海上運送法等の改正による規制及び罰則の強化について(令和5年3月3日閣議決定)
令和5年3月3日、旅客船の総合的な安全・安心対策を講ずることにより海上旅客輸送の安全を図るとともに、安定的な国際海上輸送の確保等を図るための「海上運送法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
この改正の背景には、令和4年4月23日に発生した知床遊覧船事故の反省や、安定的な国際海上輸送の確保といった政策的課題の克服といったものがあります。
目 次
改正案の概要
今回の改正案では、旅客船の総合的な安全・安心対策と安定的な国際海上輸送の確保という2つの課題に対して策が講じられています。特に旅客船の総合的な安全・安心対策の面では、制度が根本から見直される大幅な改正が実施される予定です。
旅客船の総合的な安全・安心対策
旅客船の総合的な安全・安心対策として、①事業者の安全管理体制の強化(海上運送法)、②船員の資質の向上(海上運送法、船員法、船舶職員及び小型船舶操縦者法)、③行政処分・罰則等の強化(海上運送法)及び④旅客の利益保護の充実(海上運送法、船員法)という4つの観点について改正が実施されます。
事業者の安全管理体制の強化
- 小型船舶のみを使用する旅客不定期航路事業(例:遊覧船)に係る許可についての更新制の導入
- 安全統括管理者・運航管理者に係る資格者証制度・試験制度の創設
- 事業参入を事前届出制としている人の運送をする船舶運航事業(例:海上タクシー)についての登録制の導入
船員の資質の向上
- 小型旅客船の船長となるために必要な特定操縦免許について、講習課程の内容を拡充、乗船履歴に応じ船舶の航行区域を限定
- 小型旅客船の船舶所有者に対し、船長等の乗組員に対する海域の特性等に関する教育訓練の実施を義務付け
行政処分・罰則等の強化
- 法令違反があった事業者に対する船舶等の使用停止命令制度の創設
- 輸送の安全確保命令に従わない事業者に対する懲役刑の導入、法人重科の創設等
- 事業許可の欠格期間を現行の2年から5年に延長
旅客の利益保護の充実
一定の海域を航行する事業者に対する旅客名簿の作成・備置きの義務付け
安定的な国際海上輸送の確保
貿易量の99.5%を外航海運が担う日本において、安定的な国際海上輸送を確保するため、船主による外航船舶の計画等について以下の制度が導入されます。
外航船舶の確保等の目標及び確保等に関する取組等についての計画認定制度を導入
まとめ
本稿は閣議決定のあった日の翌日時点(令和5年3月4日)における速報版ですが、ここに紹介した諸法令の改正は、海事代理士を含め海事に関与する皆さまにとって大規模な影響を及ぼすものになることが予測されます。今後も新情報を入手次第、追ってご案内いたします。