総トン数とは│日本人の9割が知らない海事の真実
船舶の世界ではその大きさを表す指標として「総トン数」という単位が用いられています。この「総トン数」は、海事の世界では極めて重要な指標であり、例えば総トン数20トン以上の船舶については、船舶登録とは別に船舶登記を行うべき義務が生じます。
ところで20トンと聞いた皆さんは「20トン?それは重そうだ!」なんてことを考えたように思います。ところがどっこい「総トン数」は重量の単位ではありません。
総トン数とは
「総トン数」は重量を表す単位と同様に「トン」で表示されますが、実は重量ではなく船舶の容積を示す指標です。
そんなことくらいで鬼の首を取ったみたいに。
ひねくれた方ならこのように思われるかもしれません。私は海事代理士ですから、そんなことくらいでドヤるつもりは毛頭ありません。次章をご覧いただければ皆さまもきっと誰かに話したくなるはずです。
「トン」の由来
15世紀初めの英国では、船に積むことができるブドウ酒の「たる」の数で、船から税金をいくら取るのかを決めていました。この「たる」を数える際に用いた単位が「トン」であり、たとえば「100トン」といえば、100個の酒だるを積めるくらいの大きさの船を表していました。
さて、この酒だるを数えるとき、いったいどんな方法を使っていたと思いますか?まさか船に搭載された高性能AIが自動計算するような時代ではありません。
正解は「棒で酒だるをたたく」です。
察しの良い方であれば言わずもがなお察しのとおり、「トン」は酒だるをたたく際に出る「トン、トン」の音がその由来となっているのです。
どうです?誰かに言いたくなりませんか?
まぁこれには他にも諸説あって、たとえば大酒だるのことをもともと英語で「タン」といっていたのが、なまって「トン」に転じたという別説もあるようです。 いずれにしても面白い説ではあります。
総トン数の算定(測度)
船舶の容積とは、船体や船室によって囲われている空間の容積の合計をいいます。したがって、船体の長さ、幅及び高さといった基礎的な数値だけではなく、船上に存在する区画された施設の内容量によりその数値は大きく変化します。
船舶の容積を算定することを「測度」といいますが、この測度の算出方法が非常に難解で、船室などの上部構造物と下の船体主部とに分けて算出していくわけですが、特に大型船舶になると断面積から積分して…
積分!
そう、皆さんが高校時代「こんなの一生使わんわ!」と吐き捨てた微分積分の片割れです。こう考えると高等数学もまんざら捨てたものではありません。(測度の計算式はあまりにも複雑なためここでは解説を控えます。)
まとめ
船舶の大きさを表す指標には、総トン数のほかにも「純トン数」「排水トン数」「載貨重量トン数」といった単位が存在しています。この辺りについて本稿では記述を割愛し、あとは興味ある方の探究心にお任せすることにいたします。
本稿を機に皆さまが船舶や海事代理士の世界に興味を持っていただければ幸いです。ところで船舶法に基づく測度申請手続きは海事代理士の業務範囲です。測度申請の手続きについては当事務所までどうぞご遠慮なくご相談ください。