マグロでも分かる船員法の解説③【雇入契約等編】
船員法は、船員の雇入契約や給料、労働時間、有給休暇などを定めた法律であり、一般労働者で言うところの、労働基準法にあたる法律です。
船員労働には、長時間陸上から孤立し、「労働」と「生活」とが一致した24時間体制の就労があり、かつ、常に動揺にさらされる船内では、危険な作業をともなうなどの特殊性があることから、労働基準法とは異なる規律が必要です。そのため、船員には、厚生労働省が所管する労働基準法ではなく、国土交通省が所管する船員法が適用されます。
他方、一般社会において船員法を意識する機会はほとんどなく、改めてこれを検索しようにも、そもそも詳しく解説した文献はほとんど存在していません。
そこで当サイトでは、「マグロでも分かる海事法令」シリーズとして、「船員法」について深掘りした解説を行うことにしました。本編では、労働基準法でいうところの、「雇入契約等」について解説しています。船員法の柱となる分野でもあるので、しっかりと確認するようにしてください。
★船員法の構成
- 第1章 – 総則
- 第2章 – 船長の職務及び権限
- 第3章 – 紀律
- 第4章 – 雇入契約等
- 第5章 – 給料その他の報酬
- 第6章 – 労働時間、休日及び定員
- 第7章 – 有給休暇
- 第8章 – 食料並びに安全及び衛生
- 第9章 – 年少船員
- 第9章の2 – 女子船員
- 第10章 – 災害補償
- 第11章 – 就業規則
- 第12章 – 監督
- 第13章 – 雑則
- 第14章 – 罰則
- 附則
目 次
船員雇入契約
船員の労働契約には、船員法上の「雇入契約」と、民法上の「雇用契約」という2つの契約があります。
このうち、雇用契約とは、民法第623条に規定のある雇用関係の基本となる契約であり、一般労働者にも広く適用される労働契約です。
これに対し、雇入契約とは、特定の船舶に乗船して労働を提供し、船舶所有者が報酬を与えることを内容とする合意であって、船員に特有の契約形態です。
そしてこの雇入契約は、乗船する船舶が決まった段階で明らかになる船舶の航行区域、航行期間、航行中の職務等の労働条件に関して、乗船の都度、結ばれます。
要するに、雇入契約と雇用契約とは、それぞれ別個の契約であるため、たとえ雇用契約を締結している場合であっても、船員が船舶に乗り組む際には、船舶所有者との間で、別途、雇入契約を締結する必要があります。また、雇入契約は、「乗船の都度」締結するものとされていることから、船員が下船するときには、この雇入契約を終了させる必要があります。
海員と予備海員
海員とは、船内で使用される船長以外の乗組員で、労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者をいいます。
一方、予備船員とは、船舶に乗り組むため雇用されている者であって船内で使用されていないものをいいます。
海員 | 船内で使用される船長以外の乗組員で、労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者 |
予備船員 | 船舶に乗り組むため雇用されている者であって船内で使用されていないもの |
これらの者に対する労働契約を見ると、海員については「雇用契約及び雇入契約」、予備船員については「雇用契約」が必要になることがお分かりいただけるのではないかと思います。
船舶所有者
船員法における「船舶所有者」とは、単に船舶の所有者(船主)を指すのではなく、「船舶において労務の提供を受けるために船員を使用する者」のことを指します。
労働基準法では、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」を「使用者」としていますが、船員法における「船舶所有者」とは、これに相当するものであり、必ずしも船主と一致するわけではありません。したがって、船舶を所有していない者が、船員法上の「船舶所有者」として取り扱わることもありえます。
基本原則
船員法で定める基準に達しない労働条件を定める雇入契約(予備船員については、雇用契約)は、その部分については、無効となります。
この場合には、雇入契約は、その無効の部分については、船員法で定める基準に達する労働条件を定めたものとみなされます。
雇入契約の締結前の書面の交付等
船舶所有者は、雇入契約を締結しようとするときは、あらかじめ、雇入契約の相手方となろうとする者に対し、以下の事項について書面を交付して説明する義務を負います。
- 船舶所有者の名称又は氏名及び住所
- 雇用の期間
- 乗り組むべき船舶の名称、総トン数、用途(漁船にあっては、従事する漁業の種類を含む)及び就航航路又は操業海域に関する事項
- 職務に関する事項
- 給料その他の報酬の決定方法及び支払いに関する事項
- 報酬が歩合によって支払われる場合において保障される一定額並びに解雇予告手当、失業手当、雇止手当、送還手当及び有給休暇中の報酬の額基準労働期間、労働時間、休息時間、休日及び休暇に関する事項並びに交代乗船制等特殊の乗船制をとる場合における乗船制に関する事項
- 災害補償に関する事項
- 退職、解雇、休職及び制裁に関する事項
- 海賊行為による被害を受けた場合における措置に関する事項
- 送還に関する事項
- 予備船員制度があるときは、その概要
この場合において、雇入契約に係る航海が海上運送法第26条第1項の規定による航海命令によるものであるときは、船舶所有者は、あらかじめ、相手方に対し、その旨を書面を交付して説明する必要があります。
国土交通大臣は、航海が災害の救助その他公共の安全の維持のため必要であり、かつ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合に限り、船舶運航事業者に対し航路、船舶又は運送すべき人若しくは物を指定して航海を命ずることができる。
(海上運送法第26条第1項)
★海賊行為
海賊行為とは、船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶を除く)に乗り組み又は乗船した者が、私的目的で、公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む)又は日本の領海若しくは内水において行う以下のいずれかの行為をいいます。(海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律第2条)
- 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為
- 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶内にある財物を強取し、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させる行為
- 第三者に対して財物の交付その他義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求するための人質にする目的で、航行中の他の船舶内にある者を略取する行為
- 強取され若しくはほしいままにその運航が支配された航行中の他の船舶内にある者又は航行中の他の船舶内において略取された者を人質にして、第三者に対し、財物の交付その他義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求する行為
- 上記のいずれかに係る海賊行為をする目的で、航行中の他の船舶に侵入し、又はこれを損壊する行為
- 1.から4.までのいずれかに係る海賊行為をする目的で、船舶を航行させて、航行中の他の船舶に著しく接近し、若しくはつきまとい、又はその進行を妨げる行為
- 1.から4.までのいずれかに係る海賊行為をする目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為
雇入契約の内容の変更
船舶所有者は、雇入契約の内容(船舶所有者の名称又は氏名及び住所を除く)を変更しようとするときは、あらかじめ、船員に対し、変更の内容について書面を交付して説明する義務を負います。
募集受託者又は船員職業紹介事業者を利用した船員の雇入れの制限
船舶所有者は、以下のいずれかの事由に該当する者を船員として雇い入れることはできません。
- 船舶所有者が、船員職業安定法第44条第1項の許可を受けないで日本国内において募集受託者に行わせた船員の募集に応じた者
- 船員職業安定法第34条第1項の許可を受けて、又は同法第40条第1項の規定による届出をして船員職業紹介事業を行う者以外の者(日本政府及び船員の雇用の促進に関する特別措置法第7条第2項に規定する船員雇用促進センターを除く)が日本国内においてその船舶所有者に紹介した求職者
- 船舶所有者が、外国において、その国における船員の募集を適確に実施することができるものとして国土交通省令で定める基準(※)に適合しない募集受託者に行わせた船員の募集に応じた者
- 外国において、その国における船員職業紹介事業を適確に実施することができるものとして国土交通省令で定める基準(※)に適合しない者が船舶所有者に紹介した求職者
(※)国土交通省令で定める基準
国土交通省令で定める基準については、船員法施行規則第16条の2において、以下のように定められています。
- 2006年の海上の労働に関する条約の締約国である外国において船員の募集を行う募集受託者にあっては、その国の法令の規定によりその国において免許又は登録その他これに類する処分を受けていること
- 条約の非締約国である外国において船員の募集を行う募集受託者にあっては、条約に定める要件に適合していることについて、国土交通大臣の定める方法により船舶所有者の確認を受けていること
賠償予定の禁止
船舶所有者は、雇入契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をすることができません。
貯蓄金の管理等
船舶所有者は、原則として、雇入契約に付随して、貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をすることができません。
ただし、船員の委託を受けてその貯蓄金を管理することは可能であり、この場合においては、その使用する船員の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、船員の過半数で組織する労働組合がないときは船員の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを国土交通大臣に届け出る必要があります。
この協定には、以下の事項を必ず記載した上で、協定を締結した船舶所有者は、協定書及び届出書を所轄地方運輸局長に提出する必要があります。
- 貯蓄金の管理が預金の受入れである場合
- 預金者の範囲
- 預金者1人当たりの預金額の限度
- 通帳の発行その他貯蓄金の受入れを証する方法
- 管理の方法
- 利率、複利単利の別その他の利子の計算方法
- 返還の方法
- 貯蓄金の管理が預金の受入れでない場合
- 受領書の発行その他貯蓄金の受入れを証する方法
- 管理の方法(預入者の名儀、預入先の名称、預入れの種類及び利子又は配当金の管理方法を含む)
- 通帳、印鑑等船舶所有者の管理すべきものの範囲
- 返還の方法
船舶所有者は、船員の委託を受けてその貯蓄金の管理をする場合において、貯蓄金の管理が預金の受入れであるときは、利子をつける必要があります。
この利率が国土交通省令の定める利率(※)を下回るときは、その国土交通省令の定める利率による利子をつけることとしたものとみなす。
(※)国土交通省令の定める利率
船舶所有者が預金の受入れである貯蓄金の管理をする場合の下限利率は、船員法施行規則第16条の3第3項において、以下の利率又は年5%のうちいずれか高い方の利率と定められています。
- 一の年度(毎年4月から翌年3月までの期間)における下限利率は、その年度の前年度の10月における定期預金平均利率及び同月において適用される下限利率との差が5%以上であるときは定期預金平均利率に端数処理をして得た利率とし、利率の差が5%未満であるときは下限利率と同一の利率とすること
- 毎年度の4月における定期預金平均利率及び上記の規定により同月において適用される下限利率との差が10%以上であるときは、その年度の10月から3月までの期間における下限利率は、定期預金平均利率に端数処理をして得た利率とすること
協定により預金の受入れである貯蓄金の管理をする船舶所有者は、前年4月1日以後1年間における預金の管理の状況を、毎年4月30日までに、所轄地方運輸局長に報告する義務を負います。
なお、船員は、船舶所有者に管理を委託した貯蓄金については、いつでも、返還を請求することができます。
相殺の制限
船舶所有者は、原則として、船員に対する債権と給料の支払の債務とを相殺することができません。ただし、相殺の額が給料の額の3分の1を超えないとき及び船員の犯罪行為に因る損害賠償の請求権をもってするときは、船員に対する債権と給料の支払の債務とを相殺することができます。
雇入契約の成立時の書面の交付等
船舶所有者は、雇入契約が成立したときは、遅滞なく、以下の事項を記載した書面を2通作成し、うち1通を船員に交付し、他の1通を船員の死亡又は雇入契約の終了の日から5年を経過する日までの間、主たる船員の労務管理の事務を行う事務所に備え置く必要があります。
- 船舶所有者の名称又は氏名及び住所
- 雇用の期間
- 乗り組むべき船舶の名称、総トン数、用途(漁船にあっては、従事する漁業の種類を含む)及び就航航路又は操業海域に関する事項
- 職務に関する事項
- 給料その他の報酬の決定方法及び支払いに関する事項
- 報酬が歩合によって支払われる場合において保障される一定額並びに解雇予告手当、失業手当、雇止手当、送還手当及び有給休暇中の報酬の額基準労働期間、労働時間、休息時間、休日及び休暇に関する事項並びに交代乗船制等特殊の乗船制をとる場合における乗船制に関する事項
- 災害補償に関する事項
- 退職、解雇、休職及び制裁に関する事項
- 海賊行為による被害を受けた場合における措置に関する事項
- 送還に関する事項
- 予備船員制度があるときは、その概要
- 雇入契約を締結した船員の氏名、住所及び生年月日
- 雇入契約を締結した場所及び年月日
なお、雇入契約の内容(船舶所有者の名称又は氏名及び住所を除く)を変更したときも同様の手続きが必要になるほか、船舶所有者は、遅滞なく、変更の内容並びに変更について船員と合意した場所及び年月日を記載した書面を船員に交付する必要があります。
船舶所有者は、雇入契約の成立時の書面の写しを船内に備え置かなければならず、日本の港と日本以外の地域の港との間又は日本以外の地域の各港間の航海に従事する船舶の船舶所有者にあって、その書面が英語以外の言語によって作成されているときは、英語による訳文を添付する必要があります。
教育のための雇入契約の解除
船員は、学校教育法による学校、独立行政法人海技教育機構又は国立研究開発法人水産研究・教育機構における教育を受けようとするときは、少なくとも7日以前に船舶所有者に書面で申入れをすることにより、雇入契約を解除することができます。
雇入契約の成立等の届出
船舶所有者は、船員の雇入契約の成立、終了、更新又は変更があったときは、最寄りの地方運輸局等の事務所において地方運輸局長等に対し、これを届け出る必要があります。ただし、労働協約若しくは就業規則(国土交通大臣に届出をしためのに限る)の定めにより又はこれらの変更に伴い労働条件が変更された場合は、その変更について雇入契約の変更の届出をする必要はありません。
船舶所有者は、雇入契約の成立等の届出をしようとするときは、以下の書類を提示して、雇入契約が成立又は終了した場合にあっては雇止届出書を、雇入契約を変更又は更新した場合にあっては雇入契約変更届出書を提出する必要があります。
(※)雇入契約が終了した場合において海員名簿が滅失し、又は毀損したときは、船舶所有者は、雇止届出書2通を提出し、その1通をもって海員名簿に代え、雇入契約の終了の届出をすることができます。
- 海員名簿
- 船員手帳(※)
- 海技免状又は小型船舶操縦免許証その他の資格証明書を受有することを要する船員については、海技免状又は小型船舶操縦免許証その他の資格証明書(雇入契約の終了の届出をする場合を除く)
- 地方運輸局長等が雇入契約の確認のため必要があるときは、労働協約、就業規則、船員派遣契約の契約内容を記載した書類、妊産婦の船員を船内で使用することができることを証する書類その他の船員の労働関係に関する事項を証する書類、漁船の従業する区域を証する書類又は船舶国籍証書、船舶検査証書その他の船舶に関する事項を証する書類
(※)雇入契約の成立等の届出をする場合において、船員が地方運輸局等の事務所のない港で下船したことその他のやむを得ない事由があるときは、船員手帳を提示する必要はありません。
(※)船長は、船員が下船する際に雇入契約の終了の届出をすることができないときは、船員の受有する船員手帳の該当欄に、その事由を記載する必要があります。
一括届出
船員の乗組みを同一船舶所有者に属する航海の態様が類似し、かつ、船員の労働条件が同等である複数の船舶相互間において変更させる必要がある場合において、船舶所有者が所轄地方運輸局長の一括届出の許可を受けたときは、その許可に係る船舶に乗り組む船員の雇入契約は、これらの船舶のすべてについて存するものとして、雇入契約の成立等の届出を行います。
この許可を受けた場合における雇入契約の成立等の届出は、所轄地方運輸局長が指定した地方運輸局等の事務所において行います。
船員の乗組みを同一船舶所有者に属する複数の船舶相互間において変更させる必要がある場合において、上記以外の船舶所有者であって以下のすべてに該当するものが所轄地方運輸局長の一括届出の許可を受けたときは、その許可に係る船舶に乗り組む船員の雇入契約は、これらの船舶の全てについて存するものとして、雇入契約の成立等の届出を行います。
- 労働協約又は就業規則に定められた労働条件に基づき、適切な船員の労務管理を遂行し得る体制を確立していること
- 電子情報処理組織を使用する方法により、地方運輸局長が届出に係る船員の乗組みに関する事項を速やかに確認することができる措置を講じていること
こちらの許可を受けた場合における雇入契約の成立等の届出は、地方運輸局の事務所において行います。
一括届出の許可申請
船舶所有者は、一括届出の許可を受けようとするときは、以下の書類を提示し、一括届出許可申請書(第九号書式又は第十書式)を提出することにより申請を行います。
- 船舶検査証書又はその写し及び船舶検査手帳又はその写し
- 航海の態様が類似していることを証する書類又は船員の労働条件が同等であることを証する書類(所轄地方運輸局長が許可のために必要があると認めるとき)
- 報酬支払簿(所轄地方運輸局長が許可のために必要があると認めるとき)
- 船員の労働時間及び休息時間並びに船員に対する休日及び有給休暇の付与に関する事項を記載した記録簿その他の船員の労務管理に関する書類(所轄地方運輸局長が許可のために必要があると認めるとき)
沈没等による雇入契約の終了
船舶が沈没もしくは滅失したとき又は全く運航に堪えなくなったときは、雇入契約は終了します。また、船舶の存否が1か月間分らないときは、船舶は滅失したものと推定されます。
これらの事由により雇入契約が終了したときでも、船員は、人命、船舶又は積荷の応急救助のために必要な作業に従事しなければならず、応急救助の作業が終了するまで及び船員がその作業の終了後引き続き遺留品の保全、船員の送還その他必要な残務の処理に従事する場合において、その処理が終了するまでの間、雇入契約は、なお存続します。
ただし、船員がその作業の終了後引き続き遺留品の保全、船員の送還その他必要な残務の処理に従事する場合において、その処理が終了するまでの間においては、船舶所有者又は船員は、いつでも雇入契約を解除することができます。
雇入契約の解除
船舶所有者は、以下のいずれかの事由に該当する場合には、雇入契約を解除することができます。
- 船員が著しく職務に不適任であるとき
- 船員が著しく職務を怠ったとき、又は職務に関し船員に重大な過失のあったとき
- 海員が船長の指定する時までに船舶に乗り込まないとき
- 海員が著しく船内の秩序をみだしたとき
- 船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないとき
- その他やむを得ない事由のあるとき
船員は、以下のいずれかの事由に該当する場合には、雇入契約を解除することができます。また、船舶が外国の港からの航海を終了した場合において、その船舶に乗り組む船員が、24時間以上の期間を定めて書面で雇入契約の解除の申入れをしたときは、その期間が満了した時に、その者の雇入契約は終了します。
- 船舶が雇入契約の成立の時における国籍を失ったとき
- 雇入契約により定められた労働条件と事実とが著しく相違するとき
- 船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないとき
- 船員が学校教育法による学校、独立行政法人海技教育機構又は国立研究開発法人水産研究・教育機構における教育を受けようとするとき
海員は、船長の適当と認める自己の後任者を提供したときは、雇入契約を解除することができます。
期間の定めのない雇入契約について、船舶所有者又は船員が24時間以上の期間を定めて書面で解除の申入をしたときは、その期間が満了した時に終了します。
船舶所有者の変更による雇入契約の終了
相続その他の包括承継の場合を除いて、船舶所有者の変更があったときは、雇入契約は終了します。この場合には、雇入契約の終了の時から、船員と新所有者との間に、従前と同一条件の雇入契約が存するものとみなされますが、船員は、雇入契約の解除の規定に準じて、雇入契約を解除することができます。
雇入契約の延長
雇入契約が終了した時に船舶が航行中の場合には、次の港に入港してその港における荷物の陸揚及び旅客の上陸が終わる時まで、雇入契約が終了した時に船舶が停泊中の場合には、その港における荷物の陸揚及び旅客の上陸が終わる時まで、その雇入契約は存続するものとみなされます。
船舶所有者は、雇入契約が適当な船員を補充することのできない港において終了する場合には、船舶が雇入契約の成立の時における国籍を失ったとき、雇入契約により定められた労働条件と事実とが著しく相違するとき、又は船員が負傷もしくは疾病のため職務に堪えないときを除き、適当な船員を補充することのできる港に到着して荷物の陸揚及び旅客の上陸が終わる時まで、雇入契約を存続させることができます。
船長の就退職等の証明
雇入契約のない船長は、船長としての就職又は退職並びにその乗り組む船舶の名称、総トン数、主機の出力、航行区域若しくは従業制限及び従業区域並びに用途又はこれらの変更について船員手帳に地方運輸局長の証明を受けることができます。
この証明を申請しようとする雇入契約のない船長は、最寄りの地方運輸局の事務所において以下の書類を呈示して、船長就退職等証明申請書(第十一号書式)による申請書を提出して申請を行います。
- 海員名簿
- 船員手帳
- 海技免状又は小型船舶操縦免許証(退職又は船舶の名称の変更について証明を申請する場合を除く)
- 漁船の従業する区域を証する書類、船舶国籍証書、船舶検査証書その他の船舶に関する事項を証する書類(地方運輸局長が証明のため必要があると認めるとき)(※提示)
★提示と呈示
「提示」と「呈示」は、どちらも「差し出して相手に示すこと」を意味する言葉ですが、「提示」には、相手に見せて理解させるニュアンスがあります。
解雇制限
船舶所有者は、以下の期間に該当する船員については、原則として、解雇することができません。
- 船員が職務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため作業に従事しない期間及びその後30日間
- 妊娠中の女子又は出産後8週間を経過しない女子が作業に従事しない期間及びその後30日間
解雇制限の除外認定
解雇制限は、療養のため作業に従事しない期間が3年を超えた場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合には、その適用が除外され、これを解雇することができます。
ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、その事由について国土交通大臣の認定を受ける必要があります。
船舶所有者は、解雇制限の除外認定を受けようとするときは、以下の事項を記載した申請書2通を所轄地方運輸局長に提出する必要があります。
- 解雇しようとする船員の氏名、性別、職務及び雇用年月日
- 最近の雇入契約の成立の年月日及び雇入契約の終了の年月日
- 認定を受けようとする事由
解雇の予告
船舶所有者は、予備船員を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならず、30日前に予告をしない船舶所有者は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は予備船員の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合を除き、1か月分の給料の額と同額の予告手当を支払う必要があります。
ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は予備船員の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、その事由について、解雇制限の除外認定に準じ、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。
解雇予告の日数は、1日について、以下のとおり算定する給料の額と同額の予告手当を支払った場合においては、その日数を短縮することができます。
- 日によって給料を定めるときは、その日額に、短縮しようとする日数を乗じた(かけ算した)額
- 月によって給料(船員の報酬が歩合によって支払われる場合において、解雇予告手当、失業手当、雇止手当、送還手当及び有給休暇中の報酬について、雇入契約に定める額をもってみなした1か月分の給料の額を含む)を定めるときは、その月額を30で除した(割り算した)額に、短縮しようとする日数を乗じた額
- 上記以外の期間によって給料を定めるときは、上記に準じて算定した額
失業手当
船舶所有者は、沈没等により雇入契約が終了したときは、その翌日(行方不明となった船員については、その生存が知れた日)から2か月(その行方不明について行方不明手当の支払を受けるべき船員については、2か月から行方不明中の期間を控除した期間)の範囲内において、船員の失業期間中毎月1回、その失業日数に応じた給料の額と同額の失業手当を支払う必要があります。
雇止手当
船舶所有者(4.の場合には旧所有者)は、以下のいずれかの事由に該当する場合には、遅滞なく、船員に1か月分の給料の額と同額の雇止手当を支払う必要があります。
- やむを得ない事由により船舶所有者が雇入契約を解除したとき
- 船舶が雇入契約の成立の時における国籍を失ったこと又は雇入契約により定められた労働条件と事実とが著しく相違することにより船員が雇入契約を解除したとき
- 期間の定めのない雇入契約であって、船舶所有者又は船員が24時間以上の期間を定めて書面で解除の申入れをしたことにより船舶所有者が雇入契約を解除したとき
- 相続その他の包括承継の場合を除き、船舶所有者の変更があったことにより雇入契約が終了したとき
- 船員が健康証明書を受けることができないため雇入契約が解除されたとき
送還
船舶所有者は、以下のいずれかに該当する場合には、遅滞なくその費用で、船員の希望により、雇入港又は雇入港までの送還に要する費用の範囲内で送還することのできるその他の地(雇入れのため雇入港に招致した船員及び未成年者の船員にあっては、雇入港若しくは雇入契約の成立の時における船員の居住地又はこれらのいずれかまでの送還に要する費用の範囲内で送還することのできるその他の地)まで、船員を送還する必要があります。ただし、送還に代えてその費用を支払うこともできます。
- 沈没等により雇入契約が終了したとき
- 船員が著しく職務に不適任であること又はやむを得ない事由のあることにより船舶所有者が雇入契約を解除したとき
- 船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないことにより船舶所有者又は船員が雇入契約を解除したとき(船員の職務外の負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあったときを除く)
- 船舶が雇入契約の成立の時における国籍を失ったこと又は雇入契約により定められた労働条件と事実とが著しく相違することにより船員が雇入契約を解除したとき
- 期間の定めのない雇入契約であって、船舶所有者又は船員が24時間以上の期間を定めて書面で解除の申入をしたことにより船舶所有者が雇入契約を解除したとき
- 船舶所有者の変更があったこと(相続その他の包括承継の場合を除く)により、船員と新所有者との間に従前と同一条件の雇入契約が存するものとみなされる場合において、船員が雇入契約を解除したとき
- 雇入契約が期間の満了により船員の本国以外の地で終了したとき
- 船員が健康証明書を受けることができないため雇入契約が解除されたとき
船舶所有者は、船員が著しく職務を怠ったこと若しくは職務に関し船員に重大な過失のあったこと、海員が船長の指定する時までに船舶に乗り込まないこと又は海員が著しく船内の秩序をみだしたことにより雇入契約を解除した場合又は船員が負傷若しくは疾病のため職務に堪えないことにより雇入契約を解除した場合(船員の職務外の負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のある場合に限る)において、船員が自己の負担においてその希望する雇入港等まで移動することができないときは、遅滞なくその費用で、船員の希望により、雇入港等まで船員を送還する必要があります。ただし、送還に代えてその費用を支払うこともできます。
この場合、船舶所有者は、その費用で船員を送還したとき、又は送還に代えてその費用を支払ったときは、船員に対し、その費用の償還を請求することができます。
なお、これらの規定により船員を送還する場合における輸送手段は、正当な理由がある場合を除き、船員の希望に応じたものでなければなりません。
送還の費用
船舶所有者の負担すべき船員の送還の費用は、送還中の運送賃、宿泊費及び食費並びに雇入契約の終了の時から遅滞なく出発する時までの宿泊費及び食費とされています。
送還手当
船舶所有者は、船員が著しく職務を怠ったこと若しくは職務に関し船員に重大な過失のあったこと、海員が船長の指定する時までに船舶に乗り込まないこと又は海員が著しく船内の秩序をみだしたことにより雇入契約を解除した場合又は船員が負傷若しくは疾病のため職務に堪えないことにより雇入契約を解除した場合(船員の職務外の負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のある場合に限る)を除き、船員を送還する場合には、送還に代えてその費用を支払う場合も含め、船員の送還に要する日数に応じ給料の額と同額の送還手当を支払う必要があります。
送還手当は、船舶所有者が送還するときは、毎月1回、送還に代えてその費用を支払うときは、その際これを支払う必要があります。
船員手帳
船員手帳は、船員の身分証明書として、船員の履歴や有給休暇、保険、健康証明などの事項が記載されている手帳であり、船員は、船員手帳を受有する義務があります。
船員手帳は、交付、再交付又は書換えを受けたときから10年間(外国人の受有する船員手帳にあっては5年、外国人の受有する船員手帳にあって地方運輸局長が5年以内の期間を定めた場合においてはその期間)有効とされていますが、航海中にその期間が経過したときは、その航海が終了するまで、なお有効とされています。
船員手帳への記載
船長は、雇入契約の成立等があったときは、遅滞なく、船内における職務、雇入期間その他の船員の勤務に関する事項を船員手帳に記載し、海員の乗船中その船員手帳を保管する必要があります。
船員手帳の交付
船員となった者は、遅滞なく、最寄りの地方運輸局等の事務所(外国人にあっては、地方運輸局若しくは運輸監理部又はその運輸支局若しくは海事事務所のうち国土交通大臣が指定するもの)に出頭して地方運輸局長等(外国人にあっては、地方運輸局長)に船員手帳の交付を申請する必要があります。
ただし、日本国外において船員となった者については、最初の航海においてその乗り組む船舶が国内の港に入港するときは、その港に到着した後に申請すれば足ります。
また、船員として雇用されることを予約された者は、最寄りの地方運輸局等の事務所に出頭して地方運輸局長等に船員手帳の交付を申請することができます。
これらの規定にかかわらず、以下に該当する者が船員手帳の交付を申請する場合には、地方運輸局等の事務所に出頭する必要はありません。
- 日本国外において船舶に乗り組む者(日本国外において船員となった者を除く)
- 国外の地域に赴く航海に従事する船舶に乗り組む外国人であって出入国に係るその者の身分証明を希望しない者
- 国外の地域に赴く航海に従事する船舶に乗り組まない外国人
有効な船員手帳を現に受有する者は、船員手帳の交付を申請することができません。
船員手帳の交付申請
船員手帳の交付申請をしようとする者は、船員手帳交付申請書(第十二号書式)に、以下の書類を添付して提出します。
- 船舶所有者の発行する船員としての雇用関係(雇用の予約を含む)を証する書類
- 戸籍の謄本、抄本若しくは記載事項証明書又は住民票の写しであって、氏名、性別、本籍及び生年月日を証するもの(提出の日前1年以内に作成されたもの)(※)
- 申請日前6か月以内に撮影した自己の写真(縦4.5cm、横3.5cmの単独、無帽、かつ、正面のもので台紙に貼らないもの)2葉
(※)外国人にあっては、戸籍謄本等の添付に代えて、在留カード、特別永住者証明書又は旅券(旅券を提示するときは、氏名、性別、国籍及び生年月日を証するその国の領事官の証明書(提出の日前1年以内に作成されたもの)を添付すること)を提示すること
(※)日本国外において船舶に乗り組む外国人(日本国外において船員となった者を除く)又は国外の地域に赴く航海に従事する船舶に乗り組む外国人であって出入国に係るその者の身分証明を希望しない者にあっては、これらの書類を提示し、かつ、添付することに代えて、氏名、性別、国籍及び生年月日を証する書類であって権限のある機関が発行したもの(有効期限があるものを除く提出の日前1年以内に作成されたものであって、その写しを含む)を添付することができる
(※)国外の地域に赴く航海に従事する船舶に乗り組まない外国人にあっては、その国の領事官の証明書を添付しなければならない場合においても、証明書を添付することを要せず、かつ、在留カード、特別永住者証明書又は旅券を提示することに代えて、これらの書類の写しを添付することができる
(※)国外の地域に赴く航海に従事する船舶に乗り組む難民又は補完的保護対象者にあっては、その国の領事官の証明書を添付しなければならない場合においても、証明書を添付する必要はなく、難民にあっては難民認定証明書を、補完的保護対象者にあっては補完的保護対象者認定証明書を提示すること
(※)指定市町村長に申請をする場合において、その市町村に申請者の本籍地又は住所地があるときは、戸籍謄本等は、添付することを要しない
地方運輸局長等は、地方運輸局等の事務所に出頭する必要のない者に船員手帳を交付しようとするときは、船員手帳の写真欄の右横に、船員手帳が出入国に係るその者の身分証明を行うものではない旨を表示します。
未成年者の船員手帳の交付
未成年者が船員手帳の交付申請をしようとするときは、上記の書類のほか、以下の事項を記載し、法定代理人の氏名又は名称を記載した書類を申請書に添付する必要があります。
- 未成年者の氏名及び本籍
- 船員となることを許可した旨
- 船員となることを許可した年月日
- 法定代理人の本籍及び住所並びに本人との続柄
船員手帳の訂正等
船員は、船員手帳に記載した本人の氏名、性別又は本籍(外国人にあっては、国籍)に変更があったときは、遅滞なく、最寄りの地方運輸局長等に船員手帳の訂正を申請する必要があります。また、船員手帳の写真が本人であることを認めがたくなった場合において、写真欄の右横に余白があるときは、写真2葉を添付して、写真のはり換えを申請する必要があります。
船員手帳の訂正の申請をしようとする者は、船員手帳の交付申請に準じ、その船員手帳を添付し、かつ、訂正すべき事項を証する戸籍謄本等を添付して(外国人にあっては、在留カード若しくは特別永住者証明書を提示して、又は領事官の証明書を添付して)、船員手帳訂正申請書(第十三号書式)を提出します。
船員手帳の再交付
船員は、船員手帳が滅失し、若しくはき損したとき、又は船員手帳の写真が本人であることを認めがたくなった場合において写真欄の右横に余白のないときは、遅滞なく、最寄りの地方運輸局等の事務所に出頭して地方運輸局長等にその再交付を申請する必要があります。
ただし、日本国外にある船員については、再交付の申請の事由が生じた後最初の航海においてその乗り組む船舶が国内の港に入港するときは、その港に到着した後に再交付又は書換えを申請すれば足ります。
船員手帳の再交付の申請をしようとする者は、船員手帳の交付申請に準じ、必要書類を添付し、船員手帳再交付(再交付)申請書(第十四号書式)を提出します。現に雇入契約存続中の船員にあっては、船舶所有者の発行する船員としての雇用関係(雇用の予約を含む)を証する書類に代えて、海員名簿を提示し、又は船長若しくは船舶所有者の証明書(第十五号書式)を添付します。
雇用関係、氏名、性別、本籍又は生年月日が毀損した船員手帳により明瞭なときは、その明瞭である事項を証する書類を添付し、又は提示する必要はありませんが、この場合においても、外国人(地方運輸局長等により船員手帳が出入国に係るその者の身分証明を行うものではない旨の表示が付されている船員手帳を受有する者を除く)は、在留カード、特別永住者証明書又は旅券を提示する必要があります。
船員手帳が毀損し、又は船員手帳の写真が本人であることを認めがたくなったことにより再交付を申請しようとする者は、申請の際、元の船員手帳を返還します。また、船員手帳が滅失したことにより再交付を受けた者は、その後滅失した船員手帳を発見したときは、遅滞なく、これを地方運輸局長等に返還する必要があります。
船員手帳の書換え
船員は、船員手帳に余白がなくなったとき又は船員手帳の有効期間が経過したときは、遅滞なく、最寄りの地方運輸局等の事務所に出頭して地方運輸局長等にその書換えを申請する必要があります。
また、この規定にかかわらず、船員は、船員手帳の有効期間が満了する日以前1年以内に最寄りの地方運輸局等の事務所に出頭して地方運輸局長等にその書換えを申請することもできます。
船員手帳の書換えの申請をしようとする者は、写真2葉を添付して船員手帳再交付(再交付)申請書(第十四号書式)を提出します。この場合においては、元の船員手帳を返還し、かつ、外国人にあっては、在留カード、特別永住者証明書又は旅券を提示する必要があります。
地方運輸局長等により船員手帳が出入国に係るその者の身分証明を行うものではない旨の表示が付されている船員手帳を受有する船員は、出入国に係るその者の身分証明を希望する場合には、最寄りの地方運輸局等の事務所に出頭して地方運輸局長等にその書換えを申請することができます。
この規定による船員手帳の書換えの申請をしようとする者は、戸籍謄本等及び写真2葉を添付して船員手帳再交付(再交付)申請書(第十四号書式)を提出し、かつ、元の船員手帳を返還する必要があります。
船員手帳の還付
地方運輸局長等は、船員手帳の再交付申請又は書換えの申請により船員手帳の返還を受けた場合においては、これに無効の旨を表示し、本人に還付します。
船員手帳の返還
他人の船員手帳を保管する者は、船長が海員の乗船中保管する場合を除き、本人の請求があったときは、直ちにこれを返還する必要があります。船員手帳の受有者の所在が明らかでないため、これを本人に返還することができないときは、遅滞なく、その事由を記載した書類を添付して、最寄りの地方運輸局長等に提出する必要があります。
船員手帳記載事項の証明
船員又は船員であった者は、船員手帳に記載されている事項であって、雇入契約の成立等の届出又は船長の就退職等の証明を受けたものについて、地方運輸局長の証明を申請することができます。
この証明を申請しようとする者は、地方運輸局の事務所において船員手帳を提示して、船員手帳記載事項証明申請書(第十六号の二書式)を提出します。
勤務成績証明書
海員は、船長に対し、勤務の成績に関する証明書の交付を請求することができます。
まとめ
「雇入契約」や「船員手帳」は、船員として船員労務に就くにあたり、基礎となり柱ともなる分野です。ある程度労働基準法の規定を踏襲しているため、先に労働基準法の「労働契約」を読み込むと、理解が早まります。
小難しい文言をただなぞろうとするのではなく、何故そのような規定が設けられているのかを想像しながら何度も反芻することをお薦めします。