海技免許講習実施機関の登録申請について

山下公園の氷川丸

海技免許は、国土交通大臣が行う海技士国家試験(海技試験)に合格し、かつ、その資格に応じ人命救助その他の船舶職員としての職務を行うに当たり必要な事項に関する知識及び能力を習得させるための講習(海技免許講習)であって国土交通大臣の登録を受けたもの(登録海技免許講習)の課程を修了した者について行われます。

本稿では、海技免許ではなく、海技免許を受けるために必要となる海技免許講習を行う海技免許講習実施機関の登録についてスポットを当て、詳しく解説していきたいと思います。

登録の申請

海技免許講習実施機関として登録を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を、登録を受けようとする者の住所地を管轄する地方運輸局を経由して国土交通大臣に提出して申請を行います。

  • 登録を受けようとする者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 登録を受けようとする者が海技免許講習を行おうとする事務所の名称及び所在地
  • 登録を受けようとする者が行おうとする海技免許講習の種類
  • 登録を受けようとする者が海技免許講習を開始する日

必要となる書類

  • 登録申請書
  • 住民票の写し及び履歴書(個人)
  • 定款又は寄附行為及び登記事項証明書(法人)
  • 役員の氏名、住所及び経歴を記載した書面(法人)
  • 海技免許講習の種類に応じ、それぞれ必要な施設及び設備の数、性能、所在の場所及びその所有又は借入れの別を記載した書類
  • 海技免許講習の講師が、海技免許講習の種類に応じ、それぞれ人的条件のいずれにも適合する者であることを証する書類
  • 海技免許講習の講師の氏名、担当科目及び専任又は兼任の別を記載した書類
  • 登録申請者の宣誓書

登録の要件

  • 施設設備条件を満たすこと
  • 人的条件を満たすこと
  • 申請者が欠格事由に該当しないこと

国土交通大臣は、登録の申請が、海技免許講習の種類に応じ、それぞれ必要な施設及び設備を用いて、それぞれに設けられている条件すべてに適合する者により海技免許講習が行われるものであるときは、その登録をしなければならないものとされています。

レーダー観測者講習

施設及び設備講義室、レーダー実習室、レーダー、海図及び海図用具
人的条件①20歳以上であること
②過去2年間に登録海技免許講習事務に関し不正な行為を行った者又は船舶職員及び小型船舶操縦者法又は船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者でないこと
③三級海技士(航海)の資格若しくはこれより上級の資格についての免許を有する者であって免許を受けた後1年以上船舶職員として船舶に乗り組んだ履歴を有するもの又はこれと同等以上の能力を有する者であること
④海上特殊無線技士の資格を有する者であること

レーダー観測者講習とは、レーダー映像の判読その他のレーダーによる衝突防止に関する知識及び能力を習得させるための講習(レーダー・自動衝突予防援助装置シミュレータ講習を除く)をいいます。

レーダー・自動衝突予防援助装置シミュレータ講習

施設及び設備レーダー・自動衝突予防援助装置シミュレータ実習室、レーダー・自動衝突予防援助装置シミュレータ、プロッティング用具
人的条件①20歳以上であること
②過去2年間に登録海技免許講習事務に関し不正な行為を行った者又は船舶職員及び小型船舶操縦者法又は船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者でないこと
③三級海技士(航海)の資格若しくはこれより上級の資格についての免許を有する者であって免許を受けた後1年以上船舶職員として船舶に乗り組んだ履歴を有するもの又はこれと同等以上の能力を有する者であること
④海上特殊無線技士の資格を有する者であること

レーダー・自動衝突予防援助装置シミュレータ講習とは、レーダー・自動衝突予防援助装置シミュレータを使用して行うレーダープロッティングその他のレーダー又は自動衝突予防援助装置による衝突防止に関する知識及び能力を習得させるための講習をいいます。

救命講習、機関救命講習

施設及び設備講義室、救命器具、信号装置、進水装置、国際信号旗、国際信号書、危険物による事故の際の応急医療の手引書その他の書籍
人的条件①20歳以上であること
②過去2年間に登録海技免許講習事務に関し不正な行為を行った者又は船舶職員及び小型船舶操縦者法又は船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者でないこと
③三級海技士(航海)若しくは三級海技士(機関)の資格若しくはこれらより上級の資格についての免許を有する者であつて当該免許を受けた後1年以上船舶職員として船舶に乗り組んだ履歴を有するもの又はこれと同等以上の能力を有する者であること

救命講習とは、海難発生時における措置、救命設備その他の救命に関する知識及び能力を習得させるための講習をいいます。

また機関救命講習とは、海難発生時における機関部においての措置、救命設備その他の救命に関する知識及び能力を習得させるための講習をいいます。

なお、進水装置、国際信号旗については、視聴覚教材をもってこれらの設備に代えることができます。(機関救命講習については国際信号旗は不要です。)

消火講習

施設及び設備講義室、実習場(又は練習船)、持運び式非常ポンプ(又は消火栓)、消火ホース、ノズル及び水噴霧放射器、泡消火器、炭酸ガス消火器及び粉末消火器、呼吸具、可燃性ガス検定器及び安全灯
人的条件①20歳以上であること
②過去2年間に登録海技免許講習事務に関し不正な行為を行った者又は船舶職員及び小型船舶操縦者法又は船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者でないこと
③三級海技士(航海)若しくは三級海技士(機関)の資格若しくはこれらより上級の資格についての免許を有する者であつて当該免許を受けた後1年以上船舶職員として船舶に乗り組んだ履歴を有するもの又はこれと同等以上の能力を有する者であること

消火講習とは、火災の化学的性質、消火設備その他の消火に関する知識及び能力を習得させるための講習をいいます。

上級航海英語講習、航海英語講習

施設及び設備講義室、語学練習装置(又は視聴覚教材を使用するために必要な設備)、国際海事機関の標準海事通信用語に関する会話を録音した視聴覚教材
人的条件①20歳以上であること
②過去2年間に登録海技免許講習事務に関し不正な行為を行った者又は船舶職員及び小型船舶操縦者法又は船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者でないこと
③次のいずれかの条件を満たす者であること
ア.三級海技士(航海)の資格又はこれより上級の資格についての免許を有する者であって当該免許を受けた後1年以上船舶職員として船舶に乗り組んだ履歴を有するもの
イ.教育職員免許法第四条に規定する免許状(英語に係るものに限る)を有する者
ウ.これらの者と同等以上の能力を有する者

上級航海英語講習とは、甲板部において使用される海事に関する英語に関する知識及び能力を習得させるための講習をいいます。

また航海英語講習とは、甲板部において使用される海事に関する基礎的な英語に関する知識及び能力を習得させるための講習をいいます。

上級機関英語講習、機関英語講習

施設及び設備講義室、語学練習装置(又は視聴覚教材を使用するために必要な設備)、機関業務に関する英会話を録音した視聴覚教材
人的条件①20歳以上であること
②過去2年間に登録海技免許講習事務に関し不正な行為を行った者又は船舶職員及び小型船舶操縦者法又は船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者でないこと
③次のいずれかの条件を満たす者であること ア.三級海技士(機関)の資格又はこれより上級の資格についての免許を有する者であって当該免許を受けた後1年以上船舶職員として船舶に乗り組んだ履歴を有するもの イ.教育職員免許法第四条に規定する免許状(英語に係るものに限る)を有する者 ウ.これらの者と同等以上の能力を有する者

上級機関英語講習とは、機関部において使用される海事に関する英語に関する知識及び能力を習得させるための講習をいいます。

また機関英語講習とは、機関部において使用される海事に関する基礎的な英語に関する知識及び能力を習得させるための講習をいいます。

欠格事由

国土交通大臣は、登録の申請をした者が、次のいずれかに該当するときは、その登録をしてはならないものとされています。

  • 船舶職員及び小型船舶操縦者法又は船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 登録を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者
  • 法人であって、登録海技免許講習事務を行う役員のうちに上記のいずれかに該当する者があるもの

海技免許講習登録

登録は、登録海技免許講習登録簿に次の事項を記載することにより行われます。

  • 登録年月日及び登録番号
  • 登録海技免許講習実施機関の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 登録海技免許講習の種類
  • 登録海技免許講習事務を行う事務所の所在地
  • 登録海技免許講習事務を行う事務所の名称
  • 登録海技免許講習の開始日

なお、登録の有効期間は3年とされており、更新を受けなければ、その期間の経過によってその効力は失われます。

登録事項の変更の届出

登録海技免許講習実施機関は、登録事項を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に届け出る必要があります。登録海技免許講習実施機関がこの届出をしようとするときは、変更しようとする事項、変更しようとする日、変更の理由を記載した届出書をその住所地を管轄する地方運輸局を経由して国土交通大臣に提出する必要があります。

役員の選任・解任の届出

登録海技免許講習実施機関は、役員を選任したときは、その日から15日以内に、選任した役員の氏名及び住所を記載した届出書にその者の経歴を記載した書類を添えて、その住所地を管轄する地方運輸局を経由して国土交通大臣に届出を行う必要があります。

また登録海技免許講習実施機関は、役員を解任したときは、その日から15日以内に、その旨並びにその理由及び年月日をその住所地を管轄する地方運輸局を経由して国土交通大臣に届出を行う必要があります。

登録海技免許講習事務の実施基準

  1. 次の要件に適合する登録海技免許講習管理者が、登録海技免許講習事務を管理すること(登録海技免許講習実施機関が、学校教育法第一条の大学、高等専門学校、高等学校若しくは中等教育学校若しくは専修学校であって船舶の運航若しくは機関の運転に関する学術を教授するもの又は海上自衛隊第一術科学校、海上自衛隊第二術科学校、海上保安大学校、海上保安学校、国立研究開発法人水産研究・教育機構若しくは独立行政法人海技教育機構である場合を除く)
    • 25歳以上の者であること
    • 過去2年間に登録海技免許講習事務に関し不正な行為を行った者又は法若しくは法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者でないこと
    • 登録海技免許講習事務を適正に管理できると認められる者であること
    • 海技免許講習について必要な知識及び経験を有する者であること
  2. 告示で定める必要履修科目の講習時間等の講習の内容及び講習の方法が、それぞれ告示で定める基準に適合するものであること
  3. 1.の要件を満たす者であって登録海技免許講習実施機関が選任した者が、登録海技免許講習が適切に行われていることを定期的に確認すること
  4. 登録海技免許講習管理者及び講師の知識及び能力の維持のため、当該登録海技免許講習管理者及び講師(学校等の教員を除く)に対し、告示で定める基準に適合する研修を受講させること
  5. 告示で定める基準に適合する教科書を使用するものであること

登録海技免許講習事務規程

登録海技免許講習実施機関は、登録海技免許講習事務の開始前に、以下の事項を記載した登録海技免許講習事務規程を定め、国土交通大臣に届け出る必要があります。これを変更しようとするときも同様です。

  • 登録海技免許講習の受講の申請に関する事項
  • 登録海技免許講習の料金、その算出根拠及び収納の方法に関する事項
  • 登録海技免許講習の日程、公示方法その他登録海技免許講習の実施方法に関する事項
  • 教科書の名称、著者及び発行者
  • 登録海技免許講習の修了証明書の交付及び再交付に関する事項
  • 登録海技免許講習管理者の氏名及び経歴
  • 登録海技免許講習事務に関する秘密の保持に関する事項
  • 登録海技免許講習事務に関する公正の確保に関する事項
  • 不正な受講者の処分に関する事項 その他登録海技免許講習事務に関し必要な事項

登録海技免許講習事務の休廃止

登録海技免許講習実施機関は、登録海技免許講習事務に関する業務の全部又は一部を休止し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、次の事項を記載した届出書をその住所地を管轄する地方運輸局を経由して国土交通大臣に提出することにより届け出る必要があります。

  • 登録海技免許講習実施機関の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 登録海技免許講習事務を休廃止しようとする事務所の名称及び所在地
  • 登録海技免許講習事務を休廃止しようとする日
  • 登録海技免許講習事務を休止しようとする期間
  • 登録海技免許講習事務を休止又は廃止しようとする理由

財務諸表等の備付け及び閲覧等

登録海技免許講習実施機関(国又は地方公共団体を除く)は、毎事業年度経過後3か月以内に、その事業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書又は収支計算書並びに事業報告書(その作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む)を作成し、5年間事務所に備えて置かなければならないこととされています。

登録海技免許講習を受講しようとする者その他の利害関係人は、登録海技免許講習実施機関の業務時間内は、いつでも、財務諸表等の閲覧、謄写又は交付等の請求をすることができます。

適合命令・改善命令・登録の取消し等

国土交通大臣は、登録海技免許講習が基準に適合しなくなったと認めるときは、その登録海技免許講習実施機関に対し、基準に適合するため必要な措置をとるべきことを命ずることができます。(適合命令)

また国土交通大臣は、登録海技免許講習実施機関が登録海技免許講習事務の実施に係る義務に違反していると認めるときは、その登録海技免許講習実施機関に対し、登録海技免許講習を行うべきこと又は登録海技免許講習事務の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができます。(改善命令)

さらに国土交通大臣は、登録海技免許講習実施機関が次のいずれかに該当するときは、登録を取り消し、又は期間を定めて登録海技免許講習事務に関する業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができます。(登録の取消し等)

  • 登録海技免許講習実施機関又は登録海技免許講習事務を行う役員が、船舶職員及び小型船舶操縦者法又は船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者に該当するに至ったとき
  • 登録事項の変更の届出、登録海技免許講習事務規程、登録海技免許講習事務の休廃止、財務諸表等の備付け、帳簿の記載の規定に違反したとき
  • 正当な理由がないのに財務諸表等の閲覧等の請求を拒んだとき
  • 適合命令又は改善命令に違反したとき
  • 不正の手段により登録を受けたとき

帳簿の記載・提出

登録海技免許講習実施機関は、帳簿並びに登録海技免許講習の受講申請書及びその添付書類を備え、登録海技免許講習の料金の収納に関する事項、登録海技免許講習の受講申請の受理に関する事項、登録海技免許講習の修了証明書の交付及び再交付に関する事項、その他登録海技免許講習の実施状況に関する事項を記載し、これを登録海技免許講習を終了した日から3年間これを保存しなければならないものとされています。

登録海技免許講習実施機関は、登録海技免許講習事務を休廃止した場合その他当該事務を行わないこととなった場合は、遅滞なく、帳簿その他の書類をその住所地を管轄する地方運輸局を経由して国土交通大臣に提出しなければならないものとされています。

報告等

国土交通大臣は、船舶の航行の安全を図る目的を達成するため必要な限度において、登録海技免許講習実施機関に対し、登録海技免許講習事務に関し報告させ、又はその職員に、登録海技免許講習実施機関の事務所に立ち入り、登録海技免許講習事務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査し、若しくは関係者に質問させることができます。

国土交通大臣による海技免許講習の実施

国土交通大臣は、登録海技免許講習実施機関がいないとき、休廃止の届出があったとき、登録を取り消し、又は登録海技免許講習事務に関する業務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、登録海技免許講習実施機関が天災その他の事由により登録海技免許講習事務に関する業務の全部又は一部を実施することが困難となつたとき、その他必要があると認めるときは、海技免許講習の実施に関する事務の全部又は一部を自ら行うことができます。

公示

国土交通大臣は、次の場合には、その旨を官報に公示しなければならないものとされています。

  • 登録をしたとき
  • 登録事項の変更の届出があったとき
  • 登録海技免許講習事務の休廃止の届出があったとき
  • 登録を取り消し、又は業務の停止を命じたとき
  • 国土交通大臣が海技免許講習の実施に関する事務の全部若しくは一部を自ら行うものとするとき、又は自ら行っていた海技免許講習の実施に関する事務の全部若しくは一部を行わないこととするとき

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