小型船舶操縦者の遵守事項と違反行為について
自動車のドライバーと同様に、小型船舶操縦者が遵守すべき規定に違反する行為(違反行為)をした場合、違反行為の内容及び回数によって操縦免許を取り消されたり業務の停止を命じられてしまうことがあります。当然といえば当然ですが、このようなことにならないよう、まずは本稿にて遵守事項をしっかりと再確認し、水面でのマナーとルールをきちんと守って正しい操縦を心がけるようにしましょう。
小型船舶操縦者の遵守事項
酒酔い操縦 | 小型船舶操縦者は、飲酒、薬物の影響その他の理由により正常な操縦ができないおそれがある状態で小型船舶を操縦し、又は当該状態の者に小型船舶を操縦させてはならない |
自己操縦義務違反 | 小型船舶操縦者は、小型船舶が港の区域を航行するとき、小型船舶が狭い水路を通過するとき、又は特殊小型船舶に乗船するときは、自らその小型船舶を操縦しなければならない(乗船基準において必要とされる資格に係る操縦免許証を受有する小型船舶操縦士が操縦する場合、二級小型船舶操縦士の資格に係る操縦免許を受けた者が当該小型船舶を操縦する場合(技能限定がなされた操縦免許を受けた者については、当該小型船舶がその限定された区域を航行し、その限定された大きさであり、かつ、その限定をされた出力の推進機関を有するものである場合に限る)、漁業若しくは船舶運航事業その他の国土交通大臣が告示で定める事業の用に供する小型船舶をその事業に従事する者が操縦する場合、帆走中の帆船において小型船舶操縦者が操縦の指揮監督を行う場合、指定試験機関の小型船舶操縦士試験員若しくは教習所の教員が操縦の指揮監督を行う場合その他国土交通大臣が小型船舶の航行の安全の確保に支障がないと特に認める場合はこの限りでない) |
危険操縦 | 小型船舶操縦者は、遊泳者その他の人の付近において小型船舶をこれらの者との衝突その他の危険を生じさせるおそれのある速力で航行する操縦の方法、又は遊泳者その他の人の付近において小型船舶を急回転し若しくは縫航する操縦の方法で、小型船舶を操縦し、又は他の者に小型船舶を操縦させてはならない |
見張りの実施義務違反 | 小型船舶操縦者は、視覚、聴覚及びその時の状況に適した他のすべての手段により、常時適切な見張りを確保しなければならない |
船外への転落に備えた措置義務違反 | 小型船舶操縦者は、航行中の特殊小型船舶に乗船している場合、12歳未満の小児が航行中の小型船舶に乗船している場合、航行中の小型漁船に1人で乗船して漁ろうに従事している場合、又は小型船舶の暴露甲板に乗船している場合には、船外への転落に備えるためにその者に救命胴衣等を着用させること等の措置を講じなければならない |
発航前検査義務違反 | 小型船舶操縦者は、発航前に以下の検査(検査の結果に基づく小型船舶の航行の安全を図るために必要な措置を講ずることを含む)を行わなければならない ①燃料及び潤滑油の量の点検 ②船体、機関及び救命設備その他の設備の点検 ③気象情報、水路情報その他の情報の収集 ④小型船舶の安全な航行に必要な準備が整っているかについての検査 |
人命の救助 | 操縦する小型船舶が衝突したとき又はその小型船舶に急迫した危険があるときは、人命の救助に必要な手段を尽くすこと(自己に急迫した危険があるときは、この限りでない) |
遵守事項違反点数表
点数 | 違反行為の内容 |
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3点 | 酒酔い操縦、自己操縦義務違反、危険操縦又は見張りの実施義務違反 |
2点 | 船外への転落に備えた措置義務違反又は発航前検査義務違反 |
+3点 | 違反行為によって他人を死傷させたとき |
−2点 | 再教育講習を受けなければならない者が、受講期間内にその違反行為に係る再教育講習を受けたとき(累積点数が取消等の基準に該当した場合を除く) |
自動車やバイクと同様に、小型船舶にも「違反点数」の概念が存在しています。上記の違反点数の累積により、免許が停止されたり取り消されたりすることもこれら同様です。また、同時に2以上の種別の違反行為に該当するときは、これらの違反行為の点数のうち高い点数(同じ点数のときはその点数)によるものとされています。
累積点数による処分の基準
前歴の有無 | 累積点数 |
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なし | 5点 |
あり | 3点 |
累積点数とは、違反行為及び違反行為をした日を起算日とする過去1年以内における他の違反行為のそれぞれについて小型船舶操縦士に付した違反点数の合計をいいます。
国土交通大臣は、違反行為に係る累積点数が、上表の前歴の有無に応じ、それぞれ表に掲げる累積点数に該当することとなったときは、その操縦免許を取り消し、2年以内の期間を定めてその業務の停止を命じ、又は戒告することができます。ただし、これらの事由によって発生した海難について海難審判所が審判を開始したときはこの限りではありません。
なお、「前歴の有無」とは、累積点数に係る違反行為をしたときにおける当該違反行為をした日を起算日とする過去3年以内の処分又は海難審判法の裁決による操縦免許に係る処分を受けたことの有無をいいます。
再教育講習
小型船舶操縦者が違反行為をし、違反行為の内容及び回数が前記した基準に該当することとなったときは、その者に対し、再教育講習を受けるべき旨の書面が通知されます。この通知を受けたときは、通知を受けた日の翌日から起算して1か月を超えることとなるまでの間(再教育講習を受けないことについて、国外の地に滞在していること、災害を受けていること、病気にかかり若しくは負傷していること、法令の規定により身体の自由を拘束されていること、社会の慣習上又は業務の遂行上やむを得ない緊急の用務が発生していること、その他国土交通大臣がやむを得ないと認める事情がある者にあっては、その理由の存する期間を除く)に、再教育講習を受けなければなりません。
国土交通大臣は、再教育講習を受けなければならない者が受講期間内に再教育講習を受けたときは、以下のとおり処分を免除し、又は軽減することができます。
行うものとされた処分 | 再教育講習を受けたことによる処分の免除又は軽減 |
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戒告 | 処分の免除 |
1か月以内の期間の業務の停止 | 戒告又は業務の停止の期間の短縮 |
1か月を超える期間の業務の停止 | 業務の停止の期間の短縮 |
まとめ
水面には分かりやすい標識や表示が存在せず、エリアも広大であるため、公道上で自動車を運転する感覚とは異なる心境になるのが事実でしょう。だからこそより一層ルールやマナーを遵守する必要があるとも言い換えることができます。昨今は水上バイクでの危険操縦が問題視されたり、痛ましい死亡事故があったりといった報道を目にする機会が増えました。海や湖は個人のものではありません。いまいちど水面におけるリスクを確認し、ルールと最低限のマナーを守って正しい操縦を心がけるようにしましょう。