船舶登記の登記事項

神戸第2地方合同庁舎
神戸第2地方合同庁舎

総トン数20トン以上の推進機関を有する日本船舶の所有者は、船舶の船籍港の所在地を管轄する法務局において、登記を行うことを義務付けされています。

え、陶器?冬季??もしかして闘気???

さすがにこんなことにはならないでしょうが、とはいえ船舶登記に関しては、一般層の認知度が極めて低く、情報を収集することも困難な上、登記を取り扱う法務局の担当者ですら、少し不安げな表情を浮かべるくらいレアな手続きであることは間違いありません。

そこで本稿では、入門編である船舶登記の基礎知識に続く船舶登記実務の基本編として、実際に登記簿に登記すべき事項について、詳しく解説していきたいと思います。

登記所

登記は、原則として、船籍港の所在地を管轄する法務(支)局において、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行います。また、製造中の船舶については、原則として、製造地を管轄する法務(支)局において登記を行います。

船籍港の所在地が住所や法人所在地の市町村と異なることも多いため、一体どこの法務(支)局が管轄しているのか混乱してしまうことがあります。最寄りの法務局でも問い合わせると丁寧に教えてくれますので、船籍港がどこの港であるかくらいは把握して答えることが出来るようにしておきましょう。

登記記録の作成

船舶の登記記録は、表題部、権利部(甲区・乙区)及び船舶管理人部(丙区)に区分して作成します。また、製造中の船舶の登記記録については、表題部及び権利部に区分して作成します。

船舶や権利について自由に登記することができるわけではありません。表題部、権利部、船舶管理人部それぞれにおいて、登記することができる事項は以下のように定められており、たとえば船長の名称を表示したり、船上で催されるイベントのプラチナパスポートの受給権といった権利を登記することは出来ません。

  • 船舶の表示(表題部)
  • 船舶についての所有権(権利部:甲区)
    • 保存、設定、移転、変更、処分の制限、消滅
  • 船舶についての抵当権(権利部:乙区)
    • 保存、設定、移転、変更、処分の制限、消滅
  • 船舶についての賃借権(権利部:乙区)
    • 保存、設定、移転、変更、処分の制限、消滅
  • 船舶管理人の選任(船舶管理人部:丙区)
  • 船舶管理人の氏名若しくは名称若しくは住所の変更(船舶管理人部:丙区)
  • 船舶管理人の代理権の消滅(船舶管理人部:丙区)
  • 製造中の船舶の表示(表題部
  • 製造中の船舶についての抵当権(権利部:乙区)
    • 保存、設定、移転、変更、処分の制限、消滅
  • 製造中の船舶について船舶の所有者となるべき者(権利部:乙区)

登記名義人

登記名義人とは、登記簿の権利部に所有権、抵当権、賃借権の権利者として記録されている者及び製造中の船舶の登記簿の権利部に抵当権者として記録されている者のことをいいます。

申請情報

申請情報とは、船舶の登記を申請する際に提供しなければならない情報のことをいいます。申請情報の提供は、以下の事項を記載した登記申請書を提出することによって行います。

  • 申請人の氏名又は名称及び住所
  • 申請人が法人であるときは、その代表者の氏名
  • 代理人によって登記を申請するときは、代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
  • 債権者代位権その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、申請人が代位者である旨、当該他人の氏名又は名称及び住所並びに代位原因
  • 登記の目的
  • 所有権の保存の登記以外の登記を申請するときは、登記原因及びその日付
  • 所有権の登記を申請する場合において、船舶が2人以上の者の共有に属するときは、船舶管理人の氏名又は名称及び住所
  • 所有権の保存若しくは移転の登記を申請し、又は登記がない船舶についてする所有権の処分の制限の登記を嘱託するときは、次に掲げる事項
    • 所有権の登記名義人となる者が会社であるときは、当該会社のすべての代表者その他の業務を執行するすべての役員の氏名
    • 所有権の登記名義人となる者が会社以外の法人であるときは、当該法人のすべての代表者の氏名
  • 船名船舶の種類船籍港船質総トン数
  • 登録免許税額
  • 下表の登記を申請するときは、同表に掲げる事項
登録免許税額に係る課税標準の金額

登記の申請においては、登録免許税額を申請情報の内容とする必要があります。この場合において、以下の登記については、課税標準の金額も申請情報の内容とします。

登記の区分申請情報(課税標準)登録免許税率
所有権の保存の登記船舶の価額1,000の4
所有権の移転の登記  
②イ相続又は法人の合併による移転の登記船舶の価額1,000の4
②ロ遺贈、贈与その他無償名義による移転の登記船舶の価額1,000の20
②ハその他の原因による移転の登記船舶の価額1,000の28
委付の登記船舶の価額1,000の4
賃借権の設定、転貸又は移転の登記船舶の価額1,000の1.5
抵当権の設定、強制競売若しくは競売に係る差押え、仮差押え、仮処分又は抵当付債権の差押えその他権利の処分の制限の登記債権金額又は極度金額1,000の4
抵当権の移転の登記  
⑥イ相続又は法人の合併による移転の登記債権金額又は極度金額1,000の1
⑥ロその他の原因による移転の登記債権金額又は極度金額1,000の2
根抵当権の一部譲渡又は法人の分割による移転の登記一部譲渡又は分割後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額1,000の2
抵当権の順位の変更の登記抵当権の件数一件につき1,000円
賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記賃借権及び抵当権の件数一件につき1,000円
信託の登記  
⑩イ所有権の信託の登記船舶の価額1,000の4
⑩ロ抵当権の信託の登記債権金額又は極度金額1,000の2
⑩ハその他の権利の信託の登記船舶の価額1,000の1.5
仮登記  
⑪イ所有権の移転の仮登記又は所有権の移転請求権の保全のための仮登記船舶の価額1,000の4
⑪ロその他の仮登記船舶の隻数一隻につき1,000円
付記登記、抹消された登記の回復の登記又は登記事項の更正若しくは変更の登記(これらの登記のうち①〜⑩を除く)船舶の隻数一隻につき1,000円
登記の抹消船舶の隻数一隻につき1,000円

添付情報

添付情報とは、登記事項を客観的に証明するために、申請情報と併せて提供しなければならない情報のことをいいます。申請人は、以下の情報を申請情報と併せて提供します。なお、書面の提出により登記を申請する場合、添付書類は作成後3か月以内のものでなければなりません。

  • 申請人が法人であるときは、当該法人の会社法人等番号、会社法人等番号を有しない法人にあっては、当該法人の代表者の資格を証する情報
  • 代理人によって登記を申請するときは、当該代理人の権限を証する情報
  • 債権者代位権その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、代位原因を証する情報
  • 所有権の保存若しくは移転の登記を申請し、又は登記がない船舶についてする所有権の処分の制限の登記を嘱託するときは、次に掲げる情報
    • 所有権の登記名義人となる者が日本人であることを証する情報(住民票)
    • 所有権の登記名義人となる者が会社であるときは、会社法人等番号、会社法人等番号を有しない会社にあっては、当該会社の全ての代表者その他の業務を執行する全ての役員の資格を証する情報
    • 所有権の登記名義人となる者が会社であるときは、当該会社の全ての代表者及び業務を執行する役員の3分の2以上の者が日本人であることを証する情報(住民票)
    • 所有権の登記名義人となる者が会社以外の法人であるときは、当該法人の会社法人等番号、会社法人等番号を有しない会社にあっては、当該法人の全ての代表者の資格を証する情報
    • 所有権の登記名義人となる者が会社以外の法人であるときは、当該法人の全ての代表者が日本人であることを証する情報(住民票)
  • 船舶登記規則第48条第2項に関する情報(下記)
船舶登記規則第48条第2項の証明書

所有権の保存の登記、所有権の移転の登記、委付の登記、賃借権の設定、転貸又は移転の登記(船舶又は製造中の船舶の価額をもって債権金額とみなす場合に限る)、所有権の信託の登記、その他の権利(抵当権を除く)の信託の登記、所有権の移転の仮登記又は所有権の移転請求権の保全のための仮登記を申請する場合には、次の事項を証する造船者が作成した情報をその申請情報と併せて提供します。

  • 貨物船、コンテナー船、貨客船、カーフェリー、客船、水中翼船、油槽船、漁船、浚渫しゅんせつ船、砂利採取船又はその他の別
  • 船舶の製造の年月
  • 漁船(木船を除く)にあってはその用途

表題部の登記事項

表題部は、船舶の基本情報について表示を行う、いわばフェイスシートに相当する登記区分です。表題部では、以下の事項について登記を行います。

  • 船名
  • 船舶の種類(帆船又は汽船の別)
  • 船籍港
  • 船質(船舶を構成する材料による分類)
  • 総トン数
  • 推進機関があるときは、その種類及び数
  • 推進器があるときは、その種類及び数
  • 帆船にあっては、帆装(帆の装着の形式)
  • 進水の年月
  • 日本において船舶を製造した場合を除き、国籍取得の年月日

なお、管海官庁が表題部の登記事項について職権による変更の登録をしたときは、遅滞なく、当該登記事項に関する変更の登記を登記所に嘱託しなければならないこととされています。

所有権に関する登記

所有権の保存の登記は、所有者のみが申請人となり、所有者以外の者が登記の申請を行うことは出来ません。船舶が共有されている場合おける所有権の保存の登記は、すべての共有者が共同して申請する必要があります。登記官は、所有権の保存の登記をする場合には、職権により、船舶の表示について登記を行います。

登記官は、登記がない船舶について嘱託により所有権の処分の制限の登記をするときは、職権で、船舶の表示について登記し、かつ、所有権の保存の登記を行います。

登記官は、船舶について所有権の保存の登記以外の所有権の登記をしたときは、遅滞なく、その旨を船籍港を管轄する管海官庁に通知します。

船舶管理人に関する登記

船舶管理人とは、船舶を2人以上で共有する場合において、その全員の同意によって選任した代表者のことをいいます。船舶登記特有の制度であり、船舶共有者を代表する者を明確にすることによって、円滑な取引に資することを目的としています。

船舶管理人に関する登記事項

  • 登記の目的
  • 申請の受付の年月日及び受付番号
  • 船舶管理人の氏名又は名称及び住所

船舶管理人の選任の登記

登記官は、船舶管理人の氏名又は名称及び住所を申請情報の内容とする登記の申請に基づいて所有権の登記をする場合には、船舶管理人の選任の登記をしなければならないこととされています。この場合、登記官は、申請の受付年月日及び受付番号として、当該所有権の登記の申請の受付の年月日及び受付番号を登記します。

船舶管理人の氏名変更の登記等

船舶管理人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、船舶管理人が申請をしなければならないこととされています。また、これらの登記は付記登記によって行われます。

船舶管理人の変更の登記

船舶管理人の変更の登記の申請は、船舶の共有者であるすべての登記名義人が共同して行わなければならないこととされています。船舶管理人の変更の登記についても、付記登記によって行われます。

船舶管理人の登記の抹消

登記官は、所有権の保存の登記以外の所有権の登記をした場合において、所有権の登記名義人が1人になったときは、職権で、船舶管理人の登記の抹消を行います。

製造中の船舶に関する登記

表題部の登記事項

  • 船舶の種類
  • 船質計画における船舶の長さ、幅及び深さ
  • 計画における総トン数
  • 計画において推進機関があるときは、その種類及び数
  • 計画において推進器があるときは、その種類及び数
  • 製造番号があるときは、その番号
  • 製造地
  • 造船事業者の氏名又は名称及び住所

抵当権の設定の登記の申請

製造中の船舶であっても、抵当権を設定することが出来ます。製造中の船舶についてする抵当権の設定の登記においては、船舶の所有者となるべき者が登記義務者となります。登記官は、製造中の船舶について初めて抵当権の設定の登記をする場合には、職権で、製造中の船舶の表示並びに船舶の所有者となるべき者の氏名又は名称及び住所を登記します。なお、製造中に抵当権の登記がされた船舶についてする所有権の保存の登記の申請は、抵当権を登記した登記所において行います。

抵当権に関する登記の申請情報

製造中の船舶について、抵当権に関する登記を申請する場合に提供しなければならない申請情報の内容は次のとおりです。

  • 申請人の氏名又は名称及び住所
  • 申請人が法人であるときは、その代表者の氏名
  • 代理人によって登記を申請するときは、代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
  • 債権者代位権その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、申請人が代位者である旨、当該他人の氏名又は名称及び住所並びに代位原因
  • 登記の目的
  • 所有権の保存の登記以外の登記を申請するときは、登記原因及びその日付
  • 製造中の船舶の表示
  • 船舶登記令別表二の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の申請情報欄に掲げる事項

抵当権に関する登記の添付情報

製造中の船舶について、抵当権に関する登記を申請する場合に、申請情報と併せて提供しなければならない情報の内容は次のとおりです。

  • 申請人が法人であるときは、当該法人の会社法人等番号会社法人等番号を有しない法人にあっては、当該法人の代表者の資格を証する情報
  • 代理人によって登記を申請するときは、代理人の権限を証する情報
  • 債権者代位権その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、代位原因を証する情報
  • 船舶登記令別表二の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の添付情報欄に掲げる情報

変更の登記等

船舶の所有者となるべき者の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、船舶の所有者となるべき者が単独で申請することができます。

製造中の船舶の製造地の変更により製造中の船舶の製造地を管轄する登記所が変更した場合における表題部の登記事項に関する変更の登記の申請は、変更前の製造地を管轄する登記所に対して行います。

まとめ

全国2,214
大阪法務局管内273
神戸地方法務局179
東京法務局管内514

上の表は、2020年度における船舶登記事件件数の統計数です。全国的には取扱件数が多いとされる神戸地方法務局でも年間179件。これを単純に12か月で割ると、なんと月間約15件です。神戸、明石、姫路、淡路といった港町を抱える神戸地方法務局でさえこの数字ですから、船舶登記がいかにレアな手続きであるのかがお分かりいただけるのではないでしょうか。

このように、取扱件数が極端に少ないことからも、船舶登記の手続きに精通する人を探し出すことは困難を極めます。情報社会の最強ツールであるはずのインターネットを駆使しても、なかなか欲しい情報にたどりつくことが出来ません。

登記は安全な取引に資するための重要な公示制度でありながら、登記官は提出された情報に基づいてのみ登記を行います。このため、申請にミスがあれば、後々取り返しがつかなくなることも考えられます。

これだけレアで複雑な手続きですので、わざわざリスクを冒してチャレンジするメリットも少ないように思います。海や船舶に関してお困りの際は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

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