船舶登録│大型船舶の登録制度について

クルーズ客船

総トン数20トン以上の日本船舶は、所有者が船籍港を管轄する管海官庁に対して登録の申請を行い、船舶原簿に登録がなされたことをもって、航行の用に供することができるようになります。本稿においては、総トン数20トン以上の日本船舶に必要となる手続きを船舶登録と呼び、総トン数20トン未満の船舶に必要となる手続きを小型船舶登録と呼んで区別しています。

船舶登録の概要

登録を受けることにより本来の用途で使用することが可能になるという点においては、バイクや自動車と同じ扱いですが、大型船舶にもなると、そこに「測度」や「船舶登記」といったややこしい手続きも絡んでくるため、これが制度を複雑に感じさせる大きな要因ともなっています。

種類手続きが必要となる場合
新規登録船舶を初めて取得し、又は一度抹消の登録がなされた船舶を再び航行の用に供するとき
変更登録船舶原簿に登録した各事項に変更を生じたとき
抹消登録滅失、沈没、解撤、日本国籍の喪失等
登録の訂正過誤により原始的に錯誤又は遺漏があるために登録されている事項と実質関係との間に不一致が生じているとき

新規登録申請

総トン数20トン以上の日本船舶を初めて取得し、又は一度抹消の登録がなされた船舶を再び航行の用に供する場合(抹消船再用)、新たに登録を申請する必要があります。また、船舶を解撤(解体して撤去すること)し、その解撤材料をもって船舶を建造した場合、その船舶は新造された船舶と解されることから、この場合にも新規登録の手続きが必要になります。

新規登録が必要な場合

総トン数20トン以上の日本船舶を

  • 初めて取得する場合
  • 一度抹消された船舶を航行させる場合
  • 解体した船舶の材料で造船した場合
申請対象者船舶所有者(又は委任を受けた海事代理士)
提出時期法務局へ日本船舶を登記した後
申請先最寄りの地方運輸局又は運輸支局(事務所)
必要書類船舶登録・船舶国籍証書書換等申請書
船舶登記簿謄本
登録手数料20,100円(収入印紙で納付)
船舶国籍証書交付手数料4,500円(収入印紙で納付)
7,500円(英語併記)(収入印紙で納付)

変更登録申請

総トン数20トン以上の日本船舶の所有者が変わった場合その他船舶原簿に登録した各事項に変更生じたときは、変更の登録を行う必要があります。

申請対象者船舶所有者(又は委任を受けた海事代理士)
提出時期変更の事実が生じた日から2週間以内
申請先最寄りの地方運輸局又は運輸支局(事務所)
必要書類船舶登録・船舶国籍証書書換等申請書
船舶登記簿謄本、抄本又は登記済証(所有者に関する変更)
置籍願など、変更の事実を証する書類(船籍港の変更)
臨検調査書など(表示事項の変更)
登録手数料6,700円(船籍港変更なし、又は同一管海官庁の管轄区域内の変更)(収入印紙で納付)
13,500円(船籍港変更あり)(収入印紙で納付)
船舶国籍証書交付手数料4,500円
(収入印紙で納付)
7,500円(英語併記)(収入印紙で納付)

抹消登録申請

総トン数20トン以上の日本船舶が沈没、解撤又は輸出等によって日本国を籍喪失したときは、抹消登録申請を行う必要があります。

申請対象者船舶所有者(又は委任を受けた海事代理士)
提出時期抹消登録すべき事実が生じた日から2週間以内
申請先最寄りの地方運輸局又は運輸支局(事務所)
必要書類船舶登録・船舶国籍証書書換等申請書
売買契約書、譲渡契約書
引渡しに関する書面の写し
輸出許可通知書の写し(海外売船)
地方運輸局長等が発行した解撤証明書等(解撤)
海難報告書の写し(沈没、滅失)
改測を行った管海官庁が交付した通知書(改測の結果総トン数20トン未満であることが判明した場合)
登録手数料6,700円(船籍港変更なし、又は同一管海官庁の管轄区域内の変更)(収入印紙で納付)
船舶国籍証書交付手数料発行されない

仮船舶国籍証書交付申請

仮船舶国籍証書とは、船舶が日本国籍を有することや、船舶が同一性を有することを、一時的に証明するための公文書です。つまり、やむを得ない事由で船舶国籍証書が手元に無い状態で一時的に船舶を国内で航行させるために必要となる、いわば仮免許のような書類です。

仮船舶国籍証書の交付を受けることができるのは、総トン数20トン以上の日本船舶であって、次のいずれかに該当する場合に限られます。

  • 船舶を取得した地が、船籍港を管轄する管海官庁の管轄区域外である場合
  • 船舶が外国の港に碇泊する間又は外国に航行する途中において、船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書が滅失若しくは損傷し、又はこれに記載した事項に変更を生じた場合

仮船舶国籍証書の有効期間は、日本において交付するものにあっては6か月以内、外国において交付されるものにあっては1年以内で定められており、この期間中は、船舶国籍証書と同様の効果を受けることができます。やむを得ない事由がある場合には、さらに仮船舶国籍証書の交付を受けることができますが、船舶が船籍港に到着した場合は、たとえ有効期間満了前であっても仮船舶国籍証書は失効します。

申請対象者船舶所有者(又は委任を受けた海事代理士)※一部は船長も可
提出時期①日本国外において、船舶国籍証書を滅失若しくは毀損又は記載事項に変更が生じたとき(船長も申請可能)
②船舶取得地を管轄する地方運輸局又は運輸支局等の管轄区域内に船籍港を定めない場合
③日本国外において船舶を取得した場合
申請先最寄りの日本国在外公館
(日本国外にあっては最寄りの日本国在外公館の領事)(①の場合)
船舶取得地を管轄する地方運輸局又は運輸支局等(②の場合)
船舶取得地を管轄する日本国在外公館の領事(③の場合)
必要書類仮船舶国籍証書交付申請書
申請事由を証明する書面(①の場合)
売買契約書、住民票の写し(②③の場合:個人)
売買契約書、法人の登記簿謄本、定款、代表者全員及び代表者を含む役員の2/3の住民票の写し(②③の場合:法人)
登録手数料5,400円を現地通貨に換算した額(②③の場合)
9,000円を現地通貨に換算した額(①③の場合)(英語併記)
4,500円(②の場合)(英語併記)
7,000円(②の場合)(英語併記)
船舶国籍証書交付手数料発行されない

測度申請

船舶の大きさを表すための指標として用いられるのが「総トン数」です。単位こそ「トン」ですが、船舶の重量ではなく「容積」を表します。「測度」とは、船舶の容積を計測、算出し、総トン数を算定することを言います。総トン数は、船舶の安全・環境に関する構造・設備、乗組員の資格、課税の算定など海事に関する諸制度における基準として広く用いられており、その測度は、船舶の構造を調査のうえ、寸法を計測し、その容積を計算したうえで行われます。 

船舶登録の内容には、船の個性及び同一性を表すために必要なものとして、船籍港、総トン数、船の長さ・幅・深さといった主要寸法などがあります。このため船舶の新規登録の申請をする所有者は、まず、船舶の船籍港を定めて、その管轄管海官庁の行う船舶の総トン数の新規測度を受ける必要があります。また、甲板室等上部構造物の増設を行ったり、開口を閉鎖するなどの改造を行った場合には、改めて測度を受け、登録事項の変更を行う必要がある場合があります。

なお、総トン数20トン未満の船舶(小型船舶)は、小型船舶の登録等に関する法律に基づき、日本小型船舶検査機構で登録を受けたものでなければ、航行することができません。この小型船舶には、国内の各港間又は湖、川もしくは港のみを航行する外国船舶も含まれます。

申請対象者船舶所有者(又は委任を受けた海事代理士)
提出時期測度又は改測を受けようとするとき
申請先船籍港を管轄する地方運輸局又は運輸支局(事務所)
必要書類船舶総トン数測度(改測)申請書
造船証明書等(新規測度)
一般配置図、その他船舶の総トン数の測度を実施するに必要な書類
手数料測度手数料(総トン数確定後に収入印紙で納付)
国際総トン数

国際航海に従事する長さ24m以上の船舶は、条約に基づく国際トン数証書の交付を受ける必要がありますが、これに記載される「国際トン数」は船舶国籍証書に記載された「総トン数」とは異なります。特に、日本籍の船舶を海外に輸出する場合にはご注意下さい。

検認申請

検認とは、管海官庁が船舶国籍証書及び船舶原簿に記載されている事項について検査し、それらが実質関係と一致するか否かを確認することをいいます。日本船舶の所有者は、定められた期日までに、船籍港を管轄する管海官庁で国籍証書の検認を受けることとなりますが、運航上の都合等やむを得ない事由のあるときは、最寄りの運輸局等で検認を受けることもできます。

申請対象者船舶所有者(又は委任を受けた海事代理士)
提出時期船舶国籍証書の交付(又は前回検認)を受けた日より、4年を経過した後、国土交通大臣の定める期日まで(総トン数100トン以上の鋼製船舶)
船舶国籍証書の交付(又は前回検認)を受けた日より、2年を経過した後、国土交通大臣の定める期日まで(総トン数100トン未満の鋼製船舶)
船舶国籍証書の交付(又は前回検認)を受けた日より、1年を経過した後、国土交通大臣の定める期日まで(木製船舶)
申請先最寄りの地方運輸局又は運輸支局(事務所)
必要書類船舶国籍証書検認申請書
船舶国籍証書
船舶登記簿謄本
名義人の住民票の写し(個人)
代表者全員及び代表者を含む役員の2/3の住民票の写し(法人)
登記事項証明書(法人)
手数料なし

まとめ

測度申請からはじまり、船舶登記、船舶登録と、大型船舶に関する手続きは、常に数次のステップを踏むことが要求されます。また、期日を指定されることも多く、海外から船舶を輸入する場合はさらに通関といった手続きも加わるため、時間的余裕があまり無い中での作業には相当な負担を強いられることとなり、経験上、船舶の手続きに不慣れな方であれば、すんなり事が運ぶことはあまり多くありません。船舶について精通する人や情報を探し当てることはなかなか困難ですので、船舶に関するお手続きでお困りの際は、ご遠慮なく当事務所までお問い合わせください。

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