社の定める所定労働時間が法定労働時間よりも短い場合、所定労働時間を超えて法定労働時間に達するまでの時間分については、船員法を上回る措置として割増手当を支払う契約となっていない限り、通常の労働時間の報酬を支払えばよいこととなります。

月給制の場合の割増手当の計算の基礎となる通常の労働時間又は労働日の報酬は、以下の金額に労働時間の制限を超えて又は補償休日において作業に従事した時間数を乗じて算出します。

  1. 時間によって定められた報酬についてはその金額
  2. 日によって定められた報酬については、その金額を1日の所定労働時間数で除した金額。ただし、日によって所定労働時間数が異なる場合においては、1週間における1日平均所定労働時間数で除した金額
  3. 月によって定められた報酬についてはその金額を月における所定労働時間数で除した金額(ただし、月によって所定労働時間数が異なる場合においては、1年における1箇月平均所定労働時間数で除した金額)
  4. 1〜3以外の一定の期間によって定められた報酬については、1〜3に準じて算定した金額
  5. 船員の受ける報酬が1〜4の2以上の報酬よりなる場合においては、その部分については1〜4によりそれぞれ算定した金額の合算額

(乗船中の給料その他の報酬)
 乗組員の給料その他の報酬は、基本給のほか、第49条から第52条に定める手当とする。
2 乗組員が、負傷又は疾病のため、職務に従事しない期間についても基本給のほか、第49条、第51条及び第52条に定める手当を支払う。ただし、その負傷又は疾病が、乗組員の故意又は重大な過失に基づくときは支払わないことがある。 

船員の最低賃金は、最低賃金が設定されている業種の船舶所有者(船員法第5条の規定に基づき、船舶所有者に関する規定の適用を受ける者を含む。)に雇用され、同船舶に乗り組む船員に適用されます。なお、航海日当等は最低賃金に算入されますが、以下は最低賃金には算入されません。

  1. 通常の労働日以外の日の労働及び通常の労働時間を超えた時間の労働に対し支払われる割増手当及びこれらの労働に対応する部分の能率給、歩合給など
  2. 夜間の労働に対し支払われる夜間割増賃金
  3. 臨時的に行う通常の労働以外の労働に対し支払われる作業手当、荷役手当、欠員手当など
  4. 予期していない事由に基づき支払われる災害の場合の一時金、支給条件はあらかじめ確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、かつ、まれに支払われる結婚手当及び退職手当など
  5. 1か月を超える期間毎に支払われる夏期・年末手当、賞与、その他これに準ずる賃金
  6. 通勤手当及び実費弁償として支払われる交通費、旅費、その他これに類するもの

船員は、負傷又は疾病のため職務に従事しない期間についても、雇入契約存続中は給料並びに家族手当、職務手当、乗船を事由として支払われる報酬、船舶・航海又は積荷の様態により支払われる報酬、その他の固定給を請求することができます。ただし、その負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあったときはこの限りではありません。

(下船者の給料その他の報酬)
 下船中の給料その他の報酬は次のとおりとする。
(1) 艤装員の給料その他の報酬
イ 基本給
ロ 艤装員手当 月額基本給の__%
ハ 割増手当
(2) 有給休暇員の給料その他の報酬
イ 基本給
ロ 家族手当
ハ 職務手当
ニ 第63条第3項で定める食料金相当分を支払う。
(3) 陸上休暇員の給料その他の報酬
  基本給
(4) 特別休暇員の給料その他の報酬
イ 基本給
ロ 家族手当
ハ 職務手当
(5) 教育員の給料その他の報酬
イ 基本給
ロ 受講手当 日額 __円
(6) 傷病員の給料その他の報酬
  4か月の範囲内においてその負傷又は疾病が治るまで毎月1回、国土交通省令の定める報酬(以下標準報酬という。)の月額に相当する額の傷病手当を支払う。その4か月が経過してもその負傷又は疾病が治らないときは、その治るまで毎月1回、標準報酬の月額の60/100に相当する額の傷病手当を支払う。ただし、船員保険が給付された場合は、支払わない。
(7) 休職員の給料その他の報酬
イ 依願休職員
  支払わない。
ロ 療養休職員
  船員保険の給付による。
ハ 依命休職員
  原則として支払わない。ただし、必要に応じて支払うことがある。
ニ 育児・介護休業員
  支払わない。

船員は乗船中と下船中で給料その他の報酬の内容が大きくことなることが考えられますから、艤装員、陸上休暇員(待機員を含む)、特別休暇員、教育員等、下船者に支払う給料その他の報酬についても、各会社の実情に応じて具体的に定めることが望ましいと言えます。その場合、本規程例のように乗船中と下船者の給料その他の報酬を分けて記載することができます。

船員が職務上負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、4か月の範囲内においてその負傷又は疾病がなおるまで毎月1回、船員法施行規則に定める報酬(標準報酬)の月額に相当する額の傷病手当を支払い、その4か月が経過してもその負傷又は疾病がなおらないときは、そのなおるまで毎月1回、標準報酬の月額の60/100に相当する額の傷病手当を支払わなければなりません。また、船舶所有者は、負傷又は疾病がなおった後遅滞なく、標準報酬の月額の60/100に相当する額の予後手当を支払わなければなりません。ただし、負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあったときは、傷病手当・予後手当を支払う必要はありません。4か月の範囲内においてその負傷又は疾病がなおるまで毎月1回、船員法施行規則に定める報酬(標準報酬)の月額に相当する額の傷病手当を支払い、その4か月が経過してもその負傷又は疾病がなおらないときは、そのなおるまで毎月1回、標準報酬の月額の60/100に相当する額の傷病手当を支払わなければなりません。また、船舶所有者は、負傷又は疾病がなおった後遅滞なく、標準報酬の月額の60/100に相当する額の予後手当を支払わなければなりません。ただし、負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあったときは、傷病手当・予後手当を支払う必要はありません。

標準報酬は、負傷し、疾病にかかり、行方不明となり、又は死亡した日(負傷又は疾病に因り死亡した場合には、負傷し、又は疾病にかかった日)(以下、基準日)の報酬月額に基づいて以下の表により定められています。

なお報酬月額は、以下の方法によって算定するものとされています。なお報酬月額とは、その月の報酬総額より臨時に支払われる賞与その他これに準ずる報酬を除いたものをいいいます。

  • 日によって報酬を定めるときは、日額の30倍
  • 日又は月以外の期間によって報酬を定めるときは、その報酬の額をその期間の日数で除して得た額の30倍
  • 歩合による報酬については、歩合制度の種類ごとに、労働協約又は船舶所有者とその使用する船員の過半数を代表する者との協議によって基準日の前1年以内又はその後に定めた額。これによることができないときは、所轄地方運輸局長が定めた額(額を定める日の前1年以上の期間中に支払われた歩合金の額を当該歩合金が支払われた期間の日数で除して得た金額の30倍を基準とし、これが算定できないとき又は著しく不当なときは同種の業務に従事する同種の船舶において同様の労務に従事する者の報酬月額を基準として定める)
  • 上記の2以上に該当する報酬を受けるときにおいては、その各々について、上記の規定によって算定した額の合算額

有給休暇中の船員には、給料並びに家族手当、職務手当、乗船を事由として支払われる報酬、その他の固定給(算定基礎期間が1月を超えるものを除く)及び乗船中支払わなければならない食料の費用の額と同額を支払わなければなりません。

産前産後の休業期間、生理休暇、母性健康管理のための休暇、育児・介護休業法に基づく育児休業期間、介護休業期間、子の看護休暇期間及び介護休暇期間、慶弔休暇、病気休暇、裁判員等のための休暇の期間、休職の期間を無給とするか有給とするかについては、各船舶所有者において決め、就業規則に定めます。また、有給とする場合は、例えば「通常の給料その他の報酬を支払う」、「基本給の○○%を支払う」とするなど、できるだけ具体的に定めてください。

(陸上勤務員の給料その他の報酬)
 陸上勤務員の給料その他の報酬については、会社と本人が協議して決める。

(欠勤等の扱い)
 欠勤、遅刻、早退及び私用外出の場合並びに負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあった場合は、基本給から当該日数又は時間分の給料その他の報酬を控除する。
2 前項の場合、控除すべき給料その他の報酬の1時間当たりの金額の計算は以下のとおりとする。
(1)月給の場合
   基本給÷1か月平均所定労働時間数
(2)日給の場合
   基本給÷1日の所定労働時間数

船員は、負傷又は疾病のため職務に従事しない期間についても、雇入契約存続中は給料及び船員法施行規則の定める手当を請求することができますが、負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあった場合及び船員が欠勤、遅刻、早退等をした結果、労働しなかった場合については、給料その他の報酬を支払う必要はありませんので、船舶所有者はその日数及び時間数に応じて給料その他の報酬を減額することも可能です。欠勤等は船上での勤務においてはあまり想定されませんが、日帰りで乗船し陸上の事務所に出勤するような場合などで欠勤等による減額をすることが想定されるのであれば、その取扱いについて規定する必要があります。

(給料その他の報酬の計算期間及び支払日)
 給料その他の報酬(その計算期間が1月を超えるものを除く)は、毎月  日に締め切って計算し、翌月  日に支払う。ただし、支払日が休日に当たる場合は、その前日に繰り上げて支払う。
2 前項の計算期間の中途で採用された船員又は退職した船員については、月額の給料その他の報酬は当該計算期間の所定労働日数を基準に日割計算して支払う。
3 割増手当は毎月__日に締め切って計算し、翌月の給料その他の報酬と合わせて支払う。
4 給料その他の報酬の個々の計算に円未満の端数が生じたときは、四捨五入する。
5 給料その他の報酬を支払う際は、船員に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付する。
① 給料その他の報酬の総額及びその内訳
② 控除する額
③ 通貨以外の支払方法で支払う額
④ 船員の同居の親族又は船員の収入によって生計を維持する者に渡す額

給料その他の報酬は、毎月1回以上、一定の支払日を定めて支払うことが必要です。

船舶所有者は、船員に給料その他の報酬を支払う場合においては、船員に対し、給料その他の報酬の支払に関する次の事項を記載した書面を交付しなければなりません。

  • 給料その他の報酬の総額及びその内訳
  • 船員法第53条第1項ただし書の規定により控除する額
  • 船員法第53条第1項ただし書の規定により通貨以外の支払方法で支払う額
  • 船員法第56条の規定により船員の同居の親族又は船員の収入によって生計を維持する者に渡す額

(給料その他の報酬の支払と控除)
 給料その他の報酬は、船員に対し、通貨で直接その全額を支払う。ただし、船員から請求があるとき又は船員が海賊被害に遭った場合には、同居の親族又は船員の収入によって生計を維持する者に支払うことができる。
2 前項について、船員が同意した場合は、船員本人の指定する金融機関の預貯金口座へ振込により給料その他の報酬を支払う。
3 船長は、船内において支払われる乗組員の給料その他の報酬は、直接本人に手渡さなければなならない。ただし、やむを得ない理由がある場合には、他の乗り組んでいる職員に代行させることができる。
4 次に掲げるものは、給料その他の報酬から控除する。
① 源泉所得税
② 住民税
③ 船員保険、厚生年金保険及び雇用保険の保険料の被保険者負担分
5 会社は、船員に対する債権については、法令の定める範囲内において相殺することがある。

給料その他の報酬は、通貨で、直接船員にその全額を支払わなければなりません。ただし、所得税や住民税等法令に基づき船員が負担すべきものについては、給料その他の報酬から控除することができます。また、労働協約を締結し、給料その他の報酬から控除することができるとしたものも控除できます。なお、船舶所有者は、船員に対する債権と給料の支払の債務とを相殺してはなりません。ただし、相殺の額が給料の額の1/3を超えないとき及び船員の犯罪行為に因る損害賠償の請求権を以てするときは、この限りではありません。

船舶所有者は、船員から請求があったときは、船員に支払わるべき給料その他の報酬をその同居の親族又は船員の収入によって生計を維持する者に渡さなければなりません。

給料その他の報酬は、直接船員に支払うことが原則です。しかし、船員が同意した場合は、船員本人の指定する銀行等の金融機関の本人名義の口座に振り込むことが認められています。

船長は、海員の給料その他の報酬が船内において支払われるときは、直接海員にこれを手渡さなければなりません。ただし、やむを得ない事由のあるときは、他の乗り組んでいる職員に手渡させることができます。

(給料その他の報酬の非常時払い)
 次のいずれかの場合に該当したときは、会社は、給料その他の報酬の支払日前であっても、既往の船員に対する給料その他の報酬を支払う。
 解雇され、又は退職した場合
 船員、その同居の親族又は船員の収入によって生計を維持する者が結婚、葬祭、出産、療養又は不慮の災害の復旧に要する費用に充てようとする場合において船員から請求があった場合

(賞与)
 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した船員に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支払う。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支払時期を延期し、又は支払わないことがある。

算定対象期間
支給日
  月  日から  月  日まで
  月  日
  月  日から  月  日まで
  月  日

2 前項の賞与の額は、会社の業績及び船員の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。

賞与は、船員法その他の法律によって設けることが義務付けられているものではありません。しかし、賞与を支払う場合、就業規則に支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法等を明確にしておくことが必要です。

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支払わないこととすることも可能です。

旅費及び航海日当

(旅費)
 会社の命令又は船務のため移動するときは、経済的な経路を考慮した交通費の実費を支払う。この場合、鉄道を使用する場合にあっては運賃及び特急料金までとし、急を要する場合の航空機の利用は可能とする。
2 会社は、旅費として前項の交通費のほか、宿泊費、食費及び運送賃並びに雇入契約終了の時から遅滞なく出発するまでの宿泊費及び食費を支払う。
3 船員は、移動が完了した後、遅滞なく旅費支給の申請を行わなければならない。
4 会社は、前項により申請を受けた場合、審査を行った後、申請の日から1月以内に旅費を支払う。

船員法に旅費に関する規定はありませんが、送還を行う場合には、船舶所有者は、送還中の運送賃、宿泊費及び食費並びに雇入契約の終了の時から遅滞なく出発する時までの宿泊費及び食費を負担する必要があります。

(航海日当)
 乗組員として乗船中は、1日につき次の航海日当を支払う。
 ① 船機長 __円
 ② 一航機士 __円
その他 __円以上
 この日当額は国内航路の場合のみとする。
2 航海日当は、毎月  日に締め切って計算し、翌月  日に支払う。

航海日当は、船員法その他の法律によって設けることが義務付けられているものではありません。しかし、旅費や航海日当を支払う場合、就業規則に支払方法等を明確にしておくことが必要です。

食料

(船内食料)
 会社は、乗組員に対し、1日3回船内食料を現物支給によってまかなう。
2 会社は、船舶料理士のほか、調理に関する業務についての基礎的な知識を付与するための教育を行った乗組員に調理を行わせる場合がある。
3 船内で食料の現物支給ができないときは、船長に乗組員1人当たり日額    円の船内食料金を一括交付し、まかなわせる。

船員法は、船員が乗船中は、船舶所有者が食料を支給しなければならないことを定めています。船員が職務に従事する期間又は船員が負傷や疾病のために職務に従事しない期間において、船舶所有者の費用により原則として現物支給で行う必要があります。司厨員が乗船しない船舶の場合、船員が持ち回りや各個人で食材の調達や調理を行う場合があります。

遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶で総トン数700トン以上の場合、国土交通大臣が定める食料表に基づいて食料の支給を行う必要があります。

平水区域を航行区域とする船舶を除き、航海中に船員に支給される食料の調理を船内で行うすべての者は、船内における調理に関する業務についての基礎的な知識を有する必要があります。雇入契約における職名とは関係なく、船内の調理室等において、船舶所有者の負担により、恒常的に船員に支給される食料の調理を行う者はすべて該当し、自らの食事のみを作る場合、他の船員の食事を作る場合のいずれであっても、また、持ち回りでご飯と味噌汁のみを作る場合であっても該当します。

また、「船内における調理に関する業務についての基礎的な知識」とは、船体の揺れ、食料の補給が長期間困難であること等船内における調理の特殊性を踏まえた衛生管理、調理管理、栄養管理及び食料管理に関する基礎的な知識をいいます。

安全衛生及び災害補償

(遵守事項)
 会社は、船員及び船舶の安全衛生の確保及び改善を図り、快適な船内環境の形成のために必要な措置を講ずる。
2 船員は、安全衛生に関する法令及び会社の指示を守り、会社と協力して労働災害の防止及び船内衛生の保持に努めなければならない。
3 船員は安全衛生の確保のため、特に下記の事項を遵守しなければならない。
① 船内作業設備、機械、器具等を点検・整備し、適切に保管すること。また、異常を認めたときは、速やかに    に報告し、指示に従うこと。
 安全装置を取り外したり、その効力を失わせるようなことはしないこと。
 保護具の着用が必要な作業及び保護具の使用を命じられた場合については、必ず着用すること。
 命綱、安全ベルト又は作業用救命衣の使用を命じられた場合については、必ず着用すること。
 防火標識又は禁止標識のある箇所における当該標識に表示された禁止行為は行わないこと。
 禁止された作業場所において火気を使用又は喫煙は行わないこと。
 常に整理整頓に努め、通路、避難口又は消火設備のある所に物品を置かないこと。
 貨物の流出や火災等非常事態の発生を発見したときは、直ちに定められた措置をとり、    に報告し、その指示に従うこと。

各船舶においては、船災防法及び労安則等に基づき、船員災害の防止と快適な船内環境の形成に積極的に取り組むことが求められています。そのために、日ごろから船内の安全衛生管理体制を確立しておくことが大切であり、また、就業規則の内容も船内の実情に応じて記載することが必要です。

船災防法に基づき、船員数が常時100人以上である船舶所有者は、総括安全衛生担当者を選任し、船員の危険又は健康障害の防止措置や船内の作業環境及び居住環境の快適な状態の維持管理のための措置等についての業務を統括管理させなければなりません。また、労安則に基づき、船員数が常時5人以上の船舶の船舶所有者は、船内において船内安全衛生委員会を設け、船内安全管理や火災予防等について船内で調査審議し、船舶所有者に意見を述べさせなければなりません。また、船内において安全担当者、消火作業指揮者、衛生担当者の選任が義務付けられています。会社は、これらの者に、船舶の安全衛生に関する事項を管理させる必要があります。

健康増進法では、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止され、また、施設の管理権限者等には、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことや受動喫煙を望まない従業員を事業場外を含めて喫煙可能な場所に連れて行かないことが求められています。船員についても健康確保のため、船内に限らず喫煙に関するルールを労使で十分に協議して決めることが望ましいです。

(健康証明)
 会社は、船内労働に適することを証明させるために必要な船員法施行規則第55条の検査を船員に受けさせる。
2 前項の健康証明に要する費用は、会社が負担する。

船舶所有者は、国土交通大臣が指定した医師が船内労働に適することを証明した健康証明書を持たない者を船舶に乗り組ませてはならず、船員に健康検査を受けさせる必要があります。健康証明書の有効期間は、色覚の検査については6年、その他の検査については1年です。

雇用船員に係る健康証明に要する費用については船舶所有者が負担する必要があります。

液体アンモニア、塩素等の国土交通大臣が指定する衛生上有害な物を常時運送する船舶に乗り組んでいる船員及び専ら潜水作業に従事している船員等には、健康検査の際及びその6か月後に、指定医師により検査を受けさせる必要があります。

なお、船舶所有者は、伝染病にかかった船員、心身の障害により作業を適正に行うことができない船員その他労働に従事することによって病勢の増悪するおそれのある疾病として国土交通省令で定めるものにかかった船員を作業に従事させてはなりません。

(安全衛生教育)
 船員に対し、雇入れの際及び転船等により作業内容を変更する場合、その従事する業務に必要な安全及び衛生に関する教育を行う。
2 船員は、安全衛生教育を受けた事項を遵守しなければならない。

船舶所有者は、船員を雇い入れた時や作業内容を変更する時は、船員に対し、従事する業務に必要な安全及び衛生に関する教育を行わなければなりません。

なお、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解されますので、当該教育が法定労働時間外に行われた場合には、当然、割増賃金の支払いが必要になります。

(医薬品、衛生用品及び医療書)
 会社は、法令の定める医薬品、衛生用品及び「日本船舶医療便覧」を船内に備え付ける。

船舶所有者は、遠洋区域又は近海区域を航行区域とする総トン数3千トン以上の外航船や遠洋区域を航行区域とする定期航路事業に従事する外航船等には、初めて自己のために航行の用に供するときに、船舶の区分に応じ、国土交通大臣が告示で定める数量の医薬品その他の衛生用品を備え付ける必要があります。

船舶所有者は、平水区域を航行する船舶を除き、船内に国土交通省監修の「日本船舶医療便覧」を備え置く必要があります。ただし、内航船や外航船であって一定の船舶は、「小型船医療便覧」に代えることができます。

(災害補償)
 船員が職務上又は職務外の事由又は通勤により負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合は、船員法、労働者災害補償保険法及び船員保険法に定めるところにより災害補償を行う。

労働者災害補償保険(以下、労災保険)制度及び船員保険制度は、職務上又は職務外の事由又は通勤による船員の負傷、疾病、障害、死亡等について必要な保険給付を行い、併せて被災した船員の社会復帰の促進、当該船員及びその遺族の援護等を図ることを目的とした政府管掌の災害補償制度です。

船員を使用するすべての船舶所有者は、労災保険及び船員保険に加入しなければなりません。

(療養補償)
 船員が職務上又は通勤により負傷し、又は疾病にかかったときは、それが治るまで、会社は療養に必要な費用を負担する。
2 船員が雇入契約存続中職務外で負傷し、又は疾病にかかったときは、会社は、3か月の範囲内で療養に必要な費用を負担する。ただし、その負傷又は疾病について船員に故意又は重大な過失があったときは、この限りでない。
3 前2項について、労働者災害補償保険又は船員保険から給付を受けた場合には、会社は費用を負担しない。

船員が職務上負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、その負傷又は疾病がなおるまで、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければなりません。また、船員が雇入契約存続中職務外で負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、3か月の範囲内において、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければなりません。ただし、その負傷又は疾病について船員に故意又は重大な過失のあったときは、この限りではありません。

療養は、次のものを言います。

  • 診察
  • 薬剤又は治療材料の支給
  • 処置、手術その他の治療
  • 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
  • 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
  • 治療に必要な自宅以外の場所への収容(食料の支給を含む)
  • 移送

船員が受ける療養費用について、補償を受けるべき同一の事由により労働者災害補償保険法又は船員保険法に基づき保険給付を受けるときは、船舶所有者は、補償を行わないことが可能です。

退職金

モデル就業規則と異なり、給料その他の報酬に関する事項については、就業規則本体とは別に定めることもできます。その場合、別に定めた規程も就業規則の一部になりますので、所轄地方運輸局長への届出が必要となります。

(退職金の支給)
 勤続  年以上の船員が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支払う。ただし、自己都合による退職者で、勤続  年未満の者には退職金を支払わない。また、第_条により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支払わないことがある。
2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支払うこととし、その後の再雇用については退職金を支払わない。

退職金に関する事項は、就業規則の相対的記載事項に当たります。

(退職金の額)
 退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。

勤続年数支給率
5年未満1.0
5年~10年3.0
11年~15年5.0
16年~20年7.0
21年~25年10.0
26年~30年15.0
31年~35年17.0
36年~40年20.0
41年~25.0

2 第_条により休職する期間については、会社の都合による場合を除き、前項の勤続年数に算入しない。

モデル就業規則では、退職金の額の算定は、退職又は解雇の時の基本給と勤続年数に応じて算出する例を示していますが、会社に対する功績の度合い等も考慮して決定する方法も考えられることから、各船舶所有者の実情に応じて決めてください。

(退職金の支払方法及び支払時期)
 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した船員(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

退職金の支払方法、支払時期については、各船舶所有者が実情に応じて定めることになります。
船員が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

船員の同意がある場合には、本人が指定する銀行その他の金融機関の口座へ振込により支払うことができます。また、銀行その他の金融機関が支払保証した小切手等により支払うこともできます。

退職金制度を設けたときは、退職金の支払に充てるべき額について金融機関と保証契約を締結する等の方法により保全措置を講ずるよう努めなければなりません。ただし、中小企業退職金共済制度や特定退職金共済制度に加入している場合はその必要はありません。
中小企業退職金共済制度は、中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。

被服及び日用品

(被服及び日用品)
 会社は、作業上必要な被服及び日用品を支給する。 

陸上における宿泊、休養、医療及び慰安の施設

(陸上における宿泊、休養、医療及び慰安の施設)
 船員の乗下船時又は用務により旅行するとき、公共団体経営施設に宿泊できる場合にはこれを利用する。
2 船員が休養又は病院の受診を必要とする際には、         を使用する。
3 船員の私的な旅行の宿泊施設として        の利用を可能とする。

教育

(教育訓練)
 会社は、業務に必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、船員に対し、必要な教育訓練を行う。
2 船員は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合には、特段の事由がない限り教育訓練を受けなければならない。
3 前項の指示は、教育訓練開始日の少なくとも  週間前までに該当船員に対し文書で通知する。

教育訓練とは、社命により船員に受講させる教育訓練を指します。事業主が、労働者(船員含む。)に対し教育訓練において性別を理由に差別的取扱いをすることは禁止されています。

賞罰

賞罰については、就業規則の相対的必要記載事項に当たります。なお、セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントについては、それらの言動を行った者について厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知する必要があります。

(表彰)
 会社は、船員が次のいずれかに該当するときは、表彰することがある。
人命、船舶又は積荷の安全について特に功績のあったとき。
業務上有益な発明、考案を行い、会社の業績に貢献したとき。
永年にわたって誠実に勤務し、その成績が優秀で他の模範となるとき。
永年にわたり無事故で継続勤務したとき。
社会的功績があり、会社及び船員の名誉となったとき。
前各号に準ずる善行又は功労のあったとき。
2 表彰は、原則として会社の創立記念日に行う。また、賞状のほか賞金又は賞品を授与する。

表彰は、船員の士気を高め、船舶・船員等の安全、生産性や会社の業績の向上等を図ることを目的として設けられるものです。

(船長が行う懲戒)
 船長は、乗組員が第17条①~⑩のいずれかを守らない場合には、その情状に応じ、次の区分により懲戒を行う。
①上陸禁止
  上陸禁止の期間は、初日を含めて10日以内とし、その期間には、停泊日数のみを算入する。
②戒告
文書又は口頭で注意を行い、将来を戒める。
2 船長が前項の懲戒を行おうとするときは、3人以上の乗組員を立ち会わせて本人及び関係人を取り調べた上、立会人の意見を聴かなければならない。

船長は、海員が船員法第21条の事項を守らないときは、これを懲戒することができます。この場合の懲戒は、上陸禁止及び戒告の2種であり、上陸禁止の期間は、初日を含めて10日以内とし、その期間には、停泊日数のみを算入します。

船長が海員を懲戒しようとするときは、3人以上の海員を立ち会わせて本人及び関係人を取り調べた上、立会人の意見を聴かなければなりません。

(会社が行う懲戒)
 会社は、船長が前条の懲戒を行う場合又は行った場合、雇入契約を解除することがある。
2 船員が次条のいずれかに該当する場合は、その情状に応じ、次の区分により懲戒を行う。
① けん責
  始末書を提出させて将来を戒める。
② 減給
  始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。
③ 出勤停止
  始末書を提出させるほか、  日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支払ない。
④ 停職
  始末書を提出させるほか、  月間を限度として就業を停止し、その間の賃金は支払わない。
⑤ 降格
  始末書を提出させるほか、役職を罷免し又は引き下げ、資格等級を引き下げる。
⑥ 諭旨解雇
  退職願を提出するよう勧告する。勧告に従わない場合には、懲戒解雇とする。
⑦ 懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において、所轄の地方運輸局長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支払わない。

船舶所有者が行う懲戒処分の種類については、本条に掲げる処分の種類に限定されるものではありません。公序良俗に反しない範囲内で事業場ごとに決めることも可能です。就業規則で減給の制裁を定める場合において、船員についてはその減給の上限の定めはありませんが、陸上の労働者の場合には、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないこととされています。

予備船員を懲戒解雇として平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支給せずに即時に解雇する場合、あらかじめ所轄地方運輸局長に解雇予告の除外認定の申請を行い、その認定を受けることが必要です。所轄地方運輸局長の認定を受けずに即時に解雇する場合には、解雇予告手当を支払わなければなりません。

(懲戒の事由)
 船員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給、出勤停止、停職又は降格とする。
① 正当な理由なく無断欠勤が   日以上に及ぶとき。
 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。
 過失により会社に損害を与えたとき。
 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。
 第17条~第21条に違反したとき。
 その他この規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき。
2 船員が次のいずれかに該当するときは、諭旨解雇又は懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第13条に定める普通解雇、前条に定める減給、出勤停止、停職又は降格とすることがある。
 重要な経歴を詐称して雇用されたとき。
 正当な理由なく無断欠勤が  日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。
 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。
 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。
 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき。
 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。
 素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。
 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。
 第18条~第21条に違反し、その情状が悪質と認められるとき。
 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき。
 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。
 私生活上の非違行為や会社に対する正当な理由のない誹謗中傷等であって、会社の名誉信用を損ない、業務に重大な悪影響を及ぼす行為をしたとき。
 正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき。
 その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

懲戒処分については、最高裁判決において、使用者は規則や指示・命令に違反する労働者に対しては、「規則の定めるところ」により懲戒処分をなし得ると述べられています。したがって、就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできません。

また、予備船員の懲戒の事由の内容については、船員法及び労基法上の制限はありません。しかし、契約法において「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定められており、懲戒事由に合理性がない場合、当該事由に基づいた懲戒処分は懲戒権の濫用と判断される場合があります。

懲戒処分の対象者に対しては、規律違反の程度に応じ、過去の同種事例における処分内容等を考慮して公正な処分を行う必要があります。裁判においては、使用者の行った懲戒処分が公正とは認められない場合には、当該懲戒処分について懲戒権の濫用として無効であると判断したものもあります。

また、就業規則に懲戒規定を設ける前にした労働者の行為に対して、さかのぼって懲戒処分をすることや、1回の懲戒事由に該当する行為に対し複数回の懲戒処分を行うことはできません。

船内苦情処理

(船内苦情処理)
 会社は、船員が航海中に申し出た苦情については、別に定めるところにより処理を行う。
2 会社は、船員と雇入契約を締結するときは、前項の苦情に関する規定の写しを船員に交付する。
3 船長は、船内に第1項の苦情処理に関する規定の写しを備え置き、乗組員が常時利用できるようにしなければならない。

船舶所有者は、船員が航海中に船舶所有者に申出をした船員法令及び労働基準法令に規定する事項並びに船舶の居住設備に関する事項に関する苦情を公正かつ適正に処理するための船内苦情処理手続を定めなければなりません。この場合、次の事項について定める必要があります。

  • 苦情の申出方法
  • 苦情処理の体制及び方法
  • 苦情処理結果の伝達方法
  • 苦情処理結果に不服がある場合の申立方法
  • 苦情処理手続に関する記録の作成及び保存の方法
  • 苦情を申し出た船員に対する相談、助言その他の援助に関する体制

船舶所有者は、雇入契約が成立したときは、遅滞なく、船内苦情処理手続を記載した書面を船員に交付しなければなりません。

船舶所有者は、船員から航海中にの苦情の申出を受けた場合にあっては、船内苦情処理手続に定めるところにより、苦情を処理しなければなりません。

船舶所有者は、苦情の申出をしたことを理由として、船員に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません。

公益通報者保護

(公益通報者の保護)
 会社は、労働者から組織的又は個人的な法令違反行為等に関する相談又は通報があった場合には、別に定めるところにより処理を行う。

副業・兼業

(副業・兼業)
 船員は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事しようとする場合には、届出を行わなければならない。
2 会社は、船員からの前項の届出に基づき、当該船員が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 会社の秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、会社の利益を害する場合

副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできません。この「副業・兼業」については、事業主となって行うものや請負・委託・準委任契約により行うものなどがあります。なお、労働契約であるか否かは実態に基づいて判断されます。

船員法の労働時間規制や安全衛生規制等を潜脱するような形態や、合理的な理由なく労働条件等を労働者の不利益に変更するような形態で行われる副業・兼業は認められず、違法な偽装請負の場合や、請負であるかのような契約としているが実態は労働契約だと認められる場合等においては、就労の実態に応じて船員法等の規定の適用を受けることになります。

労働者の副業・兼業について、裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であることが示されていることから、船員が副業・兼業できることを明示しています。

なお、どのような形で副業・兼業を行う場合でも、過労等により業務に支障を来たさないようにする観点から、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましいです。

船員の副業・兼業を認める場合、労務提供上の支障や会社の秘密の漏洩がないか、長時間労働を招くものとなっていないか等を確認するため、第2項において、船員からの事前の届出により船員の副業・兼業を把握することを規定しており、船員の副業・兼業の内容等を把握するため、業務内容や労働時間を確認することが考えられます。

裁判例では、労働者の副業・兼業について各企業の制限が許される場合は、以下のような場合であると考えられます。これらに該当するかどうかは各船舶所有者で判断しますが、就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのないよう、適切な運用を心がけることが肝要です。

  • 労務提供上の支障がある場合
  • 会社の秘密が漏洩する場合
  • 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  • 競業により会社の利益を害する場合

また、「労務提供上の支障がある場合」には、副業・兼業が原因で自社の業務が十分に行えない場合、長時間労働など船舶の安全に支障が生じるおそれがある場合や労働者の健康に影響が生じるおそれがある場合、船舶所有者の義務が果たせないおそれがある場合が含まれると考えられます。

なお、就業規則において、副業・兼業を行うことや、その内容・労働時間等についての船員からの届出を定めていた場合に、船員から届出がなされずに副業・兼業が行われたことを把握したときには、まず、船員に届出を求め、制限が許される場合に該当しないかの確認や、労働時間等の確認を行い、適切に労働時間の管理を行いつつ、労働者が副業・兼業を行うことができるようにすることが望ましいものとされています。

附 則
(施行期日)第1条 この規則は、令和   年   月   日から施行する。

まとめ

船員の労働環境は、一般労働者の労働環境とはまったく異なります。そのため、働き方改革がなかなか進展しにくい状況にありました。国土交通省がモデル就業規則を公開したことは働き方改革の第一歩とはいえますが、依然として海事法令の独特な世界観は変わりません。実際に運用する際にはさらに個別具体的な規則が求められます。就業規則の作成や改定の際は船員労務の専門家とも協議して手続きを進めることをお薦めさせていただきます。

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